”借入金が増えてるなぁ… 銀行からの評価も下がるのだろうなぁ…”
そうとばかりも言えませんよ。というわけで、借入が増加しても銀行の評価が下がらない4つのケースとその理由についてお話をします。
「増えても問題がない借金」もある
会社・事業の決算書(あるいは試算表)を見たときに、「借入金」の額が増加している、という場合。
借金が増えるなんていいことじゃない。きっと、銀行からの評価も下がるのだろうなぁ… と思いがちです。
ところが。借入が増えたからと言って、必ずしも銀行からの評価が下がるわけではありません。
「借金が増えていたって問題ない」というケースはあるのです。
そこで、借入が増加しても銀行の評価が下がらないケースと、その理由についてお話をしていきます。ケースは次の4つです ↓
- 他の銀行からの借入が増えている
- 売掛金・在庫が増えている
- 現金預金が増えている
- 社長からの借入が増えている
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
借入が増加しても銀行の評価が下がらない4つのケースとその理由
《ケース1》他の銀行からの借入が増えている
「ある銀行」が融資先の決算書を見たときに、「他の銀行」からの借入が増えているという場合。
「ある銀行」にとって、借入の増加は「安心材料」だ。とする考え方があります。
「他の銀行」から借入をできるだけのチカラがある、と考えることができるからです。
基本的に、銀行は返済をしてもらえる(であろう)相手に融資をするのであって、返済が危うい相手に融資をすることはありません。
したがって、他の銀行が融資をしていることには、「信用」として評価をされる一面があります。
とくに、自行(じぶんの銀行)よりも上位行(地銀から見た都市銀行など)からの融資については、その信用度合は上がります。
通常、融資審査は上位行ほどシビアで厳しい傾向にあるため、そこをクリアした「上位行からの融資」はひとつの信用になる。というわけです。
《ケース2》現金預金も増えている
借入が増えているけれど、それと同じくらい現金預金も増えているという場合。
銀行からの評価が下がることはありません。
なぜなら、現金預金と借入金は「行って来い」の状況であり、返済しようと思えばいつでもできるからです。
いつでも返済できるのですから、その借入は無いのといっしょだ。ということになります。
また、現金預金が多ければ、なにかあってもすぐに回収不能になるような危険が少ないことから、銀行にとっては安心感があります。
たとえ、その現金預金が融資によるものであっても、です。
実際、「無借金だけどおカネも無い」という会社と、「借金はあるがおカネもある」という会社とで、財務的安定度が高いのは後者です。
前者の「無借金だけどおカネも無い」だと、いざというときには倒産の可能性が高く、投資もできずに成長機会を逃しやすくなるでしょう。
そのようなこともふまえて。銀行融資をじょうずに利用して、手元のおカネを潤沢に備える会社は、借入が増えても銀行からの評価は下がりません。
《ケース3》売掛金・在庫が増えている
借入の増加額に対して、売掛金・在庫(たな卸資産)の額も同じくらい増加したという場合。
基本的には、銀行からの評価が下がることはありません。
なぜなら、売掛金・在庫は近い将来に現金化するものですから、借入金があっても「行って来い」と考えることができるからです。
前述した《ケース2》で、現金預金が増えるのと同じイメージです。
また、万が一、その会社・事業が急に潰れてしまったとしても。売掛金は回収すれば、在庫は売却すればおカネになります。
銀行は、そのおカネで返済をしてもらえばいいと考えると、「売掛金・在庫」は担保のようなものですから一応の安心もあります。
ゆえに、借入が増加しても、売掛金・在庫が増えていることによるのであれば、銀行からの評価は下がりません。
なお、注意点として。売掛金のなかに不良債権(回収できなさそう…)があったり、在庫のなかに不良在庫(売れなさそう…)があったりが疑われると、評価に影響します。
不良債権・不良在庫は現金化できない、よって、その分の借入は回収が危ぶまれる。と銀行は見るからです。気をつけましょう。
《ケース4》社長からの借入が増えている
借入は借入でも、銀行からの借入ではなく、「社長からの借入(役員借入金)」が増えているという場合。
銀行からの評価が下がることはありません。
なぜなら銀行は、原則、社長からの借入を「資本金と同じ」ように考えているからです。
社長が会社に対して「早く返せ」「〇月〇日までに返せ」などとは言わないものであり、その点で「一般的な借金」とは性格が異なります。
極端を言えば返さなくてもいい「社長からの借入」は、借金というよりは実質的に資本金だよね。と銀行は見ているのです。
資本金と見るのであれば、社長からの借入が増えても「自己資本比率」などの指標が悪くもなりません。結果として、銀行からの評価も下がらない。ということになります。
この点で、銀行が「社長からの借入」と「銀行からの借入」とを確実に見分けることができるように、決算書の表記には注意をしましょう。
具体的には、社長からの借入は「役員借入金」という勘定科目にして、銀行からの借入とは完全に区分することです。
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まとめ
借入が増加しても銀行の評価が下がらない4つのケースとその理由についてお話をしてきました。
一般に、借金が増えるのはよくない、銀行からの評価も下がるのではないか、という見方があります。
ところが、必ずしもそうではありません。借入が増えても、銀行からの評価が下がらないケースについて押さえておきましょう。
- 他の銀行からの借入が増えている
- 売掛金・在庫が増えている
- 現金預金が増えている
- 社長からの借入が増えている