事業の状況が悪いときには、銀行から「経営改善」を求められるものです。この点、社長が間違えがちな経営改善があります。融資が受けられなくなることがないように、押さえておきましょう。
経営改善を間違えると二重苦が待っている。
本ブログでは、日々、銀行融資・銀行対応に関する情報を発信しています。それに関連して、本記事では、「社長が間違えがちな経営改善」についてのお話です。
事業を続けていれば、良いときもあるし悪いときもあるでしょう。悪いときにはとくに、「経営改善」が必要になります。融資を受けるにも、銀行から「経営改善」を求められるものです。
というわけで、社長は「経営改善」について理解を深めておかねばなりません。経営改善を間違えれば、改善が進まないばかりか、銀行融資が受けられなくなる「二重苦」が待っています。
では、社長が間違えがちな経営改善とは?おもなところでは、次の3つです↓
- コストカットに走る
- 新しすぎる事業を始める
- 現状分析なき計画を立てる
それではこのあと、順番に解説をしていきます・
社長が間違えがちな経営改善3選
コストカットに走る
事業の状況が悪い、つまり、赤字のときには「利益」を増やさねばなりません。そこで、コストカットによって、利益を増やそうと考える社長がいます。もちろん、それも1つの方法です。
が、コストカットばかりとなると、むしろ、経営改善のさまたげになることも理解しておきましょう。わかりやすい例を挙げると、「社員の給与を下げる(増やさない)」とか。
たしかに、目先の利益は増えますが、社員のモチベーションが下がれば、将来の利益は減ることになるでしょう。優秀な社員が辞めてしまうようなことがあれば、改善はおぼつきません。
また、設備投資を抑えすぎるのも、コストカットばかりの一例です。たとえば、古いパソコンをガマンして使いつづけるとか、新しいパソコンを買うときに値段を理由に買う(スペックは犠牲)とか。すると、生産性が下がるので、改善の足を引っ張ることはあるでしょう。
では、どうするか?
あきらかにムダなコスト(仕事につながらない飲食、リモートワークで済むはずの移動費など)はカットすべきですが、必要なコストまでカットしないように気をつけることです。
先ほどの例でいえば、社員の給与や設備投資は、必要なコストに当たります。そのような「必要なコスト」は、カットするのではなく、「稼働率を高める」ことを考えるのがよいでしょう。
いまであれば、可能な範囲で生成AI(ChatGPTなど)を導入し、従来業務の時間を削減する。削減できた時間を、付加価値を増やす業務(商品開発・改善、教育、営業など)に充てれば、将来の利益を増やすことができます。
加えて、値上げも検討しましょう。中小企業の多くは、「長らく価格据え置き」で、値付けが安すぎるケースが少なくありません。物価高騰、人件費高騰の背景もありますから、最低限の価格転嫁は必須です。
そのうえで、前述した「付加価値を増やす業務」によって、商品価値を高め、さらに値上げをすることで、利益の増加(経営改善)につながります。
値上げによる客離れを恐れる社長もいますが、価格を据え置くことで、徐々に体力を奪われて倒産するのでは本末転倒です。少々の客離れがあっても、値上げによる利益でカバーもできます。値上げを過度に嫌うことがないようにしましょう。
新しすぎる事業を始める
変化が速い時代です。これまでの事業が、もはや通用しない…ということも増えています。新型コロナによって、生活様式が変化したことで、いっそう助長されたともいえるでしょう。
わかりやすい例を挙げると、飲食店が、店内飲食だけではなく、デリバリーやテイクアウトをはじめるとか。これまでと同じことだけをしていたのでは、事業が成り立たなくなっているのです。
この点、新しい事業に取り組むのは、有効な経営改善の1つではありますが、「新しすぎる事業」については注意しなければいけません。
ここで言う「新しすぎる事業」とは、まったくの異業種への挑戦です。たとえば、建設業の会社が、飲食業をはじめるとか。飲食店に関する経験・知見がないのであれば、新しすぎる事業だといえます。
もちろん、新しすぎる事業自体を否定するものではありませんが、既存事業の状況が悪いという前提であれば、「リスクが大きすぎる」という趣旨です。
まったくの異業種への挑戦は、そもそもリスクが大きいものなので、挑戦にあたって融資を受けるにも、銀行の対応は極めて慎重になります。既存事業の状況が悪ければ、なおさらです。
となると、自己資金で挑戦することになりますが、既存事業の状況が悪いのですから、自己資金が不十分であることがほとんどでしょう。その状況で、挑戦が失敗すれば命取りになります。
なので、新しすぎる事業(まったくの異業種)への挑戦をする場合には、「既存事業の状況が良いうちに」がセオリーです。では、既存事業の状況が悪いときにはどうするか?
言うまでもありませんが、「既存事業に絡めた新しい取り組み」を検討することです。前述した、飲食店がデリバリーやテイクアウトをはじめるのも、その一例になります。料理を冷凍加工して、ネット販売するなどもよいでしょう。
ほかにも、同じ商品・サービスを基本に、従来の顧客層とは違う顧客層にアプローチする。商品はそのままに、卸売から小売に転換する。既存顧客に対するアフターフォローを充実させる、などが考えられます。
というように、既存事業に絡めた取り組みであれば、新しすぎる事業に比べてリスクを抑えることができるでしょう。結果として、銀行の理解も得やすく、支援も受けやすくなるものです。
一発逆転を狙い、新しすぎる事業に傾倒することがないよう気をつけましょう。
現状分析なき計画を立てる
経営改善には「計画」が必要です。実際、銀行からも「計画書」を求められることがあります。というと、いきなり計画を立て始める社長がいますが、それは間違いです。
計画を立てるにあたって、まずすべきことは「現状分析」であることを覚えておきましょう。つまり、現状がどのようになっているかを把握して、課題の抽出、問題の特定をすることです。
その現状分析の結果を受けて、現状の問題を解決するために何をするかを「行動計画」にまとめます。そして、行動計画に沿って行動した場合にどうなるかを「数値計画」にまとめるのです。
にもかかわらず、いきなり数値計画を立てる社長がいたらどうでしょう。その数値計画、だいじょうぶ?と、心配になるはずです。銀行もまた、そういう見方をしています。
ですから、銀行に「計画書」と言われたら、現状分析の結果や、行動計画も込みであることを理解しておきましょう。数値計画だけを見せても、銀行からの信用は得られません。
もちろん、社長自身も、数値計画の達成が難しくなります。数字は結果に過ぎず、数字にいたる「過程としての行動」を管理できなければ、数値計画の達成確率は上がりません。
とはいえ、現状分析ってどうしたらいいの?行動計画はどのように立てればいいの?というのであれば、くわしくは別記事にまとめましたのでご参考にどうぞ↓
まとめ
事業の状況が悪いときには、銀行から「経営改善」を求められるものです。経営改善を間違えれば、改善が進まないばかりか、銀行融資が受けられなくなる「二重苦」が待っています。
そうならないために、社長が間違えがちな経営改善について押さえておきましょう。
- コストカットに走る
- 新しすぎる事業を始める
- 現状分析なき計画を立てる