社長の役員報酬が銀行融資にどう影響するか知っていますか?
多すぎる役員報酬があたえる影響、少なすぎる役員報酬があたえる影響についてお話します。
「融資を受けやすくするための役員報酬はいくら?」という考え方
「社長の役員報酬(給与)はいくらにしたらいいのかな?」という、よくある質問について。
この質問への回答は、「質問の意図」によることとなります。質問の意図ととして多いのがこちら↓
- できるだけたくさん役員報酬を取りたい
- できるだけ税金が少なくなる役員報酬にしたい
会社のおカネが無くならないていどに、できるだけ社長個人へおカネを移したいけど、いくらにしたらいいか? という「個人資産形成」の意図があります(上記①)。
また、会社の税金と社長個人の税金をなるべく少なくしたいけど、いくらにしたらいいか? という「節税」の意図もあります(上記②)。
どちらも大事なことではありますが。あまり聞かない「意図」として、もうひとつ挙げることができます。
それは、「銀行融資を受けやすくする」です。
銀行融資をできるだけ受けやすくするために役員報酬はどうするか? という視点について。このあと詳しくお話をしていきます。
「多すぎる役員報酬」が銀行融資にあたえる影響
まずは、「社長ができるだけ役員報酬を取る」という考え方が、銀行融資にあたえる影響についてお話をします。
役員報酬を取れば取るだけ遠のく銀行融資
できるだけ社長個人におカネを回したい、役員報酬を取りたいという考え方があります。
この場合、役員報酬を取れば取るほど、銀行融資を受けることは難しくなります。
なぜならば、役員報酬(経費)が増えた分だけ、会社の利益は小さくなるからです。もう少し付け加えると、利益の小さな会社は「返済力も小さい」と見られるからです。
その「返済力」を、銀行は次のように見ています↓
税引後利益+減価償却費 = その会社が年間に返済できる力
銀行は返済力がある会社におカネを貸すのであって、返済力が無い会社におカネを貸すことはありません。
そう考えると。役員報酬を増やして利益を減らすという行為は、上記の算式の値、つまり「返済力」を下げる行為にほかならないわけです。
もちろんこれは、社長個人が必要な役員報酬を取ることまでを否定するものではありません。ただし、役員報酬を取るという行為には、銀行融資の成功を遠ざける一面がある。
役員報酬の金額と銀行融資の成功可能性は、トレードオフ(二律背反)の関係にある。ということを覚えておきましょう。
あっちを立てればこっちが立たず、こっちを立てればあっちが立たず。そういうことです。
個人資産や担保が役に立つ、なんてウソ
「でもちょっと待て、税理士が違うことを言っていたぞ」なんてことがあるかもしれません。「違うこと」とは、こんなこと↓
社長はできるだけ役員報酬を取って、個人資産を蓄えておくほうがよい。会社のいざというときには、おカネを貸し出すことができるから。
それに、個人で不動産を買って持つのもよい。不動産を担保として提供すれば、銀行融資を受けやすくなるから。
もっともらしいハナシではありますが、これは間違いです。
たしかに、社長個人がおカネを持っている、担保にできる不動産を持っていることは、銀行融資におけるプラス材料です。
しかし、そのプラス材料も、会社自身の「返済力」があってこそ。
まず、会社の返済力ありき。そのうえで、社長個人がおカネや不動産をもっているのならなおよろしい。というのが、銀行の考え方です。
会社自身の返済力もないのに、「社長個人のおカネや不動産ならあるぞ」という話は通用しないのです。
ですから、役員報酬で個人資産を蓄えるよりも、役員報酬はできるだけ抑えたほうが、「銀行融資には」有利です。
繰り返しになりますが。会社の利益は大きければ大きいほどいい。利益が大きいほど、会社の返済力は高まる。結果、銀行の評価を得られる。この原則を忘れてはいけません。
「少なすぎる役員報酬」が銀行融資にあたえる影響
多すぎる役員報酬では、会社の利益が減ってしまう。それならば思い切って社長の役員報酬を減らそう、という場合に何が起きるかについてお話をします。
利益の水増し、と見られることも
銀行が、「税引後利益+減価償却費」で返済力をはかっていることは前述したとおりです。
この「税引後利益+減価償却費」が大きければ大きいほど、融資は受けやすく、より多くの融資額が期待できる。
であるならば。ぜがひでも融資を受けたい社長・会社は、こんなことを考えることがあります↓
たしかに、役員報酬(経費)を減らせば利益は増えますが。これは、単なる「利益の水増し」にほかなりません。
極端な例で言えば、社長の「役員報酬をゼロ」にした場合。その社長はいったいどうやって生活をしてるんだ? と、銀行は考えるわけです。
いま決算書(あるいは試算表)に計上されている利益は、少なくとも、社長の生活費分くらいは「利益過大(水増し)」の状態にある。と、銀行は考えます。
したがって、役員報酬ゼロは極端にしても、「少なすぎる役員報酬による利益」は返済力と見てもらえないことを覚えておきましょう。
「少なすぎる」の額はケースバイケース
では、役員報酬がいくらだと「少なすぎる」ということになるのか? その結論は、「ケースバイケース」です。
独身の社長と、こどもが3人いる社長とでは生活費に違いがあることは明らかです。
いずれにしても、銀行は常識的な眼で「これくらいは生活費にかかるだろう」という金額と、決算書の役員報酬額とを見比べています。
役員報酬が少なすぎれば、その分を利益から削って返済力の評価をしています。
ここでひとつ、社長・会社側に注意すべきことがあります。それは、「役員報酬が少なすぎないアピール」を忘れないように。ということです。
たとえば、社長個人が所有する不動産の賃貸収入があるとか。社長の奥さんが外で働いていて給与収入を生活費にしているとか。
そのようなことであれば、社長の役員報酬が少なくても生活はできるわけです。役員報酬が少なすぎるということはなく、利益の水増しでもない、というアピールができます。
社長個人の不動産収入や、奥さんの給与収入などは、必要に応じて銀行に情報開示をしましょう。
銀行に個人的なことを話すのはイヤだ、という話もありますが。その場合には、不利益を被る(利益の水増しととられるなど)覚悟が必要です。
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まとめ
銀行融資に影響する『多すぎる役員報酬』『少なすぎる役員報酬』についてお話をしてきました。
役員報酬は、社長にとって自由度が大きいだけに「多すぎる」「少なすぎる」ということがありえます。
そのような行き過ぎがないように、個人資産の形成や節税という視点がありますが。あわせて、銀行融資の視点からも役員報酬の額を検討するようにしましょう。