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借金で会社がつぶれる=トンデモ理論

借金で会社がつぶれる=トンデモ理論

借金で会社がつぶれる、というハナシがありますが。それはトンデモ理論だ、という理由のお話です。いっぽうで、借金で会社のピンチが加速するケースの確認もしていきます。

目次

会社がつぶれる原因はほかにある。

会社が銀行から受ける融資について、ちまたにはいろいろなハナシがありますが。そのなかの1つに挙げられるのが、「借金で会社がつぶれる」です。

つまり、会社がつぶれる原因は、借金をしたことにある! 借金は悪だ! というハナシであり。わたしは、これを「トンデモ理論」として位置づけています。

会社がつぶれる原因は、借金をしたことなどではなく、ほかにある。というのが、わたしの考えです。トンデモ理論を信じるあまり、「必要な借金(後述します)」まで避けるようだと、それこそ会社をつぶしかねません。

そこで、「借金で会社がつぶれる」というハナシがトンデモ理論である理由について、お話をします。いっぽうで、「借金で会社のピンチが加速するケース」はあるので、あわせて確認をしていくことにしましょう。

「借金で会社がつぶれる」がトンデモ理論である理由

借金で会社がつぶれる。これがトンデモ理論である理由、つまり、それは間違いである理由とは? 端的に言えば、「借金と同じだけのおカネもあるから」です。

たとえば、1,000万円の借金をする場合、1,000万円の「負債」が発生するのと同時に、1,000万円の「おカネ」も増えます。負債だけが増えました、なんてことはありえません。

だとすれば、1,000万円の借金であろうと、1億円の借金であろうと、いくら借りたとしても「借りたおカネ」で返済することができます。

したがって、借金をした瞬間を見れば、「借金で会社がつぶれる」のが間違いであるのはあきらかです。ではなぜ、「借金で会社がつぶれる」などというトンデモ理論が存在するのか?

それは、つぶれた会社の多くが借金をしていたからです。これを、「借金で会社がつぶれた」と勘違いしないように気をつけなければいけません。

つぶれた会社には、借金以外のところに「つぶれた原因」があります。必ず、あります。

たとえば、競合他社との争いに破れ、売上不振に陥ったから… とか。取引先とのあいだでトラブルを起こし、多額の賠償金支払いを余儀なくされたから… とか。自然災害に見舞われ、事業活動が制限されてしまったから… とか。

いずれも、借金で会社がつぶれたわけではありません。むしろ、借金ができていれば、借金と同時に増えた「おカネ」によって資金を補うことができた、つぶれるまでの時間を延ばすことができた、とさえ言えます。

ですから、「必要な借金」まで避けることがないようにしましょう。手元のおカネが不十分であれば、それを補うための借金は「必要な借金」です。

ひとつの目安として、現金預金の残高が「平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の2ヶ月分未満」である場合、手元のおカネが不十分だという見方をしてみましょう。攻めるにしても(新規事業、事業再構築など)、守るにしても(不測の事態に耐えるなど)、資金が不足しがちになるからです。

「借金で会社がつぶれる」と考えてしまうと、「必要な借金」まで避けるようになってしまいます。

借金で会社のピンチが加速するケース

借金で会社がつぶれるわけではないにしても、借金で「会社のピンチが加速するケース」はあります。借金をするときの注意点として、押さえておきましょう。

金利が高すぎる

1,000万円の借入をすれば、1,000万円のおカネが増える。だから返済できないことはない、という話をしました。が、利息の支払いは別です。利息分のおカネは、別途用意しなければいけません。

借入金利が高すぎる場合には、金利によって資金繰りが悪化する可能性はあります。会社がピンチであれば、ピンチを加速することにもなるでしょう。

ゆえに、いわゆる「高利貸し」からの借金は避けるべきなのです。では、どこから借金をすればよいのか? 言うまでもありませんが、「銀行(具体的には、都市銀行・地方銀行・信用組合、日本政策金融公庫など)」です。

いまはまだ低金利であり、借入金利は「1〜2%前後」の水準にあります。これであれば、ピンチを加速する原因にまではなりません。

にもかかわらず、利息の支払いがツラい… というのであれば、自社の「稼ぐチカラ(利益力)」に問題があります。この場合にも、「借金のせい」にしないように気をつけましょう。

本当は、稼ぐチカラに問題があるのに、借入をしたことや、金利負担に「問題をすり替えてしまう」と、かえって会社のピンチが加速することになってしまいます。

ムダ使いしている

再三の繰り返しになりますが、1,000万円の借入をすれば、1,000万円のおカネが増えます。とはいえ、借りたおカネを「ムダ使い」してしまえば、返済をすることはできません。

この場合には、返済が資金繰りの負担になり、借金で会社のピンチが加速することになるでしょう。では、ムダ使いとは具体的にどういう状況を言うのか?

たとえば、将来利益につながらないであろう飲食(交際費・厚生費)や、高級すぎる社用車、オーバースペックな機械設備、会社から社長への貸し付けなどが挙げられます。

また、値上がり目的で株や投資信託を買ったり、不動産を買ったりして、その後に値下がりすれば、それもまたムダ使いです。

それらのムダ使いをしておきながら、「借金で会社がつぶれる」というのは、お門違いだと言えます。やはり、問題をすり替えてしまわないように気をつけなければいけません。

借金をしたから資金繰りが厳しいのではなく、借金して借りたおカネの「使い方」が悪かったのです。

返済が速すぎる

ムダ使いではなくとも、借りたおカネを使うことはあります。必要な設備投資をしたり、日々の運転資金として使ったり、ということ自体に問題はありません。

ただし、返済が早すぎると、会社のピンチが加速する可能性があります。つまり、自社の返済力(利益)に比べて、毎月の返済額が多すぎると、資金繰りが厳しくなるということです。

まずは、「税引後利益 + 減価償却費 > 年間返済額」の状態にあるかどうかを確認してみましょう。この状態であれば、手元のおカネを減らさずに返済をすることができるはずです。

では、「税引後利益 + 減価償却費 < 年間返済額」の場合にはどうするか? 返済する分のおカネを借りることができれば、手元のおカネを減らさずにすみます。

折り返し融資(返済した分のおカネを借りる融資)を受けることを検討してみましょう。

それでもなお返済が厳しい… ということであれば、複数ある借入をまとめて一本化する(返済期限を延ばす)ことで、毎月の返済額を減らす方法もあります。あわせて検討してみましょう。

いずれにせよ、やはり借入したこと自体に問題があったわけではありません。借り方、あるいは、返済力に問題がある、ということです。

まとめ

借金で会社がつぶれる、というハナシがありますが。それはトンデモ理論だ、という理由をお話ししてきました。もっともらしく聞こえるハナシも、鵜呑みにしないよう気をつけましょう。

いっぽうで、借金で会社のピンチが加速するケースはありますので、「借り方」や「借りたおカネの使い方」には注意が必要です。

いずれにせよ、借りること自体は「会社がつぶれる原因」にはなりえないことを理解しておきましょう。

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