経理作業が負担なので、できるだけ自動化・効率化したい… との悩みを抱える会社・個人事業者は少なくないようです。では、いざ自動化・効率化を進めようとするときに、言ってはいけないセリフがありますので確認しておきましょう。というお話をします。
だれだ、そんなことを言っているのは。
わたしは税理士として、お客さま(会社・個人事業者)の経理について「自動化・効率化を進める」という仕事もしています。
経理作業が負担なので、できるだけ自動化・効率化したい… との悩みを抱える会社・個人事業者は少なくないようです。にもかかわらず、いざ自動化・効率化を進めようとするときに、こんなことを言ってはいけないと考えていますがいかがでしょうか↓
- ウチは特別だから、特殊だから
- やり方がわからないから…
- 合っているはずだ
もし、心当たりがあるようでしたら、このあとのお話も確認をしていただけましたら幸いです。放っておくと、自動化・効率化をさまたげる要因になってしまうかもしれませんので。
それでは、順番に確認をしていきましょう。
経理の自動化・効率化で言ってはいけないセリフ
ウチは特別だから、特殊だから
経理の自動化・効率化について、考え方や手段の話をしていると、「ウチは特別だから、それはムリ」「ウチは特殊だから、それは合わない」といったセリフをクチにされるケースがあります。社長ではなく、経理担当者がクチにするケースも少なくありません。
たしかに、特別や特殊なこともあるのでしょうが、「それこそが、自動化・効率化をさまたげているのかもしれない」と考えてみることをおすすめしています。
自動化・効率化とは、ある意味では「標準化」と同義です。
たとえば、既存のクラウドサービスを使って、自動化・効率化をはかろうという場合に、特別や特殊にこだわりすぎると、サービスに合わない(=利用できない)、あるいは、カスタマイズに多額の追加料金がかかる、といったことにもなりかねません。
ですから、既存のサービスに「じぶんのほうが合わせにいく」ことで、特別や特殊が取り除かれて標準化し、結果として自動化・効率化が進むことがあります。つまり、特別や特殊のなかには、人知れず「ムダやムラ」があるかもしれない、ということです。
ベテランの経理担当者が、長年かけて築き上げた経理は、社長さえもわからない「ブラックボックス」と化していることもあるでしょう。わからないだけに、まわりはなにも言えない。ですが、そこには「ムダやムラ」があるかもしれない、と疑ってみることも必要になります。
誤解なきように申し添えますが、経理担当者という「人間」を疑うのではありません。あくまで、経理という「作業」を疑うだけの話です。ここを間違えると、経理担当者からの「反発」に合い、自動化・効率化に取り組むことができない… ということが起こりえます。
なお、社長自身が経理作業もしているのであれば、やはり、じぶん自身という「人間」ではなく、じぶんがしている経理という「作業」を疑いましょう。すると、あたらしい考え方や方法に対しても、取り組みやすくなるはずです。
と、話が少々横道に逸れた感がありますが。「ウチは特別だから、特殊だから」のなかには、「ムダやムラ」があるかもしれないことを理解しておくことが大切です。
やり方がわからないから…
経理の自動化・効率化については、いろいろな手段があります。最近では、クラウドサービスの利用が主流ですが、そのクラウドサービスひとつとっても、種類が多くて迷ってしまう… ということはあるようです。
また、利用するサービスが決まったとしても、利用方法がわからない、どのように運用すればよいかがわからない… ということもあります。結果、遅々として自動化・効率化が進まない… というのは「あるある」でしょう。
社長が、経理担当者に任せるにしても同じです。やはり「わからない…」ということはありますし、経理担当者も日々の業務で忙しく、「それどころじゃない!」ということもあります。だからこそ、自動化・効率化を進めたいわけですから、まさにニワトリが先かタマゴが先かの状況です。
ここで、いちどは検討したいのが「外部のチカラを借りる」こと。つまり、税理士や公認会計士、コンサルタントなどに、支援を求めるということです。
などと、税理士のわたしが言うと、ポジショントークになってしまいますが。それでも、「わからない…」という問題は解消できますし、「それどころじゃない!」という問題は軽減できるでしょう。
わからないことは、わかる人に教えてもらえばいい。それどころじゃなければ、人に任せられる部分は任せてしまえばいい。もちろん、おカネはかかりますが、自動化・効率化が実現できれば、じゅうぶんに取り返せる金額だといえます。
金額もさることながら、自動化・効率化によって、少しでも「作業」から解放されるのは大きなメリットです。社長にしても、経理担当者にしても、空いた時間を「創造(付加価値の創出)」に充てることができるでしょう。
また、経理作業が速くおわるということは、社長が速く「会社の状態を把握できる」ということでもあります。もう少し具体的にいうと、社長が速く試算表を確認できる、ということです。すると、社長の「経営判断」に役立つというメリットもあります↓
いずれにせよ、「やり方がわからないから…」を放置しないようにしましょう。放置すればするほど、時間の経過とともに「自動化・効率化しないデメリット」が積み上がるのも、もったいないことです。
合っているはずだ
自動化・効率化の手段にみずから取り組んでいる、あるいは、外部のチカラを借りて取り組むことができたという場合。「その後」についても、注意が必要です。
気をつけたいのは、「合っているはずだ」という思い込みになります。つまり、経理が正しく行われているはずだ、という先入観です。
ひとつ、例を挙げてみましょう。会計ソフトを利用するにあたって、自動仕訳の「設定を間違えていた」とします。ほんとうは、勘定科目を「支払利息」とすべきところを、「借入金」としていた… みたいなケースです。
会計ソフトは「優秀」なので、いちど設定した内容をけして忘れることはありません。設定にしたがって、忠実に「間違えた仕訳」をし続けるところに問題があります。
この状況にヒトが気づかず、「合っているはずだ(ちゃんと設定したし)」と勘違いをしていると、経理は間違えたままです。結果として、社長が経営判断を間違えたり、納税額を間違えたり、といったことにもなりかねません。
その間違えが、「蓄積」されていくのも困りますから、おすすめは「定期検査」をすることです。といっても、当の本人は「合っているはずだ」と考えているため、検査をするのは難しいものがあります。
なので、またまたポジショントークじみてしまいますが、「外部のチカラを借りる」ことです。定期的に、税理士や公認会計士、コンサルタントなどにチェックをしてもらう、というのがよいでしょう。自身の先入観から逃れることができます。
このとき、「合っているか・間違っているか」という視点とは別に、自動化・効率化について「もっとよい方法があるか」という視点も見逃せません。
いまは変化が速い時代でもありますから、次から次へとあたらしい「サービスや機能(=手段)」が登場しています。そういったものも、できるだけ漏れなく取り込んでいくために、定期検査を受けるのも有効です。
いちど自動化・効率化に取り組んだからといって、それで「おしまい」ではありません。継続的に取り組むためにどうするか? を考えてみましょう。
まとめ
経理作業が負担なので、できるだけ自動化・効率化したい… との悩みを抱える会社・個人事業者は少なくないようです。
にもかかわらず、いざ自動化・効率化を進めようとするときに、言ってはいけないセリフをクチにしてはいないか?自動化・効率化をさまたげる要因になってしまうかもしれませんので、気をつけましょう。
- ウチは特別だから、特殊だから
- やり方がわからないから…
- 合っているはずだ