” 銀行からの融資がうまくいかない・・・ ” ” 銀行から融資を断られた、なんで? ”
とお悩みの社長・会社へ。いちど自社の決算書を見てみましょう。銀行融資を難しくする「お粗末」なことになっているかもしれませんよ、というお話です。
銀行融資がうまくいかない・難しい『お粗末決算書』事例
事業を継続する、成長させるときに、うまく活用したいのが「銀行融資」です。
ところが、「銀行からの融資がうまくいかない」という悩みは少なくないようで。
その原因はいろいろと考えられますが、融資がうまくいかない典型的な原因として「決算書に問題がある」ということが挙げられます。
銀行は決算書などの「数字」に、融資可否を判断するウエイトを大きく置いている(7割から9割ていど)ため、「決算書に問題がある」のでは融資の実行を難しくするばかりです。
そんな「決算書の問題」について見てみると、たとえば大幅な赤字が出ているなど、ある意味でやむをえない・どうしようもない決算書もあるのですが。
いっぽうで、「どうしてこんなことしちゃったの?」というような、なんとかできただろう・なんとかできたはずだという決算書も少なくありません。言葉を選ばずに言うと「お粗末」がある決算書。
というわけで、銀行融資がうまくいかない・難しい「お粗末な決算書」の事例について、このあとお話をしていきます。事例は次の5つです ↓
- 少しだけ赤字の損益計算書
- 多額の商品評価損・廃棄損で赤字
- 社長からの貸付金が計上されている
- 社長からの借入金が「短期借入金」で計上されている
- 減価償却費を満額計上していない
それでは順番に見ていきましょう。
《事例①》少しだけ赤字の損益計算書
なんとかできただろう・なんとかできたはずというお粗末な決算書の事例ひとつめ。少しだけ赤字の損益計算書です。
「少しだけ」という表現にはあいまいさが残りますが。そうですね、数万円から数十万円くらいといったところでしょうか。
損益計算書の末尾にある「当期純利益」が「15万円の赤字」、みたいな。
この15万円の赤字を意図的にやった(納税したくないから)のか、意図せずそうなったのかはともかくとして。銀行融資を考えれば、お粗末だと言わざるをえません。
そもそも、銀行融資では「黒字か赤字か」には天と地ほどの差があります。借金の返済は利益が元手になるため、黒字であることが重視され、評価されるのです。
したがって、たとえ1円でも黒字にこだわることには大きな意味があります。逆に、わずかな赤字であっても赤字は赤字。大きく評価が下がります。
ということを考えた場合に。15万円の赤字はなんとかならなかったのか? という話になります。なんとかする方法は2つ ↓
- 他の会計処理方法を検討する
- 社長が自腹を切る
誤解無きように申し添えますが、「他の会計処理方法」とは「粉飾」とイコールではありません。
粉飾というルール違反(たとえば架空在庫を計上)をするのではなく、許された会計処理のルールの中で別な方法を検討するのです。具体的には顧問税理士などに相談をしてみるとよいでしょう。
また、社長が経費の一部について自腹を切る、というのもひとつの方法です。ただし、これを決算日後にやっていたのでは「粉飾」と言われてもしかたありません。
自腹を切るのであれば決算日を迎える前に、「費用負担先の判断」として済ませておくべきです。このようなことからも、試算表の早期作成や決算予測が重要であることがわかります。
いずれにせよ、少額の赤字については、1円でも黒字にできないかをよく考えるようにしましょう。
《事例②》多額の商品評価損・廃棄損で赤字
2つめの事例は、多額の商品評価損や廃棄損が計上されている、です。
損益計算書の末尾近く、「特別損失」の項目の中で「商品評価損」や「商品廃棄損」として、大きな金額が計上されていることがあります。
不良在庫の整理、ということですね。それ自体は悪くありません。悪くないのですが、「結果、赤字」ということについては注意しなければいけません。
理由は前述したとおり。銀行融資では黒字が重視されるからです。これに対して、こんな反論が見られます ↓
- 特別損失なのだから、あくまで特別。営業利益や経常利益がプラスあればよいではないか
- 評価損や廃棄損は、キャッシュアウト(出金)を伴う費用ではないのだから、返済には影響ないではないか
そうですね、そのとおりです。上記の反論はいずれも理屈では合っています。
けれども、評価をするのは銀行です。決めるのは銀行です。
銀行ももちろん「反論」については理解をしていますが、「形式的」に赤字は赤字として評価をしている面もあります。反論は参考程度に終わる可能性もあるのです。
ですから、不良在庫の整理をするのであれば、「なんとなく今期で」みたいなことは絶対にやってはいけません。
整理をするのであれば、銀行融資とのからみでタイミングを見て行うことです。
いちばんのタイミングは「リスケジュール」の期間中ですが、それ以外の場合には、事前に銀行と意見交換をしておくなどのコミュニケーションが重要です。
《事例③》社長からの貸付金が計上されている
3つめの事例は、社長からの貸付金が計上されている、です。
銀行融資において、「社長からの貸付金」はマイナスポイントになります。
理由は、銀行が会社に貸したおカネが社長個人に流れている(流れてしまう)のではないか、との懸念があるからです。
また、銀行の立場からすれば「おカネを借りる前に、まずは社長に貸したおカネを返してもらえよ」という話でもあります。
ですから、社長に貸したおカネに返済の実績がないとなれば、社長貸付金は不良債権扱いとなり、会社の評価を下げることになります。
では、社長への貸付金がある場合にはどうするか?
大きな声では言えませんが、少なくとも決算日時点では「いちど」返済をしてゼロにしておきましょう。極端な話ではありますが、翌日にまた貸し付けたとしても決算書ではゼロです。
これでも、試算表を要求された場合にはバレてしまいますので、根本的に社長への貸付金を無くすことが先決であるのは言うまでもありません。
老婆心ながら申し添えると。社長への貸付金については、会社が「利息」を受け取らなければいけません。
この「利息」についても、決算書や勘定科目内訳明細書などでの「表現」を気をつけないと社長貸付金の存在が露呈します。
《事例④》社長からの借入金が「短期借入金」で計上されている
4つめの事例は、社長からの借入金が「短期借入金」で計上されている、です。
単純な話として、会社に借金が多ければ多いほど、おカネを貸す側の銀行としては不安になります。貸し過ぎになりはしないだろうか、ということですね。
これについては、「債務超過」という基準があります。債務超過とは、貸借対照表の資産の総額よりも、負債の総額が大きい状態を言います。
このような債務超過の状態にある会社には、ぜったいに融資をしたくない、というのが銀行側の感覚です。
したがって、社長からの借入金がある場合、その金額は貸借対照表の負債の金額を増やすわけで、債務超過へと近づける要因となります。
ところが。社長からの借入金というのは、他の借金とちがい、明確な返済義務があるわけではありません。いわば、あるとき払いの催促なし。
そういう意味では、社長からの借入金は、負債(返済義務あり)というよりは資本(返済義務なし)としての性格が強いものです。
銀行もそのように考えるため、社長(及びその親族)からの借入金の金額は、債務超過の計算上、負債の金額からは除きます。
ただしこれは、銀行が「社長の借入金だと気づけば」です。
この点で、社長からの借入金を、貸借対照表上で「短期借入金」に含めて表示をしていると、銀行が気が付かないということもありえます。
また、いわゆる「流動比率」など、財務の安全性をはかる典型的な財務指標を傷めることになります(流動負債が増加するため)。
結論として、社長からの借入金は、「役員借入金」という単独の勘定科目で、固定負債として表示をしましょう。
誰が見ても、社長からの借入金があることがわかりますし、いたずらに財務指標を傷めることもありません。
《事例⑤》減価償却費を満額計上していない
さいご5つめの事例は、減価償却費を満額計上していない、です。
手っ取り早く決算書の利益を増やす手段として「減価償却費」の計上を見送ることがあります。まったく計上しない、あるいは、一部だけ計上する。
このように減価償却費を満額計上しないことは、税金計算上の問題はありません。税務署的にはOKです。経費が減れば、税金も増えますからね。
いっぽうで、銀行的にはどうかと言うとNGです。会社の業績をただしく評価するには、減価償却費の満額計上はあたりまえでしょう? というスタンスです。
したがって、減価償却費をまったく計上しない、あるいは、一部だけ計上する会社には「粉飾」の疑いを強めるばかりです。ほかにも「粉飾」しているんじゃないの? と。
ちなみに、銀行に提示する決算書や税務申告書などから、減価償却費を満額計上していないことはすぐにバレます。安易に、減価償却費を操作しないことです。
これについて、会社側にも次のような反論がありえます。それは、「税務上の繰越欠損金を有効活用するため」という反論。
詳述は省きますが、税金をムダに払わなくて済むように、減価償却費を調整しているのですよ、というような言い分です。
銀行からすれば「ふ〜ん、あっそ」といったところでしょう。結局、過去もいまもこれからも業績が芳しくないということですね、と見られることになります。
「税務上の繰越欠損金を有効活用する」とは、銀行にしてみれば、過去から未来に渡り業績がイマイチであることを公表しているにほかならないのです。
減価償却費を満額計上しないのは税務署的にはOKだと言いました。銀行的にはNGだと言いました。
会社的にもNGです。税金・税務申告うんぬん以前に、決算書は会社のためにあるものです。減価償却費を満額計上してこその決算書、これが正論です。
減価償却費を調整することを考えるのではなく、減価償却費を満額計上するにはどうするかを考えなければいけません。
まとめ
銀行融資がうまくいかない・難しい「お粗末決算書」事例について、お話をしてきました。
なんとかできただろう・なんとかできたはずのことをできずに、決算書に問題を起こしていることはないか。チェックをしてみましょう↓
- 少しだけ赤字の損益計算書
- 多額の商品評価損・廃棄損で赤字
- 社長からの貸付金が計上されている
- 社長からの借入金が「短期借入金」で計上されている
- 減価償却費を満額計上していない
これらを解決することで、銀行融資を近づけることができます。
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きょうの執筆後記
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