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銀行から自社の商売(ビジネスモデル)について聞かれたときの回答ポイント

銀行から自社の商売(ビジネスモデル)について聞かれたときの回答ポイント

融資を受けようとする会社は、銀行から「自社の商売(ビジネスモデル)」について聞かれることがあります。そのとき社長が、的を射た回答ができるように、ポイントを押さえておきましょう。

目次

商売=誰に・何を・どのように売るか

融資を受けようとする会社・融資を受けている会社は、銀行から「自社の商売」について聞かれることがあります。

ここで言う「商売」とは、いわゆる「ビジネスモデル」のことであり、もう少し具体的に言い換えると、「誰に・何を・どのように売るか」です。

その「商売」は、会社ごとに異なるものであり、業績の良し悪しに影響するものでもあります。ゆえに、銀行は「融資先の商売」に注目しているのです。

とはいえ、融資先の商売を知りたくとも、融資先の「決算書」だけを見ていたのではわかりません。いくら数字を眺めたところで「誰に・何を・どのように売るか」はわからないからです。

そこで銀行は、社長に「商売」についてたずねることになります。このとき社長は、的を射た回答をしたいものです。そのための具体的なポイントは、次のとおり↓

銀行から自社の商売について聞かれたときの回答ポイント
  • 専門用語は売上貢献に置き換える
  • 強みと弱みをあきらかにする
  • 売上の内訳分析を伝える

それではこのあと、それぞれのポイントを確認していきましょう。

銀行から自社の商売について聞かれたときの回答ポイント

専門用語は売上貢献に置き換える

そもそも、銀行に「商売(ビジネスモデル)」を伝えるときには、「商流図」を用意するのがおすすめです。

商流図とは、「どこから商品・材料を仕入れ、誰に商品・製品を売るのか?エンドユーザーは誰なのか?」を図にしたものであり、くわしくは別の記事で書きました↓

商売とは、「誰に・何を・どのように売るか」だと前述しました。このうち、「誰に」と「どのように」については、商流図であらわすことができます。

なお、「どのように」とは、たとえば、店舗で売るのか、デリバリーで売るのか、ショッピングサイトで売るのか、自社サイトで売るのかといった、「販売場所」や「流通経路」です。

たとえ、売るモノが同じA社とB社があったとしても、「どのように」の部分では違いがあり、その違いが、事業の良し悪しにつながっていることがあります。商流図を利用して、自社の「事業の良さ」を説明できるとよいでしょう。

そのうえで、「なにを」売っているのか? については、「専門用語」が1つのポイントになります。他社とは違う、差別化できる商品を売っている会社ほど、商品の説明に「専門用語」が使われるものです。

とはいえ、銀行員が専門用語を理解しているとは限りませんから、専門用語を「わかる言葉」に置き換えて伝える必要があります。

このとき、単純に「平易な言葉」に置き換えるだけではなく、「どのように売上に貢献しているのか」を伝えられるようにしてみましょう。

たとえば、「特殊素材の〇〇を使った製品」を売っているという場合、「〇〇」は専門用語です。〇〇のすごさを伝えるのに、「技術面」から説明しようとする社長がいます。〇〇の性能・機能などを伝える。それも悪くはありませんが、意外と伝わりにくいものでもあります。

なぜなら、銀行は「さいごは数字で考える」からです。そこで、「〇〇を使った製品は同業他社にはなく、製品の国内シェアは7割です」とか、「〇〇が大手企業C社の目に止まり、年間 ×××万円の受注にいたりました」といった伝えかたに替えてみましょう。

このほうが、銀行は〇〇のすごさを理解しやすく、融資審査上も評価をしやすくなります。専門用語は売上貢献に置き換えるのは、回答ポイントの1つです。

強みと弱みをあきらかにする

自社の商売について社長が話をするとき、「強み」ばかり、「強み」だけというケースがあります。どのような商売であっても、強み(長所)があれば弱み(短所)もあるものでしょう。

たくさんの融資先を見ている銀行は、それをわかっています。なので、社長が「強み」の話しかできないようだと、銀行は「何か隠しているのではないか?」あるいは「この社長は、何かを見落としているのではないか?」と考えるはずです。

いずれにせよ、銀行に対する心象はよくありませんし、銀行が自社の商売を理解することもできませんから、社長は「強みと弱みの両方」をあきらかにすることが重要になります。

このとき役に立つのが、いわゆる「SWOT分析」です。有名なフレームワークですから、「知っている」「聞いたことがある」という人も多いでしょう。

そのSWOT分析とは、自社にとっての「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」を分析する手法です。

このうち「強み」と「弱み」は会社の内部的な要因、「機会」と「脅威」は会社の外部的な要因になります。内部と外部、それぞれの現状を把握したうえで、自社がとるべき「戦略」を考えるという流れです。

大事なのは「戦略を考える」というところ。現状把握なき戦略も問題ですが、現状把握だけでおわっているのも問題があります。強みと弱みを把握できたら、戦略を考えましょう。

強みと弱みでいえば、「強みを伸ばす」か「弱みを改善するか」です。経営資源がより限られている中小企業にあっては、「強みを伸ばす」のがセオリーだと言えます(弱みも改善できるのは、経営資源が豊富な大企業の戦略)。

そのうえで効率が良いのは、「強み × 機会」です。つまり、自社の強みに対して、プラスの外部要因(トレンド、法改正、技術革新など)をかけ合わせる戦略になります。

というように、戦略が合理的であり、納得感をえられるものであれば、銀行は「将来性あり」と評価をしやすくなる点は、自社にとってメリットになるでしょう。

自社の商売の内容だけではなく、強みと弱みをあきらかにする。加えて、戦略まで銀行に伝えることは、回答ポイントの1つになります。

売上の内訳分析を伝える

銀行が「さいごは数字で考える」ことは前述しました。数字の最たるものと言えば、「売上」です。もちろん、「利益」も大切ですが、利益をあげるためには「売上」がなければなりません。

ですから、「まずは売上」と考えておきましょう。この点で、「売上の総額」でしか話ができない社長がいます。ところが、売上には必ず「内訳」があるものです。

たとえば、商品別、店舗別、エリア別、担当者別など。そういった「内訳」もなく、「総額」だけの話となると、せっかくの数字も「よくわからないもの」になってしまいます。

逆に、内訳があれば、総額の話にも「説得力」を持たせることができるのがメリットです。

たとえば、「A商品の売上が伸びているから今期は増収でした」「B店の出店がうまくいって今期は増収でした」など。減収の場合であっても、内訳分析ができていれば、減収の原因説明をしやすくなります。

もちろん、社長の「肌感覚」として、A商品やB店の好調を理解しているということはあるでしょう。ですが、肌感覚だけで話をするのと、数字をもって話をするのとでは、銀行に対する「説得力」がまるで違います。

再三の繰り返しになりますが、銀行は「さいごは数字で考える」のです。また、銀行担当者も、稟議書に「数字」を書かねば、決裁者に納得してもらいにくくなります。ひいては、会社が融資を受けにくくなるのですから問題です。

以上をふまえて、社長が銀行に商売の話をするにあたって、「売上の内訳分析」は基本の基本だと考えておきましょう。

まとめ

融資を受けようとする会社は、銀行から「自社の商売(ビジネスモデル)」について聞かれることがあります。そのとき社長が、的を射た回答ができるように、ポイントを押さえておきましょう。

意外と、銀行が知りたいことを、社長がじゅうぶんに伝えられていないケースもあります。結果、融資を受けにくくするのではもったいないハナシです。

銀行から自社の商売について聞かれたときの回答ポイント
  • 専門用語は売上貢献に置き換える
  • 強みと弱みをあきらかにする
  • 売上の内訳分析を伝える
銀行から自社の商売(ビジネスモデル)について聞かれたときの回答ポイント

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