決算予測をするなら貸借対照表もイメージする【銀行融資】

決算予測をするなら貸借対照表もイメージする【銀行融資】

決算予測というと、 損益計算書の予測だけという社長がいますが。銀行融資を考えるのであれば、貸借対照表の予測も大切です。では、 貸借対照表の予測で、とくに重要な項目とは…?

目次

損益計算書の予測だけでは足りない。

社長であれば、決算予測の大切さは理解していることでしょう。決算間際になって「こんなはずじゃなかった」と慌てることがないように、決算予測は欠かせないものだといえます。

この点で、決算予測というと、損益計算書の予測をイメージする社長が多いものです。つまり、売上を予測し、加えて原価・経費を予測し、それらの差額としての利益を予測する、ということになります。

いっぽうで、貸借対照表まで予測をする社長は、極めて少ないものとおもわれます。ところが、銀行融資を受ける場合には、損益計算書だけではなく、貸借対照表の予測も重要であることを覚えておきましょう。なぜなら、銀行は融資先の評価をするにあたり、貸借対照表もよく見ているからです。

では、貸借対照表について、銀行は具体的にどこをよく見ているのか? そこをふまえて、社長が決算予測をするときに、貸借対照表でイメージすべきことは、次のとおりになります↓。

決算予測をするときに貸借対照表でイメージすべきこと
  • 借入シェア
  • 預金残高
  • 純資産

なお、 貸借対照表の予測のしかたがわからない…という社長も少なくありません。予測するための手順や方法については別の記事にまとめました。ご参考にどうぞ↓

決算予測をするときに貸借対照表でイメージすべきこと

借入シェア

ここで言う借入シェアとは、借入総額に占める各銀行の借入残高の割合です。

たとえば、借入総額が 5,000万円、そのうちA銀行の借入残高が 3,000万円だとすると、A銀行の借入シェアは 60%になります(3,000万円÷5,000万円)。

というように、 次の決算日時点における、各銀行の借入シェアをイメージしてみましょう。

銀行は、融資先の決算書を預かると必ず、自行の借入シェアを確認しています。そのうえで、自行の融資姿勢を決めるにあたり参考にしているのです。

つまり、他行が融資を増やしているのであれば、自行も融資を増やそうと考える。逆に、他行が融資を減らしているのであれば、自行も融資を控えようと考える、ということになります。

このとき、「メインバンク(=借入シェアが一番高い銀行)がどの銀行であるか」に加えて、「メインバンクが融資を増やしているか・減らしているか」を、銀行はとくによく見ているものです。

メインバンクとは、融資先の状況をもっともよく把握している銀行のはずですから、そのメインバンクが融資を増やしているのであれば安心、減らしているのであれば不安がある、と考えます。

この点で、「メインバンクがどの銀行であるか」が重要になるわけですが、決算までのあいだに借入をすることによって、借入シェアが変動することもあるでしょう。

結果として、それまでのメインバンクよりも、あらたに借入をした銀行の借入シェアが上回ってしまうこともありえます。

すると、それまでのメインバンクはおもしろくないでしょうし(融資先に裏切られた!)、他の銀行は「メインバンクから見限られて、借りられなくなってしまったのかな?」とも見られるところです。

そうして、それまでのメインバンクと疎遠になったり、他の銀行からの融資を受けにくくなったりするようだと、資金繰りに悪影響が生じます。

なので、社長は貸借対照表を予測したうえで、決算時点の借入シェアをイメージしながら、決算までの借入を考えることが大切です。決算前にうっかり、借入シェアの順位が急変するようなことがないように注意しましょう。

預金残高

決算予測をするにあたって、 利益の予測はしても、預金残高の予測までしている社長は少ないものです。

ところが、銀行にとっては「利益も大事、預金も大事」。言うまでもなく、貸したおカネの返済をしてもらうには、おカネが必要だからです。極端を言えば、いくら利益が出ていてもおカネがなければ、返済をしてもらうことができません。

したがって、銀行は貸借対照表の預金残高をよく見ています。だとすれば、社長もまた、決算時点における預金残高をイメージしておくのがよいでしょう。

なにしろ、決算日を過ぎてしまえば、貸借対照表の預金残高を増やすことはできません。増やしたいのであれば、決算日を迎える前です。ゆえに、決算予測の時点で、預金残高をイメージしておく必要があります。

その上で、決算日にはできるだけ預金残高を多くできるように算段しましょう。たとえば、売掛金はできるだけ回収する、在庫はなるべく販売して現金化する、遊休不動産は売却するなど。

預金残高が多ければ多いほど、銀行は安心なので融資をしやすくなります。逆に、預金残高が少ないほど、銀行は不安なので融資をしづらくなります。といった、銀行の理屈を理解することが大切です。

この点で、社長が借入を嫌うあまり、預金残高が少ないくらいなら、借入を増やしてでも預金残高が多いほうが銀行からの評価は高くなります。これも銀行の理屈として覚えておきましょう。

銀行から借入できるということは、それだけの信用があるということであり、借入をして預金残高が多ければ、少々赤字になったとしても返済を続けることができます。

預金残高の目安は、少なくとも「平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の1か月分」以上です。これが、1か月分未満となると、銀行からの融資は極端に受けづらくなります。

純資産

純資産とは、自己資本のことであり、具体的には「貸借対照表の純資産の部の合計額」です。言い換えると、「純資産 = 資産の合計額 ー 負債の合計額」でもあります。

純資産がマイナス、つまり「資産の合計額 < 負債の合計額(債務超過、と呼びます)」になると、きわめて危険な状態であることから、銀行融資が受けにくくなることを忘れてはいけません。

ところが、その純資産を、あまり見ていない社長は少なくないものです。実際に、「純資産はいくらぐらいありますか?」と聞かれても、答えられないことが多いのではないでしょうか。

では、決算予測における純資産の額は、どのように計算できるのか?

「前期末の純資産 + 当期の税引後利益」で計算できます。 なので、当期の税引後利益がマイナス(赤字)であれば、次の決算の純資産の額は、前期末の純資産の額よりも減ることに注意が必要です。

これにより、純資産がマイナスになるようであれば、融資が受けにくくなるのですから、「何とかプラスでおえられないか?どうすればよいか?」を真剣に考える必要があります。

決算日を過ぎてしまえばできることも限られるので、決算予測をして、できるだけ早めに手を打つことが大切です。

なお、どうしても純資産がマイナスになってしまう… という場合。できるだけ、マイナスを少なく抑えたほうがよいのは言うまでもありません。

銀行は、そのマイナスを「3年以内で解消できるか?」という見方をしています。つまり、以降3年分の税引後利益で解消できるのか、です。できることを説明するためには、経営計画書の作成・提示が有効になります。あわせて検討してみましょう。

まとめ

決算予測というと、 損益計算書の予測だけという社長がいますが。銀行融資を考えるのであれば、貸借対照表の予測も大切です。

では、 貸借対照表の予測で、とくに重要な項目とは…? を本記事でまとめました。 それらの項目については、決算を迎えるまでにイメージしてみるようにしましょう。 銀行融資が受けやすさにつながるはずです。

決算予測をするときに貸借対照表でイメージすべきこと
  • 借入シェア
  • 預金残高
  • 純資産
決算予測をするなら貸借対照表もイメージする【銀行融資】

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