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脱コロナのいま、中小企業に起きうる銀行起点の連鎖倒産3つのシナリオ

脱コロナのいま、中小企業に起きうる銀行起点の連鎖倒産3つのシナリオ

世の中はすっかり脱コロナのいま。中小企業に起きるかもしれない、銀行起点の連鎖倒産について、考えられる3つのシナリオをお話ししていきます。社長は、備えましょう。

目次

コロナ不況がおわっても、世界はまだ危険に満ちている。

きょうは 2023年5月31日、世の中はすっかり脱コロナです。これから、いよいよ経済も回復し、自社の業績も改善するに違いない! と考えている社長もいることでしょう。

それはそれとして、脱コロナのいま、気をつけるべきことがあります。銀行起点の連鎖倒産です。いたずらに不安をあおる意図はありませんが、1つの可能性として見過ごすわけにもいきません。

連鎖倒産とはつまり、取引先をはじめ、自社以外の会社が倒産することによって、その影響が自社まで及び、自社もまた倒産をしてしまうことをいいます。

コロナ不況もおわろうとしているいま、なぜそんなことが起きうるのか? 考えられる3つのシナリオをもとにお話をしていきます。社長の「備え」として押さえておきましょう↓

脱コロナのいま、中小企業に起きうる銀行起点の連鎖倒産3つのシナリオ
  1. 銀行の破たん
  2. 銀行再編の加速
  3. 融資のハードルUP

以上3つのシナリオについて、このあと順番に確認していきます。

脱コロナのいま、中小企業に起きうる銀行起点の連鎖倒産3つのシナリオ

シナリオ1・銀行の破たん

2023年3月、アメリカでは銀行破たんが相次ぎました。そのくわしい経緯については、以前に書いた別記事にゆずるとして。日本でも、似たようなことが起きる可能性がゼロではありません。

では仮に、日本の銀行が破たんしたらどうなるか? その銀行を頼りにしていた会社は、資金繰りや資金調達に支障をきたすことになります。最悪、資金ショートを起こして倒産…

もしもそれが、自社の取引先だったらどうでしょう? 売上先であれば、売上代金を回収しそびれてしまう。仕入先であれば、今後の仕入れができなくなってしまう。困りますよね。

だとすれば、そのあたりの可能性もふまえて、日ごろから「借りられるときに借りておく」ことで、手元の預金残高を増やしておく、倒産防止共済(経営セーフティ共済)を利用しておくなどの対策が考えられます。

というハナシを聞いてもなお、「いやいや、日本の銀行はだいじょうぶでしょう」とおもわれるかもしれませんが。過去には実際に、日本の銀行だって破たんをしています。

また、いまや「世界はひとつながり」ですから、別の国で起きた出来事が自国に及ぶことは少なくありません。ロシア・ウクライナ問題に端を発する物価上昇しかり、です。

それに、銀行が破たんまではしないにしても、銀行に「トラブルが起きる」ことも考えられます。もし、なにかの都合で、預金の引き出しや振込などができなくなってしまったらどうでしょう?

そのトラブルが長引けば、やはり資金繰りに支障をきたすこともありえます。結果、取引先が倒産することによって、自社がその影響を受ける… というシナリオも捨てきれません。

金融不安のニュースが流れているいまだからこそ、社長は備えましょう。アメリカで起きた銀行破たんの経緯を見る限り、日本もまた「対岸の火事」ではいられません。

シナリオ2・銀行再編の加速

日本では、地方銀行を中心に「銀行再編」が進んでいます。また最近では、信用金庫・信用組合についても、同じような動きが出てきました。

たとえば、A銀行とB銀行が合併したとします。合併後のチカラ関係はA銀行のほうが上であり、融資の方針、融資審査の基準もA銀行が主導権を持つものとした場合、B銀行をメインバンクとしていた自社の取引先があったらどうでしょう?

その取引先は、融資が受けにくくなる可能性があります。A銀行の方針・基準から見て、その取引先が「重要顧客」と見られない場合には、ありうるハナシです。

このとき、業績不振などほかの問題が重なれば、取引先は資金繰りに支障をきたして倒産してしまうかもしれません。銀行再編が、取引先の倒産に影響することもあるわけです。

社長はそのあたりもふまえて、日ごろから、取引先の与信管理を徹底する必要があります。

取引ぶりにおかしなところがないか警戒する、定期的にコミュニケーションをとる、信用情報機関を使って情報を取得する、などの対策が考えられるところです。

ちなみに、銀行再編は自社の取引銀行に起きる可能性もありますから、その点にも注意しておかなければいけません。銀行再編をきっかけに、融資が受けにくくなることもあります。

だとすれば、ふだんから、複数の銀行から融資を受けられるようにしておくことが対策にもなるでしょう。銀行融資は、中小企業の資金繰りにおける「生命線」です。用心しすぎることはありません。

シナリオ3・融資のハードルUP

コロナをへて、銀行融資のハードルは以前よりも上がっている、と言ってよいでしょう。つまり、銀行融資が受けにくくなっているし、これから先、受けにくくなるかもしれない、ということです。

もう少し正確にいうと、変わらず銀行融資が受けられる会社はあるものの、いっぽうで、急に融資が受けにくくなるような会社が増えてくるかもしれない、ということになります。

では、なぜ融資が受けにくくなるのか? 大きく2つ、「経営者保証」と「伴走支援」が挙げられます。

まずは、経営者保証について。2023年4月以降、銀行には「経営者保証の説明義務」が課されました。経営者保証をとるのであれば、融資先に対してその理由を説明し、どうすれば経営者保証が不要になるのかについても説明をしなければなりません。

銀行にとっては、メンドーきわまりないハナシです。融資先ともめるきっかけにもなるところです。だったら、そもそも経営者保証をとらなければいけないような会社には、融資をするのをやめてしまおう、という銀行があってもおかしくはありません。

つまり、経営者保証を必要としないような、業績が良くて、将来性がある会社にしぼって融資をしようという考え方です。すると、当然ながら、業績が悪い会社などは融資が受けにくくなります。

また、最近では、金融庁が銀行に対して「伴走支援」を強く求めるようになりました。

具体例で言うと、融資先の経営計画書づくりに銀行も関わって、その後の計画実行・管理の検証についても、アドバイスや支援をしながら関わっていく。結果、会社が成長できれば、資金ニーズが増えて、銀行はさらに融資ができるようになる。銀行も成長できる、みたいな。

となると、計画書がつくれるかどうか、計画の実行力・行動力があるか、実行の過程・結果を検証できる管理力はあるか、といった点で「できる会社」と「できない会社」とに分かれます。

できない会社にとっては、銀行融資のハードルが上がることになる、融資が受けにくくなる。では、自社の取引先が「できない会社」だった場合にどうなるか? めぐりめぐって、自社も連鎖倒産はありえますよね、というハナシです。

まとめ

世の中はすっかり脱コロナのいま。中小企業に起きるかもしれない、銀行起点の連鎖倒産について、考えられる3つのシナリオをお話ししてきました。社長は、備えましょう。

具体的には、「銀行選びを見直す」「取引先の与信管理を徹底する」「倒産防止共済を利用する」「あらかじめ融資を受けて手元資金の充実をはかる」などが考えられます。

    脱コロナのいま、中小企業に起きうる銀行起点の連鎖倒産3つのシナリオ
    1. 銀行の破たん
    2. 銀行再編の加速
    3. 融資のハードルUP
脱コロナのいま、中小企業に起きうる銀行起点の連鎖倒産3つのシナリオ

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