個人事業者は銀行融資が受けにくい、というハナシ。たしかに、そういった一面もあります。そこで、個人事業者が銀行融資を受けにくいのはなぜなのか?について、まとめてみました。
半分正解、半分不正解。
銀行融資にまつわるハナシとして、「個人事業者は融資を受けにくい」というものがあります。もっともらしいハナシなのですが、実際のところはどうなのか?
半分正解、半分不正解だといえます。会社であっても、個人事業者であっても、本質的な部分でみれば、個人事業者だけが融資が受けにくいということはありません。という意味では不正解。
いっぽうで、銀行融資のことを理解していない個人事業者は多く、いうなれば「みずから融資を受けにくくしている」ことはあります。という意味では正解です。
でも、みずから融資を受けにくくしているとは、いったいどういうことなのか?個人事業者が銀行融資を受けにくい理由でもありますから、まとめてみることにします。次のとおりです↓
- 元入金がマイナスになりがち
- 生活費の額を考慮していない
- 税理士の確認を受けていない
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
個人事業者が銀行融資を受けにくい理由
元入金がマイナスになりがち
元入金ってなに?と、おもわれたようであれば、すでに危険です。銀行融資が受けにくくなっている可能性が高いといえます。
ちなみに、元入金とは、個人事業者に特有の勘定科目であり、会社でいうところの「資本金」にあたります。貸借対照表の「貸方(右側)」を見ると、元入金が見つかるでしょう。
元入金とは、言い換えると「資産と負債の差額」です。資産が負債よりも多ければ、その分プラスになります。逆に資産が負債よりも少なければ、その分マイナスになります。
だとすれば、元入金がマイナスなのはマズいとわかるでしょう。負債が資産を超えているので、「債務超過」などと呼ばれることもあり、銀行が嫌う状況の1つです。
それなら、元入金をプラスにするにはどうしたらよいか?
基本は、利益を出すことです。損益計算書で利益が出ているかどうか。利益が出れば、その金額は元入金に加算されて積み上がっていきます。
そのうえで、元入金が減らないように(マイナスにならないように)気をつけましょう。では、どうすると元入金は減るのか?まずは、利益がマイナスになったときです。
利益がマイナス(赤字)になると、その分だけ、元入金の額は減っていきます。それから、もうひとつ。利益がプラスであっても、それ以上にプライベートでおカネを使うと、元入金は減ります。
ここが、個人事業者が理解しづらいところであり、理解していないところでもあり、本人が知らないうちに元入金がマイナスになることで、銀行融資を受けにくくしているのです。
元入金について説明しようとおもうと長くなるので、別記事に譲ります。自信がない方は勉強しましょう↓
生活費の額を考慮していない
銀行が融資の審査で見るべきことはいろいろあります。前述した元入金はその1つです。それとは別に、銀行がよく見ているものといえば、なんといっても「利益」でしょう。
借りたおカネの返済原資は利益、というハナシは聞いたことがあるかもしれません。利益のなかから返済をするということであり、利益がなければ返済はできないということでもあります。
だから、銀行は利益が出ていない相手を嫌うのです。会社でも、個人事業者でも。ただし、個人事業者の場合には、会社とは違って気をつけるべきことがあります。
それは、個人事業者自身の生活費です。もう少し具体的にいうと、損益計算書の利益(所得金額)から、じぶんの生活費の額をマイナスした金額で考えましょう、ということになります。
たとえば、利益が400万円出ていても、その額すべてを返済に回せるわけではありません。個人事業者の場合には、利益400万円のなかから生活費を支払うことになるからです。
その生活費が400万円だとしたら、返済に回せるおカネはありません、ということになってしまいます。では、会社の場合はどうなのか?
会社の損益計算書を見ると、「役員報酬」という勘定科目があります。社長のお給料は、役員報酬として経費に含まれているのです。ところが、個人事業者の損益計算書に、役員報酬はありません。
個人事業者の場合には、自身のお給料という考え方がなく、その分の経費はないのです。したがって、利益から生活費(≒お給料)を除いて考える必要があります。
利益は出ているのに、なぜ銀行は貸してくれないんだ。というのであれば、銀行は「生活費を考慮すると、返済できるだけの利益ではない」と見ているのかもしれません。この見方を理解しておきましょう。
税理士の確認を受けていない
個人事業者の所得税申告書には、「税理士署名欄」があります。署名がない場合には、税理士の確認がないということです。でも、そういった個人事業者はけして少なくありません。
つまり、申告書や経理の内容については税理士の確認を受けずに、独力ですませているということです。それはそれで、すばらしいことだとおもいます。ただ、銀行の見方はちょっと違うのです。
この点、銀行には「税理士署名がない=申告内容に間違いがある」との見方があります。わたしの経験則でも、間違いが多いことは事実ですから、そのような見方があるのもしかたがありません。
前述した「元入金」の話しかり、個人事業者自身が理解できないままに経理していることは多く、結果、経理に間違いが起きることはあります。税金計算はさらに難度が増すので、やっぱり間違いが起きることはあるものです。
だから、税理士に依頼しましょう!などと言うつもりはありませんが。それでも、「銀行融資を受けたいのであれば、税理士の確認を受ける(署名してもらう)」のも選択肢の1つだ、とはお伝えをしたいところです。
また、税理士署名がない場合、銀行には「税理士に依頼ができない(税理士報酬を払えない)ほど、厳しい商売なのかな(だったら危ないから貸さない)」という見方もあると聞きます。
こういった銀行の見方を知らずにいることで、個人事業者が融資を受けにくくしていることはあるでしょう。融資を受ける側も、融資をする側の見方・考え方を知るのは大切なことです。結果として、融資が受けやすくなります。
まとめ
個人事業者は銀行融資が受けにくい、というハナシ。たしかに、そういった一面もあります。そこで、個人事業者が銀行融資を受けにくいのはなぜなのか?について、まとめてみました。
端的にいえば、個人事業者が銀行融資を受けにくいのは、みずから融資を受けにくくしているからです。具体的には、おもに3点あることを押さえておきましょう。
- 元入金がマイナスになりがち
- 生活費の額を考慮していない
- 税理士の確認を受けていない