” 売上入金の預金口座を別の銀行に変更しよう ”というのであれば、銀行融資に影響があることをお忘れなく。
融資審査では「預金口座」を見られています。そこで、銀行が融資審査で見ている「預金口座」の3つのチェックポイントについてお話をします。
銀行が融資審査で見ている「預金口座」のチェックポイント
銀行は融資の可否を審査するにあたり、いろいろなものを判断の材料にしています。
そのなかのひとつに挙げられるのが「預金口座」です。
審査をする銀行は、じぶんの銀行の預金口座が、融資先(あるいは融資候補先)にどのように使われているのかをチェックしているのです。
したがって、融資を受ける側は、預金口座が見られていること、その結果が融資審査に影響を与えることを押さえておかなければいけません。
というわけで。銀行が預金口座のどこをどう見ているか、その「チェックポイント」についてお話をしていきます。次の3つです ↓
- 「預金平残」の推移はどうか?
- 日常的に使われているかどうか?
- 取引状況の良し悪しはどうか?
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「預金平残」の推移はどうか?
銀行は、融資先の「預金平残」をチェックしています。
預金平残(よきんへいざん)とは、一定期間における「預金の平均残高」のこと。日々増減している預金残高が、平均的にどれくらいあるのか。それが、預金平残です。
ではなぜ、銀行が預金平残を気にしているのでしょうか。
理由は、「表面金利と実質金利」という考え方にあります。具体例で見てみましょう ↓
【問】次の会社について、融資の表面金利と実質金利を求めましょう。
- 融資金額 1,000万円、金利 年2%
- 預金金額 500万円、金利 0%
- 融資と預金は同一銀行のものとする
【答】
- 表面金利・・・ 年2%
- 実質金利・・・(借入金利息-預金利息)÷(借入金-預金)=(1,000万円 × 2% − 0万円)÷(1,000万円 − 500万円)= 年4%
上記について結論を見ると、表面金利(融資のもともとの金利)が2%なのに対して、実質金利は4%と倍になっています。
これが意味するところは、こういうことです ↓
銀行は 1,000万円を金利 年2%(年 20万円)で貸したのだけれど。500万円を預かっているのだから、実質 500万円を貸して、年 20万円の利息をもらっているのといっしょ。
だから、実質的な利率は年4%(20万円 ÷ 500万円)!
つまり、融資金額に対して預金金額があればあるほど「実質金利」は上がり、銀行は効率よくおカネを貸していることになります。
ゆえに銀行は、預金金額としての「預金平残」に注目をしているのです。
なお、おカネを借りる側からすれば、融資を受けている銀行に預金をすることで、実質的な金利が高くつくことになります。効率が悪い。
けれども銀行としては実質金利の高さが動機になり、借りる側としては融資を受けやすい状況にあるとも言えます。
銀行から「定期預金をしてほしい」とか、「預金の残高を増やしておいてほしい」などと言われた場合には、そのあたりも踏まえて検討しましょう。
借りる側は、みずから実質金利を操作することで、融資の交渉材料にすることができるのです。
意図的に実質金利を上げようという場合でも、定期預金はやめておきましょう。引き出し(解約)をしたいときに、なんだかんだと銀行に引き止められることが少なくありません。
引き出しが自由な普通預金などにしておくのがおすすめです。
日常的に使われているかどうか?
銀行は、じぶんの銀行の預金口座を、融資先が「日常的」に使っているかどうかをチェックしています。
ここで言う「日常的」とは、たとえば、売上の入金、仕入の支払い、役員や社員の給料など経費の支払い、を指します。
日々の取引について、じぶんの銀行の預金口座が「メイン」で使われているかどうかを見ているわけです。
これに対して、「メインバンク」という言葉があります。一般に、もっとも融資残高が大きな銀行と定義されるのが「メインバンク」です。
おカネを借りている側は、融資検討の際、そのメインバンクを頼りにするところですが。もし、メインバンクの預金口座を日常的には使っていなかったら?
つまり、「おカネを借りて・返す」だけで、借りたおカネは別の銀行に移して使われている、という状況だったら。
メインバンクと呼ばれる銀行としては、「おカネを借りるときだけ頼られてもねぇ…」といったところでしょう。
やはり銀行は、じぶんのところに「預金」もほしいのです(前述した「実効金利」の考え方です)。
ウラを返せば、預金口座を日常的に使っている融資先に対して、「できるだけ融資に応えよう」という心理が働くことになります。
極端を言えば、財務状況などが少々きびしく、融資をするのが難しいようなケースでも。「日常的な預金取引」が、融資の実行を後押しすることがある、ということです。
「預金をどの銀行に置くか・どの銀行で使うのか」は、「どの銀行から融資を受けるのか」とセットで考えるようにしましょう。
取引状況の良し悪しはどうか?
融資審査の基本は「決算書」です。決算書の良し悪しが、融資の可否に大きな影響を与えます。
とはいえ、決算書に示された数字は「過去」のものでしかありません。
そこで「いま現在」の状況を把握するために、銀行は預金口座における「取引状況」の良し悪しをチェックしています。
売上の入金状況・推移はどうか、仕入や経費の支払状況・推移はどうか、などを見ているのです。
たとえば、売上の入金件数や入金金額が減少傾向であれば、いま現在は「不調」であって、先々には心配がある、と読みます。
結果、決算書の数字が良かったとしても、現状では融資に対して慎重にならざるをえない。と、銀行は考えるでしょう。
場合によっては、「資金ニーズあり(おカネが必要になる)」ということで、あえて積極的に融資することもあるかもですが。割合としては少ないでしょう。
いずれにせよ、銀行は、取引状況の良し悪しを確認しています。
融資の可否に影響する「数字」は、決算書の数字だけではないことを覚えておきましょう。
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まとめ
銀行が融資審査で見ている「預金口座」の3つのチェックポイントについてお話をしてきました。
預金口座の動きは銀行に見られていること、その結果が融資審査に影響を与えることを覚えておきましょう。
このあたりを知らずにいると、思わぬところで銀行からの評価を落としてしまうことになります。