融資を受けようとしたときに、銀行から試算表の提出を求められることがあります。なぜなのか? その理由を押さえておきましょう。銀行融資はより受けやすくなるはずです。
知っているのといないのと。
社長であれば、融資を受けようとしたときに銀行から「試算表を見せてほしい」と言われた経験があるのではないでしょうか。ではなぜ、銀行に試算表を提出する必要があるのか?
その理由を知っているといないのとでは、銀行対応に差が出るというものです。
ひいては、銀行融資の受けやすさに影響します。つまり、知っていれば融資は受けやすくなり、知らずにいれば融資が受けにくくなる。そういうことです。
というわけで、試算表の提出を銀行が融資先に求めるのはなぜなのか? その理由は次のとおりです↓
- 赤字になっていないか
- 経営管理能力はあるか
- 粉飾決算していないか
それではこのあと、順番に確認をしていきましょう。
試算表の提出を銀行が融資先に求めるのはなぜ?
赤字になっていないか
いまのところ、銀行が融資審査でもっとも重視しているのは「決算書」だと言ってよいでしょう。決算書の内容(業績)が良ければ借りやすく、悪ければ借りにくくなる、ということです。
が、決算書の内容は、言うまでもなく「決算日時点」の内容にすぎません。たとえば、3月決算の会社の決算書が示す内容は、3月31日現在の業績だということになります。
では、その後、9月くらいになって融資の申し込みをする場合はどうでしょう。決算日から半年も経過しているわけですから、銀行は「いまどうなっているか?」が気になります。
たとえ、その直前の決算書が黒字であったとしても、それから半年のあいだに赤字になっているかもしれない。直前の決算書が赤字であれば、まだ赤字が続いているかも、あるいは、もっと赤字が増えているかもしれない。と、銀行は考えます。
だから、「試算表を見せてほしい」ということになるわけです。だとすれば、社長が気をつけるべきことは? そう、「試算表も黒字」です。決算書と同じく、試算表もまた黒字が重要になります。
銀行は決算書を重視するのだからと、試算表を軽視している社長は気をつけましょう。銀行が、試算表を軽視することはありません。決算書を優先しているだけであり、試算表も見ています。
この点、試算表の段階では、経理処理が「いいかげん」であることは少なくないようです。たとえば、棚卸の処理をしていないとか、年払いの費用を支払い時に一括経費処理しているとか。
そういうことをしていると、ほんとうは黒字にできる試算表が赤字になっている可能性があります。顧問税理士とも相談をして、日ごろの経理処理に不足がないかを見直してみましょう。
経営管理能力はあるか
銀行が試算表について見ているのは「業績」だけではありません。ある銀行員の方いわく、「試算表の提出を求めてから、提出されるまでの時間を見ている」のだそうです。
提出されるまでの時間を見て、なにがわかるのか? ふだんから試算表をつくっているかどうか、です。つくっていればすぐに提出できますが、つくっていなければ時間がかかります。
では、ふだんから試算表をつくっていないことを、銀行はどう見るのか?
試算表(最新の数字)も見ずに経営ができるのか、できるはずがない、と考えるのが銀行です。いわゆる「勘・経験・度胸(KKD)」だけの社長を銀行は嫌います。
なので、間違っても銀行の前で「数字なんて役に立たない」などと言ってはいけません。銀行は数字を扱う商売であり、数字をもとに商売をしています。なので、数字を軽視するような言動はいけません。
また、社長が数字を重視していたとしても、ふだんから試算表をつくっていない(あるいは、つくるのが遅れている)のであれば、銀行は「管理体制が整っていない」との見方もします。
試算表を毎月つくれないような体制では、経営管理の面で不十分だ、ということです。この点、自社内の人的資源やノウハウが不足するのであれば、税理士に記帳代行(試算表づくり)を依頼することは1つの対応策になります。
というわけで、社長が試算表(数字)を重視しているか、そして、試算表を毎月つくれるか(管理体制は整っているか)の2点をもって、銀行は「経営管理能力があるか」を見ていることを理解しておきましょう。
銀行から「試算表を見せてほしい」と言われたら、その場ですぐに提出できるのが理想です。
粉飾決算していないか
もうひとつ、銀行が試算表から見ていることがあります。それは「粉飾決算していないか」です。粉飾決算とは、利益を水増ししたり、資産を水増ししたりすることを言います。
もちろん良くないことですが、どうしてもおカネが必要になると、粉飾決算することで銀行をダマし、融資を受けようとする会社もあるのです。銀行は、それを理解しています。
なので、あの手この手で粉飾決算を見破ろうするわけで、1つの方法が「試算表」です。
決算書に比べると、試算表は見る人が見れば、粉飾決算を暴くのに役立つ手がかりが多くあります。また、試算表と決算書を見比べることで、粉飾決算が暴かれることもあります。
もっともお粗末な粉飾は、試算表ではずっと赤字だったのに、決算書ではどういうわけか黒字… みたいな。
この場合、決算書だけでは粉飾を暴きにくいのですが、試算表があれば暴きやすくなります。だから、銀行は「試算表を見せてほしい」と言うわけです。
だったら、なおさら試算表を見せないほうがいいのでは? などと考えてはいけません。見せなければ見せないで、やはり粉飾を疑われます。「見せられないものがあるから隠しているのでは?」と疑われてしまいます。
試算表を見せないことは、百害あって一利なし。そう考えておきましょう。
ちなみに、試算表がずっと黒字だったのに、決算書は赤字… というのもよろしくありません。試算表が「不正確」あるいは「粉飾」だったことのあらわれです。あわせて気をつけるようにしましょう。
そのあたり、こちらの記事も参考にどうぞ↓
まとめ
融資を受けようとしたときに、銀行から試算表の提出を求められることがあります。なぜなのか? その理由についてお話をしました。
知っているといないのとでは、銀行対応に差が出るというものです。ひいては、銀行融資の受けやすさに影響します。銀行が「試算表を見せてほしい」という理由を、押さえておきましょう。
- 赤字になっていないか
- 経営管理能力はあるか
- 粉飾決算していないか