会社が銀行から融資を受ける際の融資条件として、「金額・返済期間・担保・保証・金利」がありますが。社長は、それらの優先順位をどう考えればよいのか? についてのお話です。
二兎を追う者は一兎をも得ず。
会社が銀行から融資を受ける際、社長は「融資条件の優先順位」をどう考えればよいのか? ここでいう「融資条件」とは、金額、返済期間、担保、保証、金利をいいます。
ぜんぶ重要でしょう、といってしまえばそれまでですが。融資条件のすべてを「いいとこ取り」はできないのが現実です。なにかを取れば、なにかを捨てざるをえない…
会社にとって有利な条件は、銀行にとって不利な条件にあたります。銀行は商売でおカネを貸しているのですから、できるだけ不利な条件を避けようとするのは当然です。結果、会社は優先順位を付けて、交渉にあたらねばなりません。二兎を追う者は一兎をも得ず、です。
というわけで、社長は融資条件の優先順位をどう考えればよいのか? について、このあとお話をしていきます。ずばり、結論はこちらです↓
- 金額
- 返済期間
- 担保
- 保証
- 金利
これらの融資条件について、順番に確認をしていきましょう。
社長は融資条件の優先順位をどう考えればよいか?
1.金額
いろいろある融資条件のなかで、いちばんに優先すべきは「金額」でしょう。なぜなら、まずは借りれなければ意味がないからです。つまり、「金額ゼロ円」というわけにはいきません。
また、融資を受けられるとしても、資金繰りが厳しい会社ほど多くの金額を必要とします。「なんとしても借りたい」ということであれば、他の融資条件は捨てざるをえないでしょう。
銀行は当然、資金繰りが厳しい会社にリスクを感じます。そうなれば、返済期間を短くしたり、担保を取ろうとしたり、社長に保証を求めたり、金利を高くしたりせざるをえません。
これに対して、そこまで資金繰りが厳しくはない会社はどうなのか? それでも金額を優先すべき理由があります。会社はできるだけ多くの預金を備えるのがよい、という考え方です。
不測の事態に会社を守るのにも、成長のチャンスをつかむために攻めるのにも、相応のおカネが必要になります。1つの目安として、平均月商(年間売上高÷12ヶ月)の3ヶ月分くらいの預金はほしいところです。
しかし実際には、そこまでの預金を持っていない会社が少なくありません。だとしたら、融資を受けてでも預金を増やしておくことに、意味はあるはずです。このときにはやはり、まずは借りることが前提になりますから、金額が優先されることになります。
というわけで、銀行と融資条件の交渉をするにあたっては「まず金額」です。金額を確保することができたら、「さぁ、次の融資条件はどうするか?」を考えることになります。
2.返済期間
次に優先する融資条件は「返済期間」です。具体的には、「長ければ長いほどよい」ということになります。返済期間が長いほうが、資金繰りがラクになるからです。
この点で、「金利を下げたい!」と考えるあまり、銀行が提示する「短い返済期間」を容認してしまう社長がいます。もちろん、資金繰りが盤石であればよいのですが。そうではない場合、毎月の返済額の多さで資金繰りに苦しむことになりかねません。
融資を受けてなお、資金繰りに苦しむのでは、なんのために融資を受けたのかわからなくなってしまいます。資金繰りを悪くしながら金利を引き下げるのでは、本末転倒です。
返済期間を長くすることができれば、毎月の返済額は少なくなります。自社の資金繰り状況を見ながら、必要な返済期間を確保できるよう、銀行と交渉しましょう。
このとき、どうしても譲れない返済期間があれば、後述の融資条件(担保・保証・金利)は捨てることになります。
なお、「据置期間」の設定には注意が必要です。据置期間のあいだは元金の返済がないため、資金繰りはラクになります。ただし、据置期間がおわれば、その分だけ毎月の返済負担が大きくなるのはデメリットです。
たとえば、返済期間5年・据置期間1年の場合、1年据え置きのあと、5年間で返済するのではありません。1年据え置きのあと、4年間で返済することになります。5年で返済するよりも、4年で返済するほうが、毎月の返済額が大きくなりますので気をつけましょう。
また、据置期間のあいだは融資残高が減らないため、次の融資が受けにくくなります。イメージとして、「融資残高が減るから、減った分の融資を受けられる」と考えておきましょう。
3.担保
次に優先する条件は「担保」です。中小企業における担保は、おもに「不動産、定期預金、有価証券」になります。これらの担保を提供すれば、融資が受けやすくなるのは間違いありません。
ですが、カンタンには担保を提供しないようにしましょう。言うまでもなく、いちど担保を提供すれば、担保を外してもらうのは困難になるからです。
また、担保は「ほんとうにいざというときの切り札」として温存しておく必要があります。まだ、担保を提供しなくても借りられるのに、担保を提供してしまっている会社はあるものです。
早く借りられるから、カンタンに借りられるかという理由で、担保を提供してはいけません。
実際に担保を提供してなくても、担保にできる「不動産、定期預金、有価証券」の存在を確認できれば、融資が受けやすくなることはあります。ですから、まずは「不動産、定期預金、有価証券」のリストをつくって、銀行に提示してみることも1つの方法です。
銀行としては、「いざとなれば返済原資になるモノ」と見ることができますから、融資審査上、プラスの効果を期待できます。
リストに掲載するのは、会社名義のものだけではなく、社長個人名義のものも有効です。中小企業では、「社長と会社が一心同体」が銀行の見方ですから、社長個人名義のものもあわせて評価の対象になります。
なお、どうしても担保提供が必要だという場合、抵当権と根抵当権の違いは押さえておきましょう。抵当権に比べて根抵当権は、のちのち担保を外すのがいっそう困難になります。
4.保証
次に優先する条件は「保証」です。大きく2つの保証があって、1つは社長の連帯保証、もう1つは、信用保証協会の保証になります。
まず、社長の連帯保証について。中小企業にあっては、会社の信用だけでは不足があるため、社長に保証を求めるというのが銀行の考え方です。とはいえ、以前に比べると、社長に保証を求めるケースは少なくなっています。
2013年に「経営者保証に関するガイドライン」が制定されて以降、金融庁のあと押しもあって、「過度な保証」の見直しが進んでいるからです。
とはいえ、「必要な保証」であれば、社長の連帯保証を求めることに非はありませんので、社長は「どうしたら連帯保証を外せるのか?」を理解しておくのがよいでしょう。こちらの記事も参考にどうぞ↓
次に、信用保証協会の保証について。いわゆる「保証付き融資」です。会社が返済できなくなったときには、信用保証協会が肩代わりする融資であるため、銀行は好んで勧めてきます。
保証付き融資となると、信用保証料を払わなければいけなかったり、融資限度額もあることから、会社としてはプロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)を引き出したいところです。
前述の1.〜3.の融資条件が確保できたら、社長の連帯保証がない融資や、プロパー融資の交渉にチャレンジをしてみましょう。その際、後述する「金利」は捨てるのが、交渉を成功に導くポイントです。
5.金利
さいごに考える融資条件が「金利」です。ところが、金利の優先順位を上げて、銀行交渉をする社長は少なくありません。とにかく金利を低く! という気持ちはわかりますが、そうなると、他の融資条件を良くすることは難しくなってしまいます。
ご存知のとおり、いまは低金利の時代です。融資金利も1%や2%はあたりまえ、1%を切るケースもけして少なくありません。すでに、じゅうぶん低金利なのです。
そこへきて金利交渉をされるのでは、銀行もかないません。利息は銀行にとっての売上なのですから、金利を下げれば売上がなくなってしまいます。売上もないのに、リスクを負って融資をするなどできるはずもないでしょう。
したがって、よほど業績が良い会社、よほど将来性がある会社など、銀行が「貸さずにはいられない」ような会社でない限り、金利の優先順位は低いものと考えておきましょう。
繰り返しになりますが、金利以外の融資条件を良くするためには、金利を捨てることです。銀行に対しては、「金利は多少高くなってもいいので…」と伝えておくと、銀行も他の融資条件を調整しやすくなります。
まとめ
社長は融資条件の優先順位をどう考えればよいのか? についてお話をしていきました。融資条件もいろいろありますが、すべてをいいとこ取りすることは困難です。
なにかを取り、なにかを捨てざるをえない場合、なにを優先するのか? 本記事での話をふまえて、決めておくようにしましょう。
- 金額
- 返済期間
- 担保
- 保証
- 金利