社長は個人資産をどれくらいお持ちですか?
と銀行から聞かれても。な、な、なんたる無礼っ! とアオスジを立ててはいけません。
なにも銀行は社長の個人資産を担保に狙おう、というわけでもないのですから。というお話です。
銀行はあなたにおカネを貸したくて知りたがる
会社がおカネを借りようと銀行に融資の相談をする際、「社長の個人資産」について尋ねられることがあります。
その意図は、
「どうにかして、この会社におカネを貸すことができないだろうか?」
であり、融資を前向きに検討したいという気持ちの表れです。
この点、尋ねられた社長としては、
「どうしてそんなことを銀行に教えなきゃいかんのだ、個人は関係ないだろう!」
との怒りや不信から、せっかくの銀行の姿勢とすれ違うこともしばしば。
しかし、銀行は「個人資産を借金のカタに取ってやろう」と考えているわけではありません。
それもゼロではないでしょうが、むしろ、「なんとかしておカネを貸したい、貸してあげたい」という思いが上。
だから、おカネを借りたいのであれば。個人資産についても教えたほうが良いのでは? そういうお話をしていきます。
そもそも「決算書」が良ければ・・・
銀行がおカネを貸そうというときには、融資審査を行います。
さまざまな角度からの審査を行うわけですが、とりわけ大きなウエイトを占めるのが「決算書」の評価です。
会社・事業の業績をあらわす決算書の内容が良ければ、銀行はおカネを貸しても大丈夫だろうと考えます。だから貸せばよい。
逆に内容が良くはない場合。この会社に貸しても大丈夫だろうか? と、考えます。
どうしようもないほどに内容が悪ければ「お断り」となりますが、ビミョーなところであれば「どうしよう?」と迷います。
このとき、ある「考え方」が融資可否の決め手になることがあります。それは・・・
「社長の資力について、会社・個人一体とみる」という考え方
もともと資力に乏しく、業績に安定感を欠く傾向にある中小企業は、決算書単独で戦うことが難しい。決算書だけでは良い評価を得にくいことが少なくありません。
決算書だけで評価をしていたら、中小企業はおカネを借りることができなくなってしまう。
そんなことを危惧した金融庁は、「金融検査マニュアル別冊」という文書で、次のような考え方を明示したのです。
中小・零細企業の債務者区分の判断に当たっては、当該企業の財務状況のみならず、例えば、代表者の個人資産等も勘案して、その上で債務者区分を検討する必要がある。
金融庁 「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」より引用
会社の決算書がダメなら、つまり、会社単独でダメならば。
会社と運命を共にする社長個人の資力についても、会社と一体でみる場合はどうだろう? という考え方です。
誤解を恐れずに平たく言い換えると。社長がお金持ちならば、会社が少々傾いても耐えられるよね。だからおカネを貸しても大丈夫でしょ、と。
ちなみに、社長の個人資産を担保に取る取らないという話ではありません。担保に取ろうが取るまいが、融資可否の判断材料として「社長個人の資力」を評価するということです。
「それが金融庁の意向なら・・・」ということで、銀行にしてみれば無視することもできない。そういう考え方です。
決算書で貸すメガバンク、決算書以外で貸す地銀・信金
ここで冒頭のハナシに戻ります。
「社長は個人資産をどれくらいお持ちですか?」
銀行から、そう尋ねられることがある。というお話をしました。このような質問をする銀行は、地方銀行、信用金庫・信用組合が多いことでしょう。
メガバンクはというとそうでもない。なぜならば、メガバンクには大企業、良い決算書の会社が自然と集まるからです。
そんなメガバンクからしてみれば、おカネの貸し先はよりどりみどり。社長の個人資産を気にする必要はないのです。
財務が健全で盤石、貸し倒れるリスクが小さな相手に、大きな金額の融資を対象に、低利率でも十分な利息収入をあげることができます。それがメガバンク。
いっぽうで地方銀行や信用金庫・信用組合などはどうでしょう?
大企業や決算書が良好な会社はメガバンクへと流れますから、結果的に、中小企業や決算書に問題を抱えた会社が集まりがちです。
そのような企業・会社にも、どうにかして融資をできないものかと思案するとき。前述の考え方が必要になるわけです。
社長個人の資力についても、会社と一体でみるという考え方。
ですから、会社の融資審査の過程で「社長の個人資産」について尋ねられるとき。あぁ、なんとか貸そうとしてくれているのかな? という思いで受け答えするのが正解です。
頑なに拒否する、ウソを言う(少なめに回答する、など)といった対応では、貸せるものも貸せないということになってしまいます。
とくに決算書の内容がきびしいなぁ、というのであれば。銀行の意図を理解した回答を心がけましょう。
場合によっては、聞かれる前にアピールするという手段も有効です。
まとめ
「銀行の考え方」に馴染みがないために、銀行の意図に反した対応をとってしまう会社・社長がいます。
言うまでもなく、損をしているわけであり、資金調達に対する理解が不十分だと言えます。結果として、資金調達力が上がりません。
上手に銀行からおカネを借りたいというのであれば、「銀行の考え方」についても身につけるように努めましょう。
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きょうの執筆後記
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