うっかり社長車を買うと、その後の銀行融資で問題が起きることがあります。と言われて、どういうことかわかるでしょうか。わからなければ、ぜひ、本記事の内容を確認しておきましょう。
知らずにうっかり社長車を買う
会社で社長車を買うと、銀行融資を受けようとするときに問題が起きることがあります。つまり、社長車が原因で融資が受けにくくなったり、受けられなくなったりすることがある、ということです。
もちろん、社長車を買うこと自体が原因なのではなく、「社長車を買う=銀行融資で問題が起きる」ではありません。ではなぜ、問題が起きるのか?このあと、まとめていきます。
知らずにうっかり社長車を買ったことで、その後の銀行融資で苦労をすることがないように。社長は、ポイントをしっかりと押さえておきましょう。具体的には次のとおりです↓
- 資金使途違反になる
- 利益につながらない
- 経営者保証を外せない
このあと、順番に解説をしていきます。
社長車を買うと銀行融資で問題が起きるワケ
資金使途違反になる
資金使途違反とは、「資金使途(当初の使いみち)とは違うことに、借りたおカネを使うこと」をいいます。なので資金使途は、融資を受けるときには、銀行から必ず確認される項目の1つです。
この点で、融資を受けるときに「運転資金(仕入代金や経費の支払い)に使います」と言っておきながら、その後に社長車を買っているような場合には、資金使途違反と見られる可能性があります。
おカネに色はないのだから、もともとあったおカネで買ったのだ。と、おもわれるかもしれませんが。借りた直後に買っているような場合には、借りたおカネを使ったと見るのが自然でしょう。
コロナ禍では、多くの会社が銀行融資を利用しました。そのなかには、「おカネはあるけれど、借りられるうちに借りておこう(無利息だし)」ということで、融資を受けた社長もいます。
すると、手元のおカネが潤沢となり、「そうだ、社長車を買おう(買い換えよう)」と考えるケースもあったわけです。これが意外と多かった…と、銀行員の方からはうかがっています。
もし、銀行から資金使途違反と見られれば、最悪は全額一括返済。それを免れても、以降の融資が受けられなくなることもあります。信用保証協会の保証付き融資であれば、どの銀行を経由しても、保証付き融資が利用できなくなることさえあります。大きすぎる代償です。
社長車を買ってしまったうえに、銀行融資が受けられなくなれば、資金繰りが悪くなることは目に見えています。場合によっては、倒産の原因にもなるところですから、十分に気をつけましょう。
なかには、「資金使途違反など、銀行員は見抜けない」などとタカをくくっている社長もいますが甘すぎます。銀行員は、その道のプロなのですから、資金使途違反は必ず見つかると考えるのが賢明です。
利益につながらない
資金使途は、大きく2つ、設備資金と運転資金とにわかれます。このうち、設備投資に使われるおカネが設備資金です。では、設備資金の融資を受けるときに、銀行が注目しているものは何なのか?
まずは、「利益につながるか?」です。その設備投資をすることで、将来、会社の利益は増えるのかどうか。もし、増えないということになると、貸したおカネの返済ができないのですから、融資をするわけにはいきません。
したがって、設備投資の融資を受けるときには、会社は設備投資計画書を作成し、将来の利益を銀行へ説明できるようにすることが大切です。くわしくは、こちらの記事を参考にどうぞ↓
では、社長車はどうかというと。設備資金か運転資金かでいえば、設備資金です。では、社長車を買うことが利益につながるか?
同じ設備でも、製造機械などと比べれば、社長車が「利益につながることを説明しにくい」ことはわかるでしょう。社長車によって、直接的な売上・利益が生じるものではないからです。
そのうえ、社長車が「高級すぎる」としたらどうなるか?いわゆる高級車となると、銀行は「ますます利益につながらないし、社長の個人的な趣味なのではないか」とも考えるようになります。
会社の規模、業績などから見て、金額が高い場合にはとくに、です。銀行が「利益につながらない資産=事業には関係がない資産」と考えれば、社長車を買うおカネを借りることはできません。
じゃあ、自己資金で買えばOKかというと、実はそうでもないところがあるので気をつけましょう。銀行の目から見て「高級すぎる社長車」が、決算書(固定資産台帳)に掲載されている場合、銀行は「社長の資質」に疑いの目を向けます。
つまり、一事が万事、ムダ使いの多い社長なのではないかと見られる、ということです。すると、融資そのものが受けづらくなります。おカネを貸せば、「貸したおカネをムダ使いするかもしれない」と疑われるからです。
そういう意味では、華美にすぎる社屋や店舗、オーバースペックな機械なども同様です。利益につながらない資産や、利益につながることを説明しづらい資産は、融資を受けにくくします。
経営者保証を外せない
社長であれば、2023年4月から「経営者保証(社長の連帯保証)の説明義務化」がはじまっていることはご存知でしょう(ご存知なければ勉強不足です、勉強しましょう)。
それもふまえて、銀行融資における経営者保証は「なし」の流れに向かっています。かつては、「あり」があたりまえだった経営者保証が、あたりまえではなくなっているのです。
とはいえ、だれでもかれでも、どんな会社でも、経営者保証なしで融資を受けられるわけではありません。この点、経営者保証に関するガイドラインに、以下のような記載があります↓
「法人と経営者との関係の明確な区分・分離」
つまり、会社のサイフと社長個人のサイフとは分けなさいよ、ということです。サイフがごっちゃになっているのであれば、それは公私混同であり、そのような会社にまで経営者保証を外すわけにはいきません、とガイドラインは言っているのです。
そりゃそうだ、というハナシではありますが。では、前述した高級すぎる社長車を会社で買っているようなケースはどうでしょう?
本来、社長個人の趣味嗜好として、社長個人のサイフからおカネを出すべきところ、会社のサイフを使ってしまったとなれば、ガイドラインに反する。と、見るのが銀行です。
そうなれば、経営者保証を外すことはできません。だったら別に外れなくてもいい、借りることさえできればいい。そうおもわれるかもしれません。実際に、そうクチにする社長もいます。
ですが、社長に万一のことがあったら、会社の借入は、残された家族にとって大きな負担になるかもしれません。事業承継をするにも、さまたげになるかもしれません(後継者が経営者保証をイヤがる)。
経営者保証は、外せるのであれば外しておくに越したことはないものです。そのチャンスを、みずから手放すことがないようにしましょう。
まとめ
うっかり社長車を買うと、その後の銀行融資で問題が起きることがあります。結果、社長はしなくてもよい苦労をすることになりかねません。
そうはならないように、社長車を買うと銀行融資で問題が起きるワケを理解しておきましょう。
- 資金使途違反になる
- 利益につながらない
- 経営者保証を外せない