融資を依頼するときに、銀行から提出を求められる試算表。
もしかしたら、知らないところで粉飾を疑われているかもしれません。というわけで、銀行が疑う「粉飾してるっぽく見える試算表」についてのお話です。
そもそも銀行は「試算表」を信じない
銀行に融資を依頼する際、「試算表」の提出を求められることがあります。
このとき銀行は、試算表の粉飾(利益の水増し)を警戒しています。粉飾される「決算書」があるように、試算表もまた粉飾されることがあるからです。
そもそも、試算表の精度は決算書に劣る、という現実があることからも。銀行の試算表に対する視線は、決して優しいものではありません。
これについて、「粉飾をしてはいけない」というのはもちろんですが。
問題なのは、粉飾をしているわけでもないのに、銀行から「粉飾では?」と見られてしまうことです。
銀行も「粉飾してますか?」とは聞けませんから、粉飾を疑うときは「黙って疑う」ことが多いもの。疑われれば、当然、融資を受けることが難しくなります。
そこで、知らないうちに疑われている、なんてことがないように。銀行が疑う「粉飾してるっぽく見える試算表」について押さえておきましょう。次の3つです ↓
- タイムリーじゃない
- 期首からの経過月数が短い
- 累計表示
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行が疑う「粉飾してるっぽく見える試算表」3選
銀行から見て、粉飾の疑いが強まる試算表について3つほど。
タイムリーじゃない
3月決算の会社が、試算表を銀行に提出する例でお話をします。
たとえば、きょうが10月9日だとするならば。この会社は、9月分までの試算表を提出できるのがベストです。
ところが、「まだ6月分までしかできてないんです」などとタイムリーさを欠く場合。銀行は「粉飾の疑い」を強めます。
なぜならば、決算日までの時間的余裕があればあるほど、大胆な粉飾が行われやすいからです。
どういうことかと言うと。
9月分までの試算表であれば、決算日までは残り 6ヶ月。いっぽうで、6月分までの試算表であれば、残り 9ヶ月。3ヶ月の差(9ヶ月 − 6ヶ月)があります。
試算表での粉飾(たとえば、架空売上の計上など)について、「決算日までに帳尻を合わせればいいや」と考えた場合には、時間的余裕があるほどやりやすい。そういうことです。
また、粉飾をしないまでも。会社にとって「都合のよいところまで」の試算表である可能性があります。
つまり、6月までは黒字だったけれど、7月以降は赤字… じゃあ、6月までしか試算表はできていないことにしよう、といったケースです。
したがって、銀行としては「タイムリーじゃない試算表」に対しては、粉飾の疑いを強めているものなのです。
加えて、そもそも論として。タイムリーに試算表をつくることができない、という点では「会社の管理能力」もまた疑われていることを申し添えます。
期首からの経過月数が短い
期首から3ヶ月ていど以上経過しているタイミングで融資を依頼すると。一般に、銀行は「試算表」の提出を求めます。
このとき。たとえば、期首から3ヶ月の試算表と、期首から9ヶ月の試算表とであれば。銀行は、期首から3ヶ月の試算表のほうを、より疑うでしょう。
理由は、前述したとおり。決算日までの時間的余裕があればあるほど、大胆な粉飾が行われやすいからです。
よって、タイムリーな試算表を提出したとしても。いま現在が、期首からの経過月数が短いようだと、その試算表はあまり信用されない傾向にあります。
この場合、銀行は「試算表」よりも、最新の「決算書」のほうを重視する。ということを覚えておきましょう。
決算は赤字、でも、決算明けの3ヶ月は黒字。のようなケースでは、「黒字の3ヶ月試算表」を評価してもらうことは難しい。粉飾をしていない、としてもです。
また、粉飾うんぬん以前に。3ヶ月の試算表と9ヶ月の試算表とでは、9ヶ月の試算表のほうが決算を読みやすくなります。
3ヶ月目で黒字の試算表よりも、9ヶ月目で黒字の試算表のほうが、最終的な決算も黒字で迎える可能性が高い。ということです。
ゆえに、期首からの経過月数が短いほど、試算表の信用は下がる。ここにもまた、決算書を重視する銀行の姿勢があらわれます。
累計表示
試算表の「表示」のしかたとして、「累計」か「単月」か、があります。
たとえば、4月から9月までの試算表を提出する際、6ヶ月分の数字で表示をするのが「累計」です。
つまり、4月の売上高がいくら、5月の売上高がいくら… ということはわからず。6ヶ月での売上高がいくらか、しかわからない。というのが「累計」の試算表。
いっぽうで、各月ごとの数字がわかるように表示するのが「単月」の試算表です。
では、もしも粉飾をしている場合。粉飾を見破りにくい試算表は? と言うと。「累計」の試算表です。
単月ごとであれば発見しやすい「異常値」も、累計となると発見しづらくなるから。というのが、その理由です。
カンタンな例で言えば。架空売上をどこかの月で計上するときに、単月であれば見つけやすいですが、累計だと見つけにくい。
実際、「見つけにくくなるように」との意図で、「累計」の試算表を提出する会社が散見されます。
したがって、「累計」の試算表には、どこか「隠そう、隠そう」というフンイキが見え隠れするものです。粉飾が疑われます。
銀行に試算表を提出するのであれば、いさぎよく「単月」にしましょう。
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まとめ
銀行が疑う「粉飾してるっぽく見える試算表」についてお話をしてきました。
試算表は、そもそも疑われる命運にあります。
それでも、銀行に試算表を信じてもらう方法があるとすれば。それは「毎月提出」です。毎月タイムリーに提出することで、粉飾できる余地はおのずと狭まるからです。
「毎月」までとは言わないまでも。試算表を「定期的」に提出することが、銀行からの信頼を高めることに役立ちます。
おカネを貸して欲しいときだけ提出する試算表ほど、銀行にとってアヤシイものはありません。