” 設備資金として申し込んだおカネの一部を別なことに… ”
それはマズい。「資金使途違反」でタイヘンなことになりますよ。ということで、設備資金の「資金使途違反」はどうなるか、なぜバレるのか?などについてお話をします。
設備資金で借りたおカネを別なことに使うとどうなるか?
会社・個人事業者が融資を受けようとする際、銀行からは「資金使途(しきんしと)」を問われます。
資金使途とは文字どおり、「おカネの使いみち」のこと。「借りたおカネを何に使うつもりなのか?」と銀行は聞いているのです。
おカネを貸す側の立場からすれば、それは当然の質問と言えるでしょう。おかしな使い方をされて、貸したおカネが回収できないのでは困りますから。
この「資金使途」について、もしも、銀行に回答したこととは異なるおカネの使い方をしたらどうなるのか?
当初の資金使途と異なるおカネの使い方をすると、それは「資金使途違反」と呼ばれます。
当初は「設備資金です」と回答しながらも、実は運転資金など別なことに使ってしまった… というケースなどについて、「資金使途違反」にまつわるお話をしてきます ↓
- 資金使途違反をするとどうなってしまうか
- 「わざと」だけじゃない、2種類の資金使途違反
- 資金使途違反がバレてしまう理由
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
店舗の保証金や事務所の敷金、内装費用、機械やパソコンなどを購入するためのおカネを「設備資金」と言います。これに対して、設備資金以外に使うおカネ(商品の仕入や経費の支払いなど)を「運転資金」と言います。
資金使途違反をするとどうなってしまうのか?
借入の申込をした当初、銀行に伝えていた資金使途とは異なるおカネの使い方をした場合。つまり、資金使途違反をした場合になにが起きるのか?
原則、銀行から「貸したおカネの全額返済」を要求されます。いますぐ返せ、と言われる。
銀行は、「その資金使途」を前提に審査をし、返済をしてもらえると判断して融資をしたのです。資金使途が変わるということは前提が変わるのですから、返済をしてもらえるかはわからない。だから、返して。という理屈です。
全額返済を要求されれば、「もう使ってしまったし…」という言い訳は通用しません。最悪、会社・事業の存続にも関わりますから、資金使途違反がいかに怖いものであるかがわかります。
また、全額返済まではいかずとも。今後の融資を受けることが困難になることは間違いありません。信頼関係を損ねたのですから当然の結果です。
小規模零細企業にとって、銀行融資は貴重な資金調達手段。言うなれば、生命線です。
資金使途違反は、目先のデメリット(全額返済)だけでなく、長期にわたるデメリット(融資困難)があることを覚えておきましょう。
「わざと」だけじゃない、2種類の資金使途違反
資金使途違反にいたる過程は2つあります。ひとつは「意図的(わざと)」な資金使途違反。もうひとつは「偶発的(うっかり)」な資金使途違反です。
「意図的(わざと)」の典型例としては、設備資金について、ウソの見積書を使って融資を受ける。余ったおカネは、ほかのことに… というものがあります。
たとえば、実際は300万円の機械を購入するのに、500万円の見積書をつくってもらい、「500万円の設備資金」で融資を受ける。「意図的」以外のなにものでもありません。
これに対して、「偶発的(うっかり)」があります。
たとえば、300万円の機械を購入しようと考えていたが、いろいろあって(相見積もりで安くなった、別の機種にしたなど)、最終的には200万円の機械を購入したという場合。
いずれ別のことで使うであろう残りの100万円がありますから、やはり資金使途違反になります。
前述した資金使途違反のデメリットを思えば、「意図的(わざと)」に違反をするようなことはないでしょうが。「偶発的(うっかり)」な違反にはじゅうぶん気をつけましょう。
「偶発的(うっかり)」な資金使途違反の例として、おカネの流れを間違える、というものがあります。たとえば、新規店舗の保証金を自己資金で立て替え払いしておき、のちのち設備資金として融資を受けたおカネを充当する。
これを信用保証協会付き融資でやると、資金使途違反になります。おカネの流れは、まず先に借りる、借りたおカネで支払う。この順序ですから気をつけましょう。
資金使途違反がバレてしまう理由
ここまで、資金使途違反のデメリット、資金使途違反にはどういうものがあるか、をお話ししてきました。
でもさ、資金使途違反したって、もしかしてバレないんじゃね? と思われる人のために。どうして資金使途違反がバレるのか、をお話ししておきます。銀行にバレる理由、です。
領収書との突き合わせ
融資が実行されたあと、貸したおカネが確かに資金使途どおりに使われたのかを確認するために、銀行は領収書の提出を求めます。
銀行口座からの振込払いであれば、預金通帳や振込票などの提出を求めます。
それら領収書などに記載された金額と、融資申込時の金額とを突き合わせすることで、銀行は資金使途の確認を行います。
この確認は、「資金トレース」と呼ばれるもので、以前よりも厳格に運用されるようになっていることに注意が必要です。
ちまたには、「バレなかったし」というハナシもありますが、それはひと昔前のことだったりもします。昔はともかく、今は無理。そのように理解をしておきましょう。
決算書との突き合わせ
必ずしも領収書の提出が求められるわけではありません。金額がそれほど大きくないケースなどでは、領収書などの確認が省略されるのです。
ところがこれを受けて、「ラッキー、バレないじゃん」というのでは間違いです。領収書に代わり、決算書との突き合わせが待っています。
具体的には、決算が終わると、「決算書のコピーをください」と銀行から言われます。
銀行は、決算書の内容から、設備資金として融資を受けたおカネが「固定資産」というカタチで計上されているかどうかをチェックします。
もし、計上されていない、あるいは金額が違う、ということであれば「資金使途違反」という指摘を受けることになる。という流れです。
銀行口座の動き
上記、領収書や決算書以外にも、銀行口座の動きからバレる、というケースもあります。
たとえば、A銀行から融資を受け、A銀行の口座に融資金が着金。そこから、申込時の設備資金とはちがう相手先に振込(資金使途違反)。その口座の動きからA銀行にバレる。
なんともお粗末なケースですが、そういうバレ方もあります。
まとめ
設備資金の「資金使途違反」はどうして起きるか、どうなるか、なぜバレるのか? についてお話をしてきました。
資金使途違反を甘く見てはいけません。全額返済や融資困難など、会社・事業の存続に関わります。
想定外の事態により、融資申込当初と状況が変わってしまった場合には、銀行に相談をするようにしましょう。対応について、指示を受けることができます。
そのときのポイントは「事前」相談です。事後では言い訳にしかなりませんので、あくまで事前、おカネを使う前に相談をすることをお忘れなく。
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