社長は、銀行に「情報提供」をすることが大切です。財務情報だけではなく、非財務情報も伝えましょう。なかでも伝えたいのが、わが社の「新〇〇」ですよ、というお話です。
非財務情報が足りない。
融資を受けている会社の社長は、銀行に「情報提供」することが大切です。「いやいや、決算書や資金繰り表なんかは見せているし」と言うのであれば、それだけでは足りません。
銀行は、「数字」に関する情報ではなく、「数字」にはあらわれない情報も必要としているからです。ちなみに、数字に関する情報を「財務情報」と呼び、数字以外の情報を「非財務情報」と呼びます。
銀行は、非財務情報を「現場の視察」や「社長へのヒアリング」によって得ようとしますが、会社側の協力なくしては得にくいものです。
では、得られなければどうなるか? 「数字だけ」で融資の可否を判断されることになりますから、業績が悪化したときなどはとくに、融資が受けにくくなるでしょう。
それに、非財務情報がないと、会社のこと(事業内容や会社内のようす、将来性など)がよくわりませんから、銀行にしてみれば「そもそも融資がしづらい会社」にもなってしまいます。
というわけで、社長は非財務情報を銀行に伝えるようにしましょう。そこで本記事では、そんな非財務情報のなかでも、わが社の「新〇〇」を伝えましょう、というお話をしていきます。
新〇〇とは、具体的には次の5つです↓
- 新組織
- 新社員
- 新規事業
- 新商品
- 新設備
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
銀行に伝えたい!わが社の「新〇〇」5選
新組織
そもそものハナシとして、銀行には「組織図」を渡しているでしょうか。銀行から言われて渡した、という社長もいるとはおもいますが、問題はそのあとです。
組織図はいつまでも、ずっと同じまま、ということでもないでしょう。組織に変更があった際、組織図の内容を更新して、更新した組織図を銀行に渡していますか?
と聞くと、「渡していない…」という社長は多いようです。これは、銀行融資・銀行対応の面では損をしていると言えます。なぜなら、組織図の変更はアピールチャンスだからです。
とくに「新組織」の発足時には、アピールのタイミングとしてもおすすめになります。
たとえば、「IT推進部」を設置したタイミングであれば、銀行には「IT活用のメリット(効率化、生産性向上、新規顧客開拓など)をより積極的に取りにいくため」といった伝え方が一例です。
中小企業では、まだまだIT活用が遅れているところもありますから、他社との違いとしてアピールポイントになりえます。また、話を聞いた銀行が、「IT化にともなう投資が必要だ」と考えれば、融資提案をしてくれることもあるでしょう。
また、「コンプライアンス部」の設置なども、アピールになります。「最近は巷でも、コンプライアンス違反に関するトラブルが増えているので、積極的な予防をはかるため」といった伝え方ができると、銀行も「しっかりした考えの社長だ」と安心できるはずです。
いずれにせよ、新組織の発足時には、銀行に対して内容を説明するとともに、アピールを欠かさないようにしましょう。
新社員
言うまでもありませんが、会社にとって「ヒト」は大事な経営資源です。少子高齢化の背景もあって、「ヒト不足」はいまも問題ですし、これからも問題であり続けるでしょう。
そんなときに、もし、融資先の社員が減り続けているとか、あたらしい社員がまったく入らないとなれば、銀行は「この会社の将来はだいじょうぶだろうか?」と不安におもいます。
ですから、「新社員」が入ったときには、銀行にそれを伝えて、アピールをしたいところです。
どういった社員が、何名入社したのかといった基本的な情報(年齢、性別、職種など)はもちろん、新社員の「志望動機」は、銀行にとって有益な情報になります。
志望動機からは「その会社の良いところ」が見えるものですから、志望動機を伝えることで、銀行は「他の会社との違い」を理解しやすくなるものです。なので、社長は新社員の志望動機を把握・整理しておくとよいでしょう。
なお、若い社員の採用は、アピールポイントのひとつになります。単純に、世の中の高齢化が進んでいますから、若い社員を採用できるだけでも、他社との違いになるからです。
また、男性が多い業界にあっては、女性社員の採用がアピールポイントになります。SDGsでも「ジェンダー平等」が掲げられているところであり、社会性の高い会社だとの評価に繋がるからです。
というわけで、新社員が入ったときには、銀行にも積極的に情報提供をしていきましょう。
新規事業
コロナを経て、既存事業の限界から、新規事業をはじめる会社や、業態転換をはかる会社が増えました。こういった情報は、銀行にとっては「重要な情報」になります。事業が変われば、売上や利益も変わるのですから、重要なのは当然です。
とくに、新規事業は「リスク(軌道に乗るかわからない)」もありますから、内容や課題などを、銀行に対して丁寧な説明を心がけましょう。そのあたりが不足すると、銀行は不安になり、その後の融資が受けづらくなることがあります。
具体的には、その事業を選択した経緯や、その事業に採算性があるといえる根拠、既存顧客からの反応などがあれば、銀行とも情報共有するのがおすすめです。
場合によっては、銀行からアドバイスをもらえたり、売上先・仕入先の紹介、外部専門家の紹介といった支援を得られる可能性があります。もちろん、新規事業にともなう資金について、融資提案をもらえる可能性もあるでしょう。
なお、なんの説明もなく新規事業をはじめていましたとなると、銀行としてはびっくりしてしまうこともあります。そのびっくりが、融資のしづらさにつながることもありえますから、銀行とは早めに情報を共有するようにしましょう。
新商品
前述の新規事業に似たものとして、新商品や新サービスがあります。これらについても、銀行に伝えるようにしましょう。新商品とは、売上や利益のアップに繋がるはずのものだからです。だとすれば、融資の審査上は、プラスの評価材料になります。
ただし、ほんとうに売れるのか?という疑問はありますから、そのあたりの「根拠」を説明できるかどうかが重要です。
たとえば、新商品の発想は社内から出たものなのか、顧客(市場)から出たものなのか。既存商品との違いはどこにあるのか(機能や顧客層など)。売上・利益の見込みと、それにともなう資金繰り計画はできているのか、など。
新商品が軌道に乗るまでには時間を要するものですから、それまでのあいだの「資金繰り=資金確保」ができているかどうかは見逃せません。銀行から運転資金の融資を受けるためにも、新商品の発売が決まったら、できるだけ早めに情報提供するようにしましょう。
新商品とあわせて検討したいのが、既存商品の撤退です。商品数が多くなると、基本的には手間が増えて、コストも増えます。また、既存商品の採算が悪くなっているのであれば、新商品の足手まといにもなりかねません。
社長は、商品に対する思い入れが強く(悪いことではありませんが)、撤退が苦手であることを銀行は「経験的」に知っています。ゆえに、撤退という選択も、銀行に対してはアピール材料になることは覚えておくとよいでしょう。
新設備
さいごに、もう1つ。新設備も、銀行に伝えたい情報です。設備資金の融資を受けるにあたって、伝えていることもあるでしょうが、「融資を受けた銀行以外の銀行」には伝えていないことはあるでしょう。新設備を自己資金で購入した場合にも、伝えていないかもしれません。
新設備とはたとえば、店舗や工場、機械設備、営業車、ソフトウェア、WEBサイトなどがあります。
このうち、店舗や工場であれば、投資額も大きく、その投資効果が会社全体の業績に影響もしますから、重要情報として銀行に伝えることが大切です。
機械設備については、既存設備の更新(買い替え)なのか、まったくの新設備の導入なのかの違いがあります。後者であれば、その後の売上や利益に変化があるはずですから、設備投資計画を伝えたいところです↓
なお、機械設備については、その内容を詳しく銀行に伝えることで、定期的な更新・修繕の際に、融資提案を受けやすくなる効果も見込めます。
また、営業車を増やした背景が、売上アップによるものであれば、自社の業績好調をアピールすることもできるでしょう。
ソフトウェアやWEBサイトについては、その会社のITに対する理解度や活用度が見えるところでもあります。多くのビジネスでは必要不可欠、重要性も高まり続けていますから、自社の取り組みは積極的にアピールしていきましょう。
まとめ
社長は、銀行に「情報提供」をすることが大切です。財務情報だけではなく、非財務情報も伝えましょう。なかでも伝えたいのが、わが社の「新〇〇」ですよ、というお話をしてきました。
あまり伝えられていない会社は、少なくないものと推測します。あらためて、伝える内容や伝え方を整理してみて、取引銀行に対して伝えていくようにしましょう。融資の受けやすさに影響するところです。
- 新組織
- 新社員
- 新規事業
- 新商品
- 新設備