財務分析は「額よりも率」で見るべきケース3選

財務分析は「額よりも率」で見るべきケース3選

財務分析について、「額で見るか、率で見るか」の議論があります。どちらかといえば人気の「額」に負けるなということで、「額よりも率」でみるべきケースのご紹介です。

目次

率も負けるな。

いわゆる「財務分析(≒決算書分析)」について。額で見るか、率で見るか?の議論があります。

たとえば、売上高であれば、前期の売上高と当期の売上高の金額差で見るのか(=額で見る)、それとも、前期の売上高に対する当期の売上高の比率で見るのか(=率で見る)、みたいな。

あるいは、売上総利益について金額で見るのか(=額で見る)、それとも、売上総利益率で見るのか(=率で見る)、といったこともあるでしょう。

もちろん、額にも率にも、それぞれ良いところがあるわけですが。わたしが知る限り、「率よりも額」との考え方のほうが、人気があるようにおもいます。

だったら、「率も負けるな」ということで、本記事では「額よりも率で見る」べきケースを確認していきましょう。具体的には、次のとおりです↓

財務分析は「額よりも率」で見るべきケース3選
  • 他社との比較
  • 売上至上主義
  • 計画達成の検証

それではこのあと、順番に解説をしていきます。

財務分析は「額よりも率」で見るべきケース3選

他社との比較

たとえば、売上高の伸びについて。同業他社と比べたときに、自社の伸びは大きいのか小さいのか。これを額で比べるのは、難しいものがあります。

なぜなら、自社と他社とでは、そもそもの売上規模が同水準とは限らないからです。もし、自社の売上規模が3,000万円、他社の売上規模が1億円だとして、いずれも1,000万円伸びたとしたら。

額で見れば同じであっても、率で見れば、自社のほうが伸びが大きいことがわかるでしょう。というように、他社比較のケースでは「額よりも率」のほうが適しています。

とはいえ、他社比較なんてする必要があるのか?とおもわれるかもしれません。が、銀行は融資先の評価をするにあたって、同業他社比較をしています。

なので、銀行融資を必要とする会社であれば(ほとんどの中小企業がそうでしょう)、銀行の評価を理解するうえでも、他社比較をしておくことが大切です。

そのうえで、自社が他社と比べて、どういった違いがあるのかをアピールすることが、銀行融資の受けやすさにつながります。そのあたり、くわしくは別の記事にまとめました↓

なお、他社比較をするのに便利なツールとして、経済産業省がWEBで提供している「ロカベンシート(Excelファイル)」や、中小企業基盤整備機構がWEBサービスとして展開している「経営自己診断システム」がおすすめです。

いずれも、「無料」かつ「手軽(アカウント登録の必要なし)」に利用できます。また、同業他社と自社とを率で比較するにあたり、各種財務指標の同業社平均を知りたければ、日本政策金融公庫が公表している「小企業の経営指標調査」も確認をしてみるとよいでしょう。

売上至上主義

社長が気をつけるべきことの1つに、売上至上主義があります。文字どおり、売上を最優先にする考え方です。その売上至上主義の問題点が、利益を軽視することであるのはご存知でしょう。

わかりやすいハナシで言えば、売上高を増やそうと躍起になって、値下げをしてでも売りまくろうとする…みたいな。結果、売上高は増えたとしても、収益性が下がってしまいます。

この点、値下げ前と値下げ後の「利益(売上総利益)の額」で比較することもできますが、売上高によっては、値下げ後でも値下げ前より利益が増えていることはあるでしょう。

すると、収益性が下がっていることには気づきづらいのが問題です。いっぽうで、「利益率(売上総利益率)」で比較をしたらどうでしょう。つまり、値下げ前の売上総利益率と、値下げ後の売上総利益率とを比較する、ということです。

これなら一目瞭然、値下げによって、収益性が下がったことにも気づきます。というわけで、売上至上主義という悪思考に陥らないためにも、社長は「率」で見ることも大切です。

また、社内目標を設定するときなどでも、売上高(額)とあわせて、利益率についても目標設定するのがよいでしょう。すると、社員もまた、売上高だけではなく、利益率も考慮した販売を考えられるようになります。

ところが、実際には、売上高だけを目標に掲げる社長が少なくありません。その理由の1つに、「原価の把握ができていない」ことが挙げられます。

「原価(各売上に対する直接的な費用)」がわからなければ、社員も利益率を考慮することはできません。原価を把握するしくみ(=原価計算)を整えるようにしましょう。

計画達成の検証

期のはじめに、損益計画(≒経営計画)を立てているでしょうか。中小企業の多くは立てていないものとおもわれますが、立てたほうがよいことは言うまでもありません。

なぜ、立てたほうがよいかというと…については、本記事の趣旨からはずれるため省きますが。計画を立てるのだとすれば、「立てておしまい」ではなく、計画の達成具合を検証することが大切です。

具体的には、毎月、前月分の試算表ができたら、その数字と、計画の数字とを比較する。そして、差異の原因分析をする。必要に応じて、改善策を検討する、ということになります。

この点、「試算表の数字」と「計画の数字」を比較するにあたり、額で比較することも必要ですが、率でも比較をしましょう。

たとえば、売上高。試算表の数字が900万円、計画の数字が1,000万円だとします。このときの「達成率」は90%です(900万円÷1,000万円)。

その達成率について、80%が「最低ライン」の目安になります。これは、銀行の見方です。80%を割り込むようなら問題あり、ということになります。

すると、銀行からの支援が受けづらくなったり、今後の計画についても、銀行に信用してもらいづらくなるので気をつけなければいけません。

ところで、銀行に計画を提出する必要があるのか?と、おもわれるかもですが。リスケジュール(返済の減額・猶予)を依頼するときには必須ですし、最近では、計画の作成・提示を条件とする融資も増えてきました。

よって、今後の融資では、いままで以上に、計画の必要性・重要性が高まる可能性があります。そのときに、率で見る(80%が最低ライン)という見方を忘れないようにしましょう。

まとめ

財務分析について、「額で見るか、率で見るか」の議論があります。どちらかといえば人気の「額」に負けるなということで、「額よりも率」でみるべきケースのご紹介をしました。

額にも率にも、それぞれの良いところがあります。額だけではなく、率の良いところも理解して、その使いどころを見極めるようにしましょう。

財務分析は「額よりも率」で見るべきケース3選
  • 他社との比較
  • 売上至上主義
  • 計画達成の検証
財務分析は「額よりも率」で見るべきケース3選

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