” 銀行から利息を受け取ったときの仕訳って?”
というのは、個人事業者・フリーランスの帳簿つけでは、よくある質問のひとつです。そこで、「銀行から利息を受け取った」ときの仕訳・確定申告についてお話をします。
銀行からの利息は「事業主借」で仕訳、以上。
個人事業者・フリーランスの経理処理について、よくある質問に「銀行からの利息の仕訳はどうするか?」が挙げられます。
なぜなら、会計ソフトなどの「勘定科目一覧」を眺めても、「それっぽい勘定科目」が見当たらないからです。
して、その答えはと言うと、次のとおりです ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
普通預金 | ××× | 事業主借 | ××× |
利息として入金された金額について、借方が「普通預金」、貸方が「事業主借」で仕訳する。これが結論。これでおしまいです。
ところが、ちょっとは簿記を知っている、という人からすると。「事業主借」じゃなくて、「受取利息」とかじゃないのかなぁ… と首をかしげたくなるのが上記の仕訳です。
実際、個人事業者ではなく、会社の経理処理であれば、銀行からの利息は「受取利息」の勘定科目を使います。
というわけで。「銀行からの利息の仕訳はどうするか?」にまつわる、さらなる疑問についてお話をしていきます。次の2つです ↓
- なぜ、仕訳に「事業主借」を使うのか?
- 「銀行からの利息」は確定申告でどうするのか?
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
なぜ、仕訳に「事業主借」を使うのか?
この疑問に対する答えがこちらになります ↓
「本業による利益」の計算から、「本業以外の利益」を取り除くため。
すこし補足をすると。個人事業者が会計ソフトなどを使って仕訳をするのは、「本業による利益」を計算するためです。
この点で、「本業以外の利益」だと言える銀行利息を、その計算に混ぜないで! というハナシです。
これを理解するためにまず、個人事業者・フリーランスの税金である「所得税」のしくみから確認をしてみましょう。
「すべてごちゃまぜ」の法人税と、「きちんと分ける」の所得税と
個人事業者・フリーランスの税金である「所得税」のしくみを、会社の税金である「法人税」と対比するカタチで見てみましょう ↓
会社のほうは、あらゆる利益をごちゃまぜにして税金を計算する(上図の左側)。対して、個人事業者のほうは、利益を種類ごとに区分して税金を計算する(上図の右側)。というちがいがあります。
ちなみに、個人事業者の税金である所得税では、「利益は、その内容に応じて10種類に区分すべし」としています。
そして、区分された利益にはそれぞれ「〇〇所得」と名付けられています。それがこちら ↓
利益の種類 | 内容 |
利子所得 | 預貯金の利息や公社債の利子 |
配当所得 | 株式の配当、投資信託の収益分配金など |
不動産所得 | 土地・建物の賃貸により得た利益 |
事業所得 | 個人事業者・フリーランスが本業から得た利益 |
給与所得 | 会社員が受け取る給料・賞与 |
退職所得 | 退職金など |
山林所得 | 山林や木を売って得た利益 |
譲渡所得 | 土地・建物・有価証券などの売却により得た利益 |
一時所得 | 生命保険の満期保険金など |
雑所得 | 公的年金、あるいは他の9種に分類できない所得 |
上記の区分を眺めていると、「本業による利益(事業所得)と、銀行利息による利益(利子所得)とは別モノだ」ということがわかります。
ここで、さきほどの「法人税・所得税のしくみ図」を思い出しみましょう。所得税は「利益を種類ごとに区分」して税金を計算するのでしたよね。
したがって、「本業による利益(事業所得)」と、「銀行利息による利益(利子所得)」とは分けねばならない。ということになります。
銀行利息を「事業主借」で取り除く
個人事業者は会計ソフトなどを使って帳簿つけをするのは、「本業による利益」を計算するためです。
にもかかわらず。銀行からの利息を「収入」としてしまえば、本業以外の収入(利子所得)が本業による利益(事業所得)に混じることになってしまいます。
たとえば、「受取利息」など「収入」の勘定科目を使ってしまうと、利益を区分することができず。結果、所得税をただしく計算することができません。
そこでの解決策が「事業主借」です。事業主借は、貸借対照表を構成する勘定科目のひとつであり、利益計算に影響しない(収入ではない)勘定科目。
これを使うことによって、「本業による利益」の計算から、銀行からの利息を取り除くことができます。
以上が、なぜ、仕訳に「事業主借」を使うのか? の答えです。
「銀行からの利息」は確定申告でどうするのか?
仕訳に「事業主借」を使う理由がわかったところで、こんどは次の疑問が生じます。
事業主借として取り除かれた「銀行からの利息(利子所得)」はどうしたらよいのか。
つまり、放ったままでいいのか? 税金はかからないのか? 確定申告はどうするのか? といったハナシです。
結論、放置です。銀行からの利息については、確定申告でもなにもしなくていい。
銀行からの利息は、すでに税金を取られている
まず、銀行からの利息について税金はかかるのか、かからないのか? というと。税金はかかります。
前述した10種類の利益のなかにもありました、「利子所得」として税金はかかります。
では、利子所得を計算して確定申告をしなければいけないか、というと。しなくていい。
なぜなら、銀行からの利息は、税金が天引きされているからです。利息が入金された時点で、すでに税金がとられている。
具体的には、もともとの利息から 20.315%(国税 15.315%、地方税 5%)の税金を、銀行が天引きしています。
納付もなければ還付もない
銀行からの利息は、税金が天引きされていることもあり、あらためて確定申告をする必要もなく、納税をする必要もありません。
いっぽうで、なにか確定申告をすることによって、天引きされた税金が還付されるということもありません。
銀行からの利息については、税金が天引きされておしまい。だから確定申告もしなくていい(申告書にもなにも書かなくていい)、というルールになっています。
ですから、個人事業者・フリーランスがやるべきことは、「事業主借」で仕訳をするだけ。ハナシはだいぶ長くなりましたが、結論はきわめてシンプルです。
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まとめ
個人事業者が「銀行から利息を受け取った」ときの仕訳・確定申告についてお話をしてきました。
結論は、「事業主借」で仕訳をするだけ、とシンプルなのですが。
その理由についてはよくわからない、という声もお聞きしますので本記事にまとめてみました。スッキリしていただけましたら幸いです。