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これからの銀行融資で「行動計画が重要だ」と言える理由

これからの銀行融資で「行動計画が重要だ」と言える理由

これからの銀行融資では、いままで以上に「行動計画が重要」になります。その背景と理由についてのお話です。

目次

ポジティブな背景とネガティブな背景がある。

銀行から融資を受けている社長は、これからの銀行融資で「行動計画が重要になる」ということを理解しておきましょう。

行動計画とは、アクションプランとも呼ばれるものであり、参考書式や作成時の考え方などについては、こちらの記事でお話をしています↓

ではなぜ、これからの銀行融資で「行動計画が重要になる」のか? その理由をお話しする前に、2つの「背景」について確認をしておきましょう。ポジティブな背景とネガティブな背景とがあります。

まずは、ポジティブな背景から。これは、「事業性評価」です。事業性評価とは、決算書の良し悪しや担保・保証の有無に依存せず、融資先の事業内容や将来性を評価しようという考え方を言います。

金融庁は、銀行に対して事業性評価の推進を求めているため、銀行は事業性評価に取り組まざるをえない状況です。この点で、将来性を見極めるにあたって「行動計画」が必要になります。将来は、行動によって決まるからです。

それから、もうひとつ。ネガティブな背景としては「リスケジュール」が挙げられます。リスケジュールとは、返済の減額・猶予です。コロナによるダメージが残っていて、返済に耐えられずリスケジュールしかない… という会社は増えていますし、まだ増えるでしょう。

このとき、銀行がリスケジュールを承諾するかどうか、その先も支援するかどうかを見極めるにあたって、やはり「行動計画」が必要になります。繰り返しになりますが、将来は、行動によって決まるからです。

事業性評価にしても、リスケジュールにしても、銀行は「支援をする会社・しない会社」を見極めなければいけない状況にあります。ゆえに、行動計画の重要性は高まっているのです。

そのうえで、そもそも行動計画が重要である理由とは? ぜんぶで3つあります。次のとおりです↓

これからの銀行融資で「行動計画が重要だ」と言える理由
  • 行動計画の前提には現状把握があるから
  • 数値計画(将来)の根拠になるから
  • 決算書(過去)の検証ができるから

これらの理由について、行動計画に対する理解を深めるためにも押さえておきましょう。

これからの銀行融資で「行動計画が重要だ」と言える理由

行動計画の前提には現状把握があるから

行動計画を立てる、つまり、「いつ・だれが・なにを・なんのために・どのように行動するか?」を決めるためには、「現状把握」が欠かせません。

現状把握とは、自社の経営理念・方針に始まり、環境分析(強み・弱み)、そこから見える課題の特定と経営戦略(だれに・なにを・どう売るか)までを言います。行動計画は、これらの現状把握なくして立てるのは困難です。

これに対して、数値計画を現状把握なくして立てる会社があります。すると、納得感をえにくい数値になりがちであり、実際の行動は「一貫性」や「妥当性」がなくなりがちにもなるものです。

ゆえに、銀行は行動計画なき数値計画を信用しませんし、現状把握なき数値計画を信用しません。

会社がリスケジュールを銀行に依頼するときには、原則、経営改善計画書の策定・提出が必要になります。このとき、行動計画を漏らさないように気をつけましょう。

また、リスケジュールをするほど業績は悪くない、むしろ好業績という会社でも、前述した「事業性評価」を見据えて、経営計画書を策定・提出することをおすすめします。融資条件の改善や、銀行との関係性の向上に繋がるところです。

このときにも、やはり、行動計画を漏らさないことがポイントになります。

行動計画の前提となった「現状把握」についても、計画書に添付をするようにしましょう。会社の事業内容がよくわかる情報であり、それこそが本来、銀行が知るべき情報でもあります。

繰り返しになりますが、現状把握として、経営理念・方針、環境分析(強み・弱み)、そこから見える課題、経営戦略(だれに・なにを・どう売るか)をまとめるようにしましょう。

数値計画(将来)の根拠になるから

さきほどもふれましたが、計画書というと「数値計画だけ」をつくる会社があります。ところが、数値計画は計画書のいちぶに過ぎません。

計画書の「つくり方」を知っている者からすると、「いったいどうやって数値計画だけをつくったのか?」と不思議におもわれるばかりです。

結果、数値計画だけの計画書は「根拠なき計画書」として信用を失うことになります。がんばって計画書をつくったのに、銀行の信用を失うのでは散々ですから気をつけましょう。

逆に、行動計画があれば、それは数値計画の根拠になります。数値計画とは「将来」に関する不確定要素が大きなものではありますが、行動計画には不確定要素を潰す効果があるわけです。

つまり、「△△という数字(結果)が見込める、それは〇〇という行動をするからだ」という納得感をえられるようになります。

いっぽうで、「△△という数字(結果)が見込める」とだけ言われても、納得感をえられませんよね。それが、数値計画だけの計画書であり、根拠のない計画書です。

事業性評価にしても、リスケジュールにしても、銀行は「将来」に注目をしています。貸したおカネを、将来、きちんと返せる会社なのかどうか?

これは、過去の数字に過ぎない「決算書」からはわからないところでもあります。だからこそ、決算書に加えて、計画書を策定・提出する必要があることを理解しておきましょう。

計画書をつくりましょう!と勧めると、「決算書があるだろう?(だから、計画書はいらない)」と言う社長がいます。

ところが、決算書の内容が良いからといって、将来も良くなるとは限りません。黒字の決算書を見て、「次は赤字になるかもしれない」と考えるのが銀行です。決算書は、将来の根拠にはなりえません。

決算書(過去)の検証ができるから

さきほど、行動計画は数値計画(将来)の根拠になる、と言いました。実は行動計画には、決算書の検証ができる、という一面もあります。

決算書とは言うなれば「過去」です。その過去は、行動の結果であるとも言えるでしょう。では、会社がどのような行動をとった結果が、決算書にあらわれたのか?そもそも、会社はとるべき行動を「計画していたのか」どうか? 行動計画があればあきらかになります。

もちろん、行動計画がなくても、なにかしらの行動はするわけですが、その行動が「意図したもの」であったのか、「場当たり的なもの」だったのかで、意味合いは変わってくるでしょう。

意図した行動の結果が、良い数字に繋がっているのであれば、そこには「再現性」があるからです。対して、場当たり的な行動の結果には、再現性がありません。たまたまに過ぎないからです。

ちなみに、決算書の内容が悪かった場合に、行動計画があったかどうかで銀行からの評価が変わることはあります。

たとえ、決算書の内容が悪かったとしても、会社が立てた行動計画を、きちんと計画どおりに実行した結果であれば、その「過程」は評価できるからです。

つまり、「計画性がある・計画をきちんと実行できる」という部分の評価はできます。計画性がない会社、計画を実行できない会社に比べれば「いくぶん良い」とは言えるでしょう。

ここで気をつけたいのが、立てた計画はきちんと実行することです。計画を立てたはいいけど、あとは放置… という会社は少なくありません。これが銀行にわかると、次からはいくら計画書を策定・提出しても、計画書自体を信用してもらえなくなります。

どうせ、実行はしないんでしょ? と見られてしまうからです。計画書をつくるだけでは不十分であり、実行してはじめて評価されるものと考えておきましょう。

まとめ

これからの銀行融資では、いままで以上に「行動計画が重要」になります。その背景と理由についてお話をしてきました。

銀行はいま、「支援をする会社・しない会社」を見極めようとしていることを覚えておきましょう。この点で、行動計画がない会社は、銀行が支援をしない会社に近づくことになります。

これからの銀行融資で「行動計画が重要だ」と言える理由
  • 行動計画の前提には現状把握があるから
  • 数値計画(将来)の根拠になるから
  • 決算書(過去)の検証ができるから
これからの銀行融資で「行動計画が重要だ」と言える理由

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