社長は、日々の勉強が欠かせません。ところが、社長に足りない銀行融資の勉強がある、といったらどうでしょう? 銀行融資のことなら知っている、という社長にこそ聞いてほしいお話です。
社長に対して失礼な!
きょうは、「社長に足りない銀行融資の勉強とは?」というテーマでお話をします。などと言うと、「社長に対して失礼な!」とおもわれるかもしれませんが。
すべての社長が「勉強不足」だというわけではありませんし、勉強熱心な社長のなかにも「銀行融資」に関しては不足しているケースもある、というだけのことです。
そのうえで、「社長に足りない銀行融資の勉強」とはいったい何なのか? おもなものを挙げると、次のとおりとなります↓
- 決算書の見方
- 銀行員の考え方
- 銀行業界の動向
これらを見て、「いやいや、勉強しているし!」とおもわれるかもしれませんが、実は「勉強の対象を誤っている」ということもあるので注意が必要です。結果、融資を受けにくくしているかも…
そのあたりもふまえて、このあと順番に解説をしていきます。
社長に足りない銀行融資の勉強とは?
決算書の見方
だ、か、ら、決算書の見方なんてわかっているし、勉強だってしてきた! と、怒り出す社長がいるかもしれません。社長たるもの、決算書が読めてあたりまえだ! と、おもわれるかもしれません。
ですが、決算書の見方も「いろいろ」です。そのなかには、「銀行員の見方」もあります。では、質問です。社長は、銀行員による決算書の見方をごぞんじでしょうか?
と聞かれて、「そもそも銀行員の見方ってどういうこと?」とおもわれるのであれば、銀行融資に関していえば、勉強が足りないと言ってよいでしょう。
銀行員の見方とは、ひとことで言えば「企業会計の視点」です。その対極とも言えるのが「税務会計の視点」になります。税務会計の視点とは、誤解を恐れずに言えば「税金が高くならなければいい(あるいは、安くなればいい)」という視点です。
たとえば、赤字のとき(あるいは利益が少ないときに)には、減価償却費を税法の限度額まで計上しないとか、買掛金や未払金の計上を見送るとか、不良債権・不良在庫の損失計上をしないとか。
すると、税金面(対税務署)ではOKですが、自社の「正しい状況」を把握できなくなってしまう… というのが、税務会計による最大のデメリットです。
銀行は、融資先の「正しい状況」をもとに、評価・審査をして融資をするのですから、税務会計にかたよった決算書では、融資がしづらくなってしまいます。
それに、社長自身も自社の「正しい状況」を把握しづらくなるのですから、企業会計の考え方を取り入れた決算書をつくるのがおすすめです。そのためには、企業会計の勉強をしましょう。
あわせて、貸借対照表の見方も深めることが大切です。決算書というと、損益計算書ばかりを見ていて、貸借対照表の見方がよくわからない… という社長は少なくありません。
ところが、銀行は「貸借対照表も」よく見ています。とくに、「資産のなかみを精査する(金額に見合う価値はあるのか?)」という見方をしています。損益計算書ではわからない部分です。
以上をふまえて、銀行員による決算書の見方として、「企業会計」と「貸借対照表」についての理解を深めるようにしましょう。それぞれをまとめた動画もありますので、ご参考にどうぞ。
企業会計なら↓
貸借対照表なら↓
銀行員の考え方
前述した、決算書の見方についても「銀行員の考え方」ではありますが。ほかにもまだ、銀行員の考え方はいろいろです。たとえば、「貸したいときに借りてほしい」とか。
銀行には、おカネを貸したい(融資をしたい)タイミングというものがあります。たとえば、銀行の決算近くだったり、ノルマを達成したいときなどです。融資をして、じぶんの・支店の業績を上げたい! みたいな。
貸したいということは、言い換えると、会社は「借りやすい」ということです。融資条件の交渉もしやすくなります。金利を引き下げたり、信用保証協会や経営者の保証を無しにしたり。
そう考えると、銀行が貸したいときに借りることは、会社にとって「チャンス」なのです。にもかかわらず、「いまはおカネがあるから」と銀行の融資セールスを断ってしまう社長がいます。
たしかに、それもひとつの考え方ですが、「あえて借りる」ことで融資条件を良くしておくことも有効な銀行対応です。いちど融資条件が良くなれば、次の融資では、その良くなった条件をもとにして融資条件を交渉することができます。次の融資にも活きるのです。
また、銀行員は多くを語らないものでもあります。たとえば、融資を断るときの理由を、銀行員は言いたがりません。融資先とのトラブルを避けたい、という銀行員の考え方があるからです。
融資を断る理由を正直に言ったら、「そんなのおかしい!」と怒り出す社長もいます。クレームになれば、銀行員の出世に悪い影響を与えることもあるわけです。
だとしたら、そのような「銀行員の考え方(トラブルを避けたい)」を理解したうえで、「銀行が融資を断る理由にはどのようなものがあるのか?」という銀行員の考え方も勉強する必要があります。
まずは、銀行員の考え方をざっくりと、広く学ぶことができるようにと Kindle本も書きました。よろしければ、ご参考にどうぞ↓
銀行業界の動向
なにごとにおいてもですが、状況は常に変化をしています。そのなかで、「あたらしい情報」にふれておくことも重要です。銀行融資に関して言えば、銀行業界の動向に関するニュースを見ておくとか。
とはいえ、ひとくちにニュースといっても、その情報量は凄まじいものがあります。すべてを見ようとしたらキリがありませんし、すべてを見る必要はなかったりもするわけで。
その取捨選択の助けとして、銀行業界のニュースに関する「週刊メルマガ」の配信もはじめました。毎週1週間のニュースのなかから、わたしが厳選して、解説もつけてお届けしています↓
なお、選んでいるニュースは「あたらしい」という基準だけではありません。「点が線になるか」という基準で選んでいます。どういうことかというと…
1つ1つのニュースは言ってみれば、「点」です。ところが、過去(歴史)をふまえて、将来の変化に影響するとおもわれるニュースは、その点と点を結ぶことで、いつしか線になります。
線、つまりは、「つながり(関連性)」ができるということです。つながりがわかると、汎用性や普遍性として、いろいろなケースであったり、将来にわたって銀行融資に役立つものと考えます。
ゆえに、日々のニュースについては、点が線になるかを意識しながら、継続的に見続けることが重要になるわけです。そのお手伝いをするための週刊メルマガ、ということになります。
ちなみに、古い過去記事ではありますが、サンプルをひとつ公開中です。よろしければ、ご参考にどうぞ↓
まとめ
社長は、日々の勉強が欠かせません。ところが、社長に足りない銀行融資の勉強がある、といったらどうでしょう? 銀行融資のことなら知っている、という社長にこそ聞いてほしいお話でした。
いやいや、勉強ならしているし。と、おもわれるかもしれませんが、実は「勉強の対象を誤っている」ということもあるので注意が必要です。結果、融資が受けにくくなってしまいます。
本記事が、そんな勉強のしかたを、あらためるきっかけになれば幸いです。
- 決算書の見方
- 銀行員の考え方
- 銀行業界の動向