融資のリスケについてのよくある間違い・勘違い

リスケの間違い・勘違い

リスケって、最後の最後、ギリギリのところでの手段だよね?

いいえ、違います。それは間違いです、勘違いです。

そんな融資のリスケについてのよくある間違い・勘違いについてお話します。

目次

融資のリスケについてのよくある間違い・勘違い 5選

銀行からの融資について、当初の返済条件を変更することを「リスケ(リ・スケジュールの略)」と言います。

リスケが持つイメージとして、「会社の業況が悪化、約束どおりの返済ができず、やむにやまれずリスケ・・・」というようなところがあることから。「リスケ」には、ネガティブなイメージがつきものです。

とはいえ。このまま返済を続けていたのでは会社が潰れてしまうという局面においてまで、リスケを躊躇している場合ではありません。

会社を立て直す有力な手段として、むしろポジティブにリスケに踏み切る判断がたいせつです。ゆえに、「リスケ」については、ただしい知識・ただしい理解をしておきましょう。

ということで、今回は「融資のリスケについてのよくある間違い・勘違い」についてお話をしていきます。よくある間違い・勘違いは、次の5つです ↓

【 融資のリスケについてのよくある間違い・勘違い 】

  1. リスケは最後の最後でとるべき手段だ
  2. リスケ後の毎月返済額は多いほうがよい
  3. 特定の銀行だけリスケしたい
  4. リスケの意向は口頭で伝えるほうがカンタンだ
  5. とにかくリスケさえできれば「ひと安心」だ

それでは順番に見ていきましょう。

 

リスケは最後の最後でとるべき手段だ、という間違い・勘違い

会社の業況がとても悪く、他に手の打ちようが無い。そんなときに取るべき最後の手段がリスケだ。という認識が世間には広がっています。

そんな世間の認識を鵜呑みにして、最後の最後までリスケをガマンする。結果、ようやくリスケに着手するも手遅れ、というケースがあります。

もはや手元のおカネ(現金や預金)がカツカツで底をつく、というようなギリギリの状況でリスケをしたのでは業況が改善するまで耐えることができません。

したがって、「リスケをするのであれば、できるだけ早くリスケをする」ということが重要です。

リスケが最終手段だからといって、それを使うべきタイミングまで遅らせてしまう。というのは間違いです。遅すぎるリスケでは、会社は再起する前に倒れてしまうのですから。

では、できるだけ早くリスケに踏み切るために必要なことはなにか? それは、常に6か月先から1年先ていどの資金繰り表を作成しておくこと。

その資金繰り表を見ながら、「リスケをしなければムリ」という判断をできる限り早くですることです。

リスケ中の新規融資は原則ありません。であれば、手元におカネをできるだけ残した状態でリスケをするのが、会社再起のポイントになります。

手元の資金がまったく無くなってからのリスケでは遅すぎます。そんな会社では銀行の理解も得られず、リスケすらできないということにもなりかねません。平時から資金繰り表をつくりましょう。

【参考】リスケはほんとうに最終手段なのか?
実は、リスケはほんとうに最後の手段というわけでもありません。リスケができなくても、あるいは、リスケをしたものの再起できなかったとしても。「信用保証協会による代位弁済」「サービサーへの債権譲渡」など、まだ手段は残されています。

 

リスケ後の毎月返済額は多いほうがよい、という間違い・勘違い

リスケをしようという段階では、銀行との交渉が必要です。リスケができるかどうか、できるとしてどのような条件でのリスケが可能か。銀行と交渉をするのです。

そのとき、当初の約束を守れないことへの負い目からか、はたまた銀行への怖れからか。リスケ後の毎月返済額を「できるだけ多くしなければ」という考え方になりがちです。

しかし、それは間違いであり、勘違いです。できるだけ多くしたばかりに、結局返済しきれずダメでした・・・ というのでは、リスケをする意味がありません。

ですから、より高い確率で再起できるように、返済額は「できるだけ少なくしなければ」というのがただしい考え方です。

銀行には悪いように感じるかもしれませんが、「結局ダメでした」というほうが銀行だって困ります。会社がきちんと再起を果たし、その後に完済できることが銀行にとってもベストです。

返済額を「できるだけ少なく」は、極論すれば「返済ゼロ」が理想になります。言うまでもありませんが、それがもっとも会社が立ち直るまでの時間を稼ぐことができるからです。

とはいえ、やみくもに返済ゼロを要求するのでは銀行もなっとくできません。経営改善計画書を策定し、「返済ゼロ」が望ましいこと、再起への必要条件であることを説明し、交渉しましょう。

計画書策定の過程で、返済がゼロでなくても再起できるという確信があるのであれば、もちろん、それでもかまいません。しかし、窮状の中、再起を確信できる会社・経営者はどれだけあるのでしょう。

ゆえに、リスケをする際の返済額はゼロ。これが基本であることを覚えておきましょう。

 

特定の銀行だけリスケしたい、という間違い・勘違い

銀行とリスケの交渉をするときに、「〇〇銀行だけはリスケをして、残りの銀行はこれまでどおりに返済する」という考え方は間違いです。

リスケは融資を受けているすべての銀行に対して平等に、というのが大原則。不平等はルール違反です。

もしも、ある銀行だけがリスケを受け入れて、他の銀行は返済が続くのであれば。リスケを受け入れる銀行としては、なんともなっとくしがたい状況ということはわかるでしょう。

なぜ、他の銀行は返済してもらえて、ウチの銀行だけがリスケに応じなきゃならんのだ? と考えるのがフツーですから、結果、リスケに応じてもらえないのは当然です。

したがって、セオリーとしては、まずはメインバンク(融資残高がもっとも多い銀行)からリスケの交渉を開始。融資を受けている全銀行に対して、リスケを要請する旨の説明・交渉をします。

メインバンクの理解が得られたところで、他の銀行にも「メインバンク協力のもとでのリスケ」であることを説明・交渉する。これがセオリーです。

リスケ後の返済額がゼロでない場合には、各銀行への返済額は「リスケ時における各銀行の融資残高の大きさ」などに応じて決められることになります。

ちなみに、公的金融機関である日本政策金融公庫だけは、民間の銀行とは「別扱い」になることも少なくありません。

日本政策金融公庫は公的な位置づけゆえ、そう簡単にリスケに応じるわけにはいかない。そんなスタンスがあります。ゆえに、日本政策金融公庫だけは従来どおりの返済で、ということがあるのです。

 

リスケの意向は口頭で伝えるほうがカンタンだ、という間違い・勘違い

さぁリスケをしなければ、というときに。銀行に対して、「お願いします」の口頭で済ませるわけにはいきません。

口で言って済むのであれば、それがいちばんカンタンですが。銀行の立場になって考えてみれば、そんな大事なことを口頭だけでは「なっとくできない」ということはわかるでしょう。

さきほども少し触れましたが、「経営改善計画書」の作成・提出が求められます。きちんと紙面に明示することで、リスケによる再起までの道のりを描きます。

そこには、これまでの経緯、現状における問題点、改善過程での財務数値の推移見込み(数値計画)、改善に向けた行動計画などが盛り込まれます。

その計画書にしたがって、銀行の担当者に説明・交渉をする。これを受けて担当者は、その上司や審査部署、支店長などの決裁権者まで、書類を回し、説明をすることが可能になります。

これが口頭だけ、あるいは計画書が不十分だというのであれば。仮に担当者までは話が通せたとしても、その先への説明・交渉は期待できません。リスケの承諾を得ることは難しくなります。

もう後が無い、というこの期に及んでまで、目先の手間を惜しんではなりません。

また、銀行には、そもそも「書類」を重んじる文化があります。言いたいことは書類にしたほうがパワーが出る。リスケ時に限らず普段から、銀行との交渉ごとには書類を用意するクセをつけましょう。

 

とにかくリスケさえできれば「ひと安心」だ、という間違い・勘違い

なんとか銀行のリスケ承諾までこぎつけた・・・ と安心をして終わってしまう会社・経営者があります。これも間違いです。

リスケは「はじまり」であって、「おわり」ではありません。ここからがほんとうの勝負。

基本的に、リスケは向こう半年、もしくは1年先までが対象です。半年、もしくは1年経ってもなおリスケが必要であれば、ふたたび交渉が必要になります。再起するまで交渉は続きます。

ここでまず大事なのは、計画書に掲げた行動計画を確実に実行に移し、掲げた数値計画の達成を目指すこと。つくった計画書はリスケができたら社長の机の奥深く、なんてことではいけません。

リスケ後は、定期的に計画の達成度合をチェックしましょう。計画どおりに行動しているかもチェックしましょう。そして、チェックの結果を、銀行にも定期的(3か月ごとに1回ていど)に報告するようにします。

この定期報告もせず、次のリスケ交渉時に「計画は達成できませんでした。そういえば、計画した行動もできていませんでした」というのでは、リスケ打ち切りになっても文句は言えません。

計画を絵に描いた餅にしないこと。覚えておきましょう。

計画についてそもそもの話をしておくと。再起に向けて自社がほんとうに実行できることを検討し、自社のため自分のための計画書をつくることがたいせつです。

銀行のための、リスケを認めてもらうための計画書をつくってしまいがちですが、そうではありません。「銀行のため」の計画書づくりはまちがいです。

会社は、銀行への説明・交渉にあたって作成した経営改善計画書に沿って、ほんとうに行動することで経営改善を目指す。これがリスケにおけるただしい姿です。

 

まとめ

融資のリスケについてのよくある間違い・勘違いについてお話をしてきました。

リスケというのはなかなかあることではなく、不慣れなことから間違いや勘違いをしてしまいがちです。

しかしながら、間違いや勘違いでリスケによる再起のチャンスをフイにすれば会社はおしまいになってしまいます。

そんなことにならぬよう。いざというときのために、リスケについてのただしい理解を備えておくことをおすすめします。

 

 

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  きょうの執筆後記
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