銀行が他行の金利を知りたがる理由はいろいろあります。その理由ごとに、社長が取るべき対応が変わるので気をつけましょう、というお話です。
知りたい理由にもいろいろある。
融資を受けている会社の社長であれば、いちどくらいは銀行から聞かれたことがあるかもしれません。「他行の融資がどれくらいの金利かを教えていただけますか?」と。つまり、具体的に何%くらいの金利なのかを知りたい、ということです。
A銀行にとって、B銀行やC銀行は「商売敵」ですから、「敵情視察」として金利を知りたいと考えるのは当然だといえるでしょう。
ただし、もう一歩さらに踏み込んでみると、銀行が金利を知りたい理由は次の3つに分かれます↓
- さらに貸したい
- 金利引き上げ、融資引き上げ
- 銀行以外からの借入懸念
これらのうち、いずれの理由に当てはまるのかによって、社長が取るべき対応も変わってきます。というわけで、このあと順番に確認をしていきましょう。
銀行が他行の金利を具体的に知りたがる理由
さらに貸したい
銀行が他行の金利を具体的に知りたがる理由の1つめは、「さらに貸したい」です。
これは、自社の業績が良いときに見られる理由になります。言うまでもありませんが、銀行は「業績が良くて、安心安全な会社」に融資をしたがるものです。
すると、業績が良い会社には、多くの銀行が融資をしようと集まってきます。なんとかして貸したい銀行は、できるだけ金利を下げることで借りてもらおうとするわけです。
このとき銀行は、「どれくらい下げたらよいか」を検討するために、「他行の金利がどれくらいかを知りたい」と考えます。
したがって、このケースであれば、社長が他行の金利情報を開示することに問題はありません。
もし、A銀行の金利が低いのであれば、「A銀行さんからは、〇%の金利で借りています。御行でも金利を検討してもらえませんか?」などと、B銀行やC銀行に伝えてみるとよいでしょう。
ただし、銀行も「種類」によっては、可能な金利と不可能な金利とがあります。ここで言う「種類」とは、「都市銀行、地方銀行、信用金庫・信用組合」の区分です。
一般的に、規模が大きい銀行ほど、規模を活かして金利を低くすることができます。逆に、規模が小さい銀行は、どうしても金利は高めです。
なので、規模が小さい信用金庫・信用組合に対して、都市銀行並みの金利を求めることはできません。あくまで、「同じ種類の銀行と比べたときに、できるだけ低い金利で」と考えましょう。
この点で、日本銀行が毎月公表している「貸出約定平均金利」が参考になります。銀行の種類ごとの平均的な金利がわかるので、これを見ながら銀行と「自社の金利」について話をしてみるのもよいでしょう。
なお、自社の業績が良いのであれば、銀行から聞かれずとも、こちらのほうから積極的に「他行の金利」をはじめとして融資条件を開示することをおすすめします。
前述したとおり、業績が良い会社に銀行は融資をしたいのですから、融資条件を開示することで「他行の融資条件に負けないように(会社にとってより有利な融資条件になるように)」と考えてもらいやすくなるでしょう。
他行の融資条件を開示するにあたって、借入金一覧表にまとめてあるとスムーズです↓
金利引き上げ、融資引き上げ
銀行が他行の金利を具体的に知りたがる理由の2つめは、「金利引き上げ、融資引き上げ」です。さきほどは、自社の業績が良いときでしたが、こんどはその逆、自社の業績が悪いときになります。
銀行は業績が悪い会社には、融資をしたくないと考えるものです。それでも、融資をするのであれば、金利を引き上げることで採算を合わせようとします。
このとき、「では、ほかの銀行はどれくらいの金利にしているのだろうか?」と銀行は考えるわけです。他行が金利を引き上げているのに、自行が遅れをとることを銀行は嫌います。
また、ほかの銀行があまりに金利が高いような場合、それを知った銀行は先々の回収不能を恐れて、融資を引き上げることを検討するケースもあるでしょう。
とはいえ銀行も、いきなり一括返済を求めることはできません。ですから、あらたな融資には応じない、融資をするとしてもプロパー融資はせずに保証付き融資だけ、という対応になります。
これを聞いて「だったら、他行の金利を聞かれても黙っていたほうがよいのでは…?」と、考える社長もいることでしょう。ですが、それはおすすめできない対応だといえます。
なぜなら、「隠しごと」をすれば、銀行からはいっそう怪しまれますし、いっそう引かれることになりかねないからです。
銀行は、ものごとを保守的・悲観的にとらえる傾向がありますから、隠しごとをすれば、悪いほう悪いほうに取られるものと考えておきましょう。では、どうしたらよいのか?
他行の融資条件についても情報開示をしつつ、他行からの融資の状況を説明することです。たとえば、「A銀行とは密にコミュニケーションを取っていて、自社の業績改善計画については理解を得られています。メインバンクとして、今後も支援の意向があることも確認済みです」など。
ただ、これだけでは銀行も「ほんとうに業績改善できるのかな…?」と不安が残りますから、経営計画書を用意して、内容を説明するのがおすすめです。銀行から一定の安心を得られる効果があります。
銀行以外からの借入懸念
銀行が他行の金利を具体的に知りたがる理由の3つめは、「銀行以外からの借入懸念」です。
銀行は、融資先の決算書を見て「平均金利」を計算しています。ここで言う「平均金利」とは、算式にすると「支払利息 ÷ {(期首借入金残高 + 期末借入金残高)÷ 2 }」です。
これにより、融資先が平均してどれくらいの金利で借入をしているのかを推測できます。
では、この平均金利が、自行の金利よりもだいぶ高い場合に、銀行はどう考えるのか? もしかしたら、銀行以外からの借入があるのではないか? と考えるケースもあるでしょう。
銀行以外とは、具体的に言えば、いわゆるノンバンクや、ヤミ金・サラ金など。銀行に対して、「高利貸し」と呼ばれるようなところをいいます。
高利貸しから借入をすれば、当然、平均金利は高くなるので、銀行はそれを疑っているわけです。
ちなみに、高利貸しから借入をするような会社は、銀行から借入ができないから高利貸しから借りるのであって、銀行から借入ができないほど業績・状況が悪い会社だとも言えます。
したがって、高利貸しから借入をしていることがわかると、銀行からは借入ができなくなるものです。すでに高利貸しから借入してしまった…ということであれば、社長個人のおカネや家族・知人から借りるなどして、できるだけ完済するようにしましょう。
それでも借入をした履歴は残りますから、銀行には資金繰り予定表を提示・説明するなどして、「もう高利貸しから借りることはない、借りなくてもだいじょうぶ」と納得してもらうことが大切です。
社長は、高利貸しから借入をしないことのほかに、もう1つ気をつけなければいけません。
それは、期中の「借入・完済」です。期のはじめに借入をして、期のおわりまでには完済をした場合、つまり、短期の借入をした場合には、前述した平均金利が「高く見える」ように計算されてしまいます。
「支払利息」には金額が含まれるいっぽうで、「期首借入金残高 + 期末借入金残高」には金額が含まれないからです。もし、このようなケースがあれば、銀行(短期の借入をした銀行以外)に説明をしておくのがよいでしょう。
まとめ
銀行が他行の金利を知りたがる理由はいろいろあります。その理由ごとに、社長が取るべき対応が変わるので気をつけましょう。
また、金利をはじめとした融資条件を、銀行に明かすことを毛嫌いする社長がいますが、基本的にはおすすめしていません。隠しごとをすれば、怪しまれることになるからです。
- さらに貸したい
- 金利引き上げ、融資引き上げ
- 銀行以外からの借入懸念