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社長がいま知るべき銀行融資のトレンド3選【2023年夏】

社長がいま知るべき銀行融資のトレンド3選【2023年夏】

2023年夏、現時点において、会社の銀行融資に関するいくつかのトレンドがあります。社長であれば知っておくべきトレンドを、3つご紹介です。まずは、概要だけでも押さえておきましょう。

目次

これからも変わっていく。

本記事の執筆日は、2023年8月30日。この時点において、会社の銀行融資に関するいくつかのトレンドがあります。社長であれば、知っておくべきものとして、おもには3つです↓

社長がいま知るべき銀行融資のトレンド3選
  • 資本性劣後ローン
  • 短期継続融資
  • 経営者保証の解除

これらを見て、言葉の意味がわからない場合はもちろん、どういったことがポイントなのか、利用するにはどうしたらよいのか、といったことがわからない場合には勉強をしましょう。

銀行融資も、いまと昔とでは変わったこともありますし、これからも変わっていきます。その変化がわからずにいると、自社の資金繰りには悪影響が生じるものです。

本記事では、3つのトレンドについて、勉強のきっかけになるようなお話をしていきます。言い換えると、それぞれのトレンドの「概要」です。それではさっそく、はじめていきましょう。

社長がいま知るべき銀行融資のトレンド3選

資本性劣後ローン

つい先日、金融庁から公表された「2023事務年度金融行政方針」でも、しっかりと明記されていたのが「資本性劣後ローン」です。

で、その資本性劣後ローンとは、銀行の評価上は「自己資本」と見なされる「借入金」のことをいいます。

業績が悪化し、「自己資本が過小」または「債務超過」に陥っているような会社は、資本性借入金を利用することで、借入しながらも自己資本を増やすことが可能です。

たとえば、資産1,000、負債1,200(うち、借入金500)の会社があったとします。つまり、200の債務超過です(資産1,000ー負債1,200)。銀行は債務超過を嫌うので、追加で支援を得るのは難しい状況だといえます。

ここで、借入金500を、資本性劣後ローンに置き換えることができたらどうなるか。自己資本とみなすことになるため、銀行の評価上は、300の資産超過に転じます(資産1,000ー負債700)。

すると、銀行から、あらたな借入をできるようにもなるわけです。また、借入ができなくても、資本性劣後ローンは、「返済期間5年超、期日一括返済」なので、毎月の返済が減る分、資金繰りは改善します。

さらに、金利は「業績連動」なので、業績改善途上(赤字)においては、支払う利息を抑えられるのもメリットです。その資本性劣後ローンを、利用する会社が増えています。

日本政策金融公庫の資本性劣後ローンに加えて、民間金融機関でも、信用保証協会の保証を付した資本性劣後ローンである「信用保証付債権DDS」が広がりを魅せいています。

実現可能性が高い事業計画が必要になるなど、利用のハードルはけして低くはありませんが、財務改善の「有効な一手」として、利用を検討できるようにしておくとよいでしょう。

短期継続融資

短期継続融資とは、いわゆる「経常運転資金」の融資を受けるにあたって、長期分割返済の証書貸付ではなく、短期期日一括返済の手形貸付や当座貸越で、おカネを借りることをいいます。

経常運転資金とは、算式で言うと「売上債権+棚卸資産ー仕入債務」です。これは、会社が事業を続けている限り、立て替える必要があるおカネであり、銀行借入で用意するのが財務のセオリーとなります。

この点、経常運転資金を長期分割返済で借りるとどうなるか?毎月の返済によって、手元のおカネはどんどん減っていきます。たとえば、経常運転資金として500万円を借りても、気がついたら、300万円、200万円…と、減っていくわけです。

すると、会社は経常運転資金として、常時500万円が必要だから500万円を借りたのに、そのおカネが減っていくのであれば、資金繰りもどんどん悪くなっていく…ということになります。

その問題を解決するのが、短期継続融資です。手形貸付の場合、短期期日一括返済ではありますが、期日が来たら、銀行の審査のうえで更新(手形を書き換える)するため、実質的には借りっぱなしとなります。

また、当座貸越の場合には、銀行が定めた極度額(限度額)の範囲内であれば、借入・返済は会社の自由なので、やはり、借りっぱなしにすることも可能です。

なので、経常運転資金が大きい会社ほど、従来の長期分割返済の借入を、短期継続融資に置き換えることで(毎月の返済がなくなる)、大きな資金繰り改善を期待できます。

ちなみに、「短期継続融資はいいけど、手形貸付を期日に更新できなかったらどうするのか?当座貸越の契約を打ち切られたらどうするのか?(つまり、一括返済を迫られたらどうするのか?)」といった、不安の声を見聞きもするわけですが。

銀行だって、融資先がつぶれるのは困りますから、そうそうカンタンに一括返済を迫るものではない、というのが経験則になります。それに、長期分割返済のままであれば、どこかで借入が必要になるわけですが、その借入だって必ずしもできるとは限らない点での不安はあるものです。

短期継続融資だけが不安で、長期分割返済のほうが安心だ、ということはありません。

経営者保証の解除

2023年4月以降、銀行には「経営者保証の説明義務」が課されています。文字どおり、銀行が経営者保証をとる場合には、融資先に対して説明を「しなければいけない」ということです。

もちろん、これまでも説明をすべきところではありましたが、義務ではありませんでした。ゆえに、とくに説明もなく「経営者保証をとるのが大前提」のケースは少なくなかったものと推測します。

この点、説明が義務化されたことで、社長はじゅうぶんな説明を受けられるようになりますし、経営者保証を解除する「きっかけ」を得られるようにもなるでしょう。

とはいえ、どんな会社も、必ず経営者保証を解除してもらえるわけではありません。経営者保証が必要だと見られる会社に対しては、やはり、銀行は経営者保証をとることになります。

では、どうしたら経営者保証を解除できるのか?

「経営者保証に関するガイドライン」が参考になります。同ガイドラインは、法的な拘束力こそないものの、関係者が自発的に尊重し、遵守することが期待されているものです。

つまり、「会社と銀行に共通の自主的なルール」と位置付けられています。よって、銀行は同ガイドラインをもとに、経営者保証の要否を判断をしているわけです。

だとすれば、社長もまた、「経営者保証に関するガイドライン」を理解しておくに限ります。必要に応じて、経営者保証の解除を銀行に交渉することもできるようになるからです。

ガイドラインに、どのようなことが示されているのかは、別記事に譲ります↓

また、経営者保証の解除に対する、各銀行の「姿勢」には差があるのもポイントです。なかには、「原則、経営者保証をとらない」と公言している銀行もありますから、経営者保証を解除したければ、銀行選びも大事になることを覚えておきましょう。

まとめ

2023年夏、現時点において、会社の銀行融資に関するいくつかのトレンドがあります。社長であれば知っておくべきトレンドを、3つご紹介しました。まずは、概要だけでも押さえておきましょう。

銀行融資も、いまと昔とでは変わったこともありますし、これからも変わっていきます。その変化がわからずにいると、自社の資金繰りには悪影響が生じるものなので注意が必要です。

社長がいま知るべき銀行融資のトレンド3選
  • 資本性劣後ローン
  • 短期継続融資
  • 経営者保証の解除
社長がいま知るべき銀行融資のトレンド3選【2023年夏】

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