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信用保証付債権DDSとは?保証協会版劣後ローンという選択肢

信用保証付債権DDSとは?保証協会版劣後ローンという選択肢

最近、見聞きすることが増えた「信用保証付債権DDS」について。いったい何なのか?利用するとどんなよいことがあるのか?利用するときの注意点などをまとめてみました。

目次

信用保証付債権DDSはご存知ですか?

いっとき、日本政策金融公庫の「資本性劣後ローン」が話題となりました。最近では(2023年8月2日現在)、保証協会版資本性劣後ローンといえる「信用保証付債権DDS」を見聞きする機会が増えています。

信用保証付債権DDSだなんて、難しそうな名前だし。ウチには関係ないよね、とスルーしている社長がいるようでしたら、そんなことはありません。けしてカンタンではないものの、信用保証付債権DDSは、中小企業の財務改善における1つの選択肢だからです。

というわけで、本記事では信用保証付債権DDSについてお話をしていきます。具体的な内容としては、次のとおりです↓

このあとの話の内容
  • 信用保証付債権DDSのしくみとねらい
  • 信用保証付債権DDSがなぜいま注目されるのか?
  • 信用保証付債権DDSの制度概要と注意点

要は、信用保証付債権DDSとはいったい何なのか? 利用するとどんなよいことがあるのか? 利用するときにはどこに気をつけたらよいのか? といったお話です。それではこのあと、順番に確認していきましょう。

信用保証付債権DDSのしくみとねらい

そもそもDDSって何? という話から始めます。DDSとは、「デット・デット・スワップ」の略であり、直訳すると「負債を負債と交換する」となってしまい、さっぱり意味がわからないでしょう。

では、いったいどういうことなのか?「負債を負債と交換する」といっても、交換する負債の「種類」が違うのですね。もう少し具体的にいうと、「ふつうの負債を、劣後ローン(負債)と交換するのがDDS」ということになります。

では、劣後ローンとは何なのか? ほかの負債よりも、返済の優先度が低い(=劣後)負債が劣後ローンです。

つまり、もしも会社が破産するという場合には、まず、できるだけ負債を返済するわけですが、劣後ローンについては優先度が低いため、返済してもらえる可能性が少なくなります。

だとすれば、「おカネを出したっきり、返してもらえないという意味では「資本金(出資)」みたいなものだよね」ということであり、実際、銀行からは「負債ではなく資本(とみなす)」として評価されることになるわけです。

以上が、DDSの「しくみ」なのですが、「それに何のメリットがあるわけ?」とおもわれるかもしれません。そこで、DDSの「ねらい」についてお話をしてみます。

たとえば、資産が 1,000、負債が 1,200という会社があったとして。現状では、200の債務超過です(負債 1,200 ー 資産 1,000)。ご存知のとおり、債務超過だと銀行からの融資が受けにくくなります。

すると、業績が悪い(おそらく資金繰りも悪い)うえに、融資も受けられず、業績や資金繰りの改善が困難になってしまう… というのが問題です。

そこで、DDSを実行できたらどうでしょう? 負債 1,200のうち、300をDDSによって劣後ローンに交換できたとしたら、300は「負債ではなく資本」なのですから、100の資産超過に転換することができます(資産 1,000 ー 負債 900)。

これにより、会社は銀行から新規融資を受けやすい状態となり、資金調達ができれば、そのおカネをもとに、業績改善・財務改善を進めることができるはず。というのが、DDSの「ねらい」です。

信用保証付債権DDSがなぜいま注目されるのか?

DDSの「しくみ」と「ねらい」を理解したところで。なぜいま、信用保証付債権DDSが注目されるのか? についてお話をしていきます。

DDSとは「劣後ローン」のことであり、そのDDS自体は以前からありました。メジャーなところでは、冒頭でもふれた、日本政策金融公庫の資本性劣後ローンです。

コロナ関連で言えば、「新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)」という制度があり、コロナとは関係のない新規事業や事業再生関連で言えば、「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」が挙げられます。

これらと、同じ「DDS」として、信用保証協会の保証付き融資を対象としたのが「信用保証付債権DDS」です。ただ、その信用保証付債権DDSもまた、以前から制度自体はありました。

が、利用できる会社がとても限られていたために、あまり話題にのぼることはなかったのですね。ではなぜ、限られていたのか?

中小企業活性化協議会の支援による再生計画の策定が、制度利用の要件とされていたからです。同協議会は公的機関であり、支援費用を軽減できるなどのメリットがあるいっぽうで、再生可能性が低い会社は支援が受けられない(そのハードルが高い)というデメリットがあります。

ゆえに、信用保証付債権DDSは、なかなか利用が進まなかったわけです。ところが、2023年1月末からは、「認定経営革新等支援機関の支援による再生計画」でもOKとなり、間口が拡大されることとなりました。

ちなみに、認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関であり、税理士や金融機関などが多く認定を受けているところです。

というわけで、信用保証付債権DDSがいま注目されるのは、「間口が広がったから」という理由がひとつ。そして、もうひとつの理由が「ゼロゼロ融資(実質無担保・無保証)の返済本格化」です。

コロナ禍で、多くの会社が利用したゼロゼロ融資は、数年ていどの据置期間が設定されました。その据置期間もおわり、返済がはじまる会社の数がピークに達しています。

そのなかには、返済に窮する会社もあるわけで。そういった会社における解決策の1つとして、信用保証付債権DDSが注目されている、という一面もあるでしょう。

でも、信用保証付債権DDSがどうして、返済に窮する会社にとって解決策になるのか? 新規借入ができる可能性があるのとは別に、信用保証付債権DDSにはほかにも資金繰り面でのメリットがあります。

そのあたりはこのあと、制度概要として確認をしていきましょう。

信用保証付債権DDSの制度概要と注意点

中小企業庁のWEBサイトに掲載されている、信用保証付債権DDSの概要を確認していきます。

対象者

信用保証協会を利用している中小企業者であって、再生計画等を策定し、金融機関等の支援を得て、経営改善・事業再生を図ろうとするもの

中小企業庁WEBサイトより

認定経営革新等支援機関の支援による再生計画が利用要件になることは、前述したとおりです。

劣後化手続き

信用保証付債権について保証条件変更手続きを行う

中小企業庁WEBサイトより

取引銀行(基本はメインバンク)・認定経営革新等支援機関との相談を通じて、信用保証協会との協議を進めていくことになります。

期間

5年超(事業再生計画等で求められている期間)

中小企業庁WEBサイトより

日本政策金融公庫の資本性劣後ローンは、「5年超 20年以内」とされていることもふまえて、比較的長期の返済期間にも対応できるものと考えます。

償還期間

原則として、期限一括返済

中小企業庁WEBサイトより

毎月分割返済ではなく、「期限一括返済」というのは大きなポイントです。これにより、信用保証付債権DDSを利用する会社は、既存融資の返済を据え置くことができるため、資金繰りを改善させることができます。

そのあいだに、事業改善・財務改善を進めやすくなる、というのはメリットです。

保証料率

通常の条件変更手続き同様、貸付実行時の保証料を適用

中小企業庁WEBサイトより

信用保証協会の保証付きですから、信用保証料の支払いが必要になります。

金利

原則として、配当可能利益に応じた金利設定

中小企業庁WEBサイトより

つまり、利益が多く出るようなら金利は高く、利益があまり出ないようなら金利は低く、ということになります。

劣後ローンは「負債ではなく資本」だと前述しました。なので、劣後ローンにおける利息に、配当金の性格をもたせようとしている、ということです。

日本政策金融公庫の資本性劣後ローンについても、金利はそのような制度設計になっています

まとめ

最近、見聞きすることが増えた「信用保証付債権DDS」について。いったい何なのか?利用するとどんなよいことがあるのか?利用するときの注意点などをまとめてみました。

けしてカンタンではないものの、中小企業の財務改善における1つの選択肢として、社長はアタマに入れておきましょう。いずれ、利用すべき場面がくるかもしれません。

このあとの話の内容
  • 信用保証付債権DDSのしくみとねらい
  • 信用保証付債権DDSがなぜいま注目されるのか?
  • 信用保証付債権DDSの制度概要と注意点
信用保証付債権DDSとは?保証協会版劣後ローンという選択肢

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