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コロナ対策資本性劣後ローンとは?特徴や注意点など概要解説

コロナ対策資本性劣後ローンとは?特徴や注意点など概要解説

2020年8月からはじまった、日本政策金融公庫の融資商品「新型コロナ対策資本性劣後ローン」が注目されています。

というわけで、「新型コロナ対策資本性劣後ローン」の特徴や注意点など、概要の解説です。

目次

注目が集まる「新型コロナ対策資本性劣後ローン」

公的金融機関である日本政策金融公庫の融資商品のひとつに「新型コロナ対策資本性劣後ローン(新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付)」があります。

2020年8月からはじまった、あたらしい商品ながらも。コロナ関連の融資ということで、注目される・見聞きする機会が増えてきました。

というわけで。そんな「新型コロナ対策資本性劣後ローン」とは、どのうような商品なのか。特徴や注意点など、概要を解説していきます。内容は、次のとおりです↓

このあとのお話の内容
  • 資本性劣後ローンとは?
  • 新型コロナ対策資本性劣後ローンの利用対象者
  • 新型コロナ対策資本性劣後ローンの特徴や注意点

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

資本性劣後ローンとは?

日本政策金融公庫の「新型コロナ対策資本性劣後ローン」について。まず、「資本性劣後ローンとは?」から確認していきましょう。

おおまかなイメージとして、「融資ではあるけれど、出資みたいなものだ」というのが「資本性劣後ローン」です。

たとえば、資本性劣後ローンとして 3,000万円を借り入れた場合。その 3,000万円は「負債ではなく自己資本とみなす」ということになります。

すると、資本金が 3,000万円増えるようなカタチになるため、その分だけ「自己資本比率」を上昇させる効果がある。銀行は、自己資本比率が低い会社(=危ない会社)には融資がしにくいので、資本性劣後ローンによって、以降の融資が受けやすくなる。

というのが、会社側のメリットになります。

コロナの影響を受けて、赤字がふくらんでいるような会社であれば、自己資本が大きく目減りしている、あるいは、自己資本がマイナス(=債務超過)となっているケースもあるわけで。

新型コロナ対策資本性劣後ローンは、そのような会社に対する「支援」という位置づけになります。

なお、「劣後」とは。ほかの負債よりも、「支払義務が劣後する」との意味です。もしも会社におカネが無くなってしまった場合、まずはほかの負債(仕入代金や通常の借入)を支払って、それでもおカネが余ったら返済してもらえる。というのが「劣後」の意味になります。

そのようなところもまた、「負債ではなく自己資本とみなす」という商品性があらわれているところです。

【参考】

「負債ではなく自己資本とみなす」のは、あくまで融資審査上の話です。決算書上は、資本性劣後ローンは「負債」として表示されます。

新型コロナ対策資本性劣後ローンの利用対象者

続いて、新型コロナ対策資本性劣後ローンの利用対象者について。

どのような会社が利用できるのか?日本政策金融公庫のWEBサイトによれば、次のように案内されています↓

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた法人または個人企業の方であって、次のいずれかに該当する方

1.J-Startupプログラムに選定された企業又は中小企業基盤整備機構が出資する投資ファンドから出資を受けた方

2.中小企業再生支援協議会の支援を受けて事業の再生を図る方

3.原則として認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の指導を受けて事業計画を策定した方であって、かつ民間金融機関等との協調支援により事業の発展又は継続を図る方

いろいろ書いてありますが、ポイントは2つです。

ひとつは、アタマの「新型コロナウイルス感染症の影響を受けた」というところ。この商品は、まくまで「コロナ支援」ですから、コロナの影響を受けていることが前提です。コロナ以外の要因であれば、利用対象外になりますので念のため。

それからもうひとつ。この商品を利用するのであれば、多くの会社は上記の「3.」になるであろう、ということです。1.と2.について、説明は省きますが、多くの会社はそのような状況には当てはまらないでしょう。よって、3.になるわけですが。

3.を見ていくと、「原則として認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の指導を受けて事業計画を策定した方」であり、かつ、「民間金融機関等との協調支援により事業の発展又は継続を図る方」と書かれています。

つまり、「認定支援機関(認定を受けている税理士やコンサルタントなど)」に依頼が必要であること。さらには、民間金融機関から「協調融資(後述します)」の約束を取り付けることが必要になります。

利用するにも、なかなかハードルが高そうだ… というところは押さえておきましょう。少なくとも、同じコロナ支援である「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の簡便さをイメージしてはいけません。

新型コロナ対策資本性劣後ローンの特徴や注意点

ここからは、「新型コロナ対策資本性劣後ローン」の特徴や注意点について解説をしていきます↓

  • 長期借入・期限一括返済
  • 毎期の報告が必要
  • 利益が出ると金利が高い
  • 協調融資の約束が必要

長期借入・期限一括返済

「新型コロナ対策資本性劣後ローン」の返済期間は3種類。「5年1ヵ月、10年、20年のいずれか」です。10年や20年となれば、通常の融資よりもだいぶ長く借りられます。

長く借りられることで、長期的に資金繰りが安定するのは、借りる側にとってのメリットでしょう。

また、返済は「期限一括返済」です。借りているあいだの返済は無し、毎月利息を支払うだけ。というのも、資金繰りを安定させる効果がありますね。

いっぽうで。期限を迎えたときには、一括返済です。ミミをそろえて返さなければいけません。ですから、「計画性」が重要になります。

さきほど、「利用対象者」について、「事業計画を策定」する必要があるとお話しました。この事業計画のなかで、「期限を迎えたときに一括返済ができること」を表現できるかどうかがポイントになります。

計画をつくること自体はもちろん、つくった計画にそって実行・管理できるか?会社の「管理能力・姿勢」を問われていることも、アタマに入れておきましょう。

「新型コロナ対策資本性劣後ローン」は長期、かつ、期限一括返済だけに、借りておしまいというわけにはいきません。通常の融資よりもさらに、「計画性」が重要になります。

毎期の報告が必要

いましがた、「新型コロナ対策資本性劣後ローン」を利用するには、事業計画の策定が必要になる、と前述しました。そのうえで、計画の実行・管理もだいじだ、ともお話をしました。

そのあたり、「融資条件」にもしっかりと明示されています。こちらです↓

・審査時に原則として新型コロナ対策資本性劣後ローン専用の事業計画書をご提出いただく必要があります。

・毎期の経営状況の報告等を含む特約を締結していただきます。

上記の2つめ、「毎期の経営状況の報告等」に注目です。つまり、毎年決算が終わったら、経営状況を報告しなければなりません。当然、当初の計画の進捗状況なども問われることになるでしょう。

資本性劣後ローンとは、「融資ではあるけれど、出資みたいなものだ」という話もしました。だとすれば、資本性劣後ローンの融資をする日本政策金融公庫は、会社にとって「株主」のようなものです。

株主は会社に対して「意見」する権利があります。ということは、毎期の経営状況について、日本政策金融公庫からいろいろ意見を言われることもしかたない(経営状況が思わしくないときはとくに)、との理解が必要です。

そういった「窮屈さ」のようなものを「デメリット」と考えることもできるでしょう。長期・期限一括返済の「メリット」ばかりではない、ということです。

利益が出ると金利が高い

「新型コロナ対策資本性劣後ローン」の大きな特徴として、「業績連動型の金利」が挙げられます。具体的には、次のとおりです↓

税引後当期純利益額返済期間5年1ヵ月返済期間 10年返済期間 20年
0円以上3.40%3.40%4.80%
0円未満1.05%1.05%1.05%

上記のとおり、利益が出ているとき(税引後当期純利益額が0円以上)には、金利が非常に高くなっています(3.40%〜4.80%)。逆に、利益が出ていないとき(税引後当期純利益額が0円未満)には利益が低めです(1.05%)。

このような「しくみ」になっているのは、やはり「コロナ支援(業績が悪い会社の支援)」だからでしょう。

したがって、「新型コロナ対策資本性劣後ローン」は、利益が出ている会社・利益が出そうな会社がすすんで利用するような商品ではないことがわかります。

「利益が出た・利益が出そうだから(高い金利を避けるために)期限前に返済(繰上返済)」というわけにもいかない点にも注意が必要です。原則、当初の期限に一括返済、になります。

ちなみに。それにしたって、利益が出たときの金利高すぎだろう。と言うのであれば、そうでもありません。

なぜなら、「新型コロナ対策資本性劣後ローン」は長期の融資です。長期であればあるほど、会社が倒産するリスクは高まります。だから、金利が高いのは当然です。

さらに、「劣後ローン」ですから、会社になにかあったときには返済してもらえる可能性はとても低い。だから、その分の金利が高いのも当然でしょう。

協調融資の約束が必要

新型コロナ対策資本性劣後ローンの「利用対象者」のお話のなかで、民間金融機関から「協調融資」の約束を取り付けることが必要だと言いました。

ここで言う「協調融資」とは。日本政策金融公庫から、新型コロナ対策資本性劣後ローンを受けるにあたって、「それならウチも融資を出します」と言ってくれる民間金融機関があるかどうか、です。

そもそも、新型コロナ対策資本性劣後ローンは、「負債ではなく自己資本とみなす」ことで、銀行からの融資を受けやすくする狙いがありました。

だから、「実際に融資をしてくれる銀行を探してね」ということになります。

これを聞いて、「あの銀行ならなんとなく貸してくれそうだ」とか、「貸してくれる、ということにしておこう」といった状況で、新型コロナ対策資本性劣後ローンを利用することはできません。

なぜなら、申込時に提出する「事業計画書」のなかには、「協調支援機関」を明示する欄があるからです。

そこでは、「協調支援機関名」「支援内容(融資金額)」「支援時期(公庫融資から1年以内)」「協調支援機関の問い合わせ先・担当者名」までを記載します。テキトーなことは書けません。

したがって、新型コロナ対策資本性劣後ローンを利用するにあたっては、民間金融機関との「事前調整(新型コロナ対策資本性劣後ローンを受けたら融資をしてくれるか?)」が必要である点に注意しましょう。

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まとめ

2020年8月からはじまった、日本政策金融公庫の融資商品「新型コロナ対策資本性劣後ローン」が注目されています。

長期の資金調達ができるメリットがある反面、注意点も多く、利用対象者は限られる商品です。融資審査のハードルもけして低くはありません。

似たような商品(資本性ローン)は、民間の銀行にも広がりを見せていますので、商品の特徴や注意点など概要を押さえておくとよいでしょう。

コロナ対策資本性劣後ローンとは?特徴や注意点など概要解説

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