融資がNGになる… その理由は、銀行に粉飾を見抜かれている。粉飾を疑われているからかもしれません。
というわけで。銀行に見抜かれやすい「粉飾決算」事例についてお話をします。
融資がNGになるのは「粉飾決算」を疑われているから?
会社・事業における銀行融資について。
銀行は融資先の「決算書の良し悪し」を見て、おカネを貸せそうか・貸せなさそうかを審査します。
ここで言う「決算書の良し悪し」とは。端的に言えば、次の2点です。
- 「黒字(利益>0)」かどうか?
- 「債務超過ではない(資産>負債)」かどうか?
上記2点について、いずれも「Yes」であれば。「その決算書は良し」と見て、おカネを貸せそうだということになります。
であるならば。それを逆手にとって、決算書を良くしてしまえばいいじゃないか。おカネを借りる側には、そんな考え方もあるわけで。
たとえ事実が「赤字」でも、事実を曲げて黒字にする。たとえ事実が「債務超過」でも、事実を曲げて資産超過にする。
このような考え方・行為にもとづく決算を「粉飾決算」と呼びます。
もちろん、銀行は粉飾決算を警戒し、融資先の決算書に粉飾がないかをチェックしています。
というわけで、銀行に見抜かれやすい「粉飾決算」事例についてお話をします。
ちなみに。事例を知って、バレないように粉飾をしよう! ということではありません。粉飾などすべきでないことは言うまでもありません。
そうではなく、銀行が粉飾を見抜こうとするポイントを押さえて、あらぬ疑いをかけられないように。
粉飾をする意図がないのに、事例のような「状況」になっているのであれば。銀行から粉飾を疑われているかもしれないぞ、という目で各事例を見てみましょう。
事例は次の7つです ↓
- 決算月の売上が多い
- 売上減+原価率減
- 減価償却費が少ない
- 金額が大きい営業外収入・特別利益がある
- 平均借入金利が高すぎる
- 資産科目が多い
- 未払金・未払費用が少ない
それでは、このあと順番にお話をしていきます。
銀行に見抜かれやすい「粉飾決算」事例7選
《事例1》決算月の売上が多い
たとえば、3月決算の会社であれば、3月の売上が他の月に比べてミョーに多い。そこから粉飾決算を見抜かれることがあります。
実際には、決算後4月以降の売上だけど、3月に売り上げたことにしよう(結果、利益が増えて粉飾できる)。つまり、売上を前倒し計上してしまおう、という会社が多いのです。
「売上を増やす」ということで言えば、「前倒し」ではなく「架空売上」を計上するという方法もありますが。これはかなり勇気(?)がいります。
完全に架空となると、入金のアテはありませんから、あとで辻褄を合わせることがタイヘン困難になるからです(粉飾がよりバレやすい)。
したがって、売上を増やすのであれば「前倒し」が多くなるわけですが、その際、決算月の売上を増やすことが多い。銀行はそこを見ています。
銀行にも提示する決算書類一式のなかに、「法人事業概況説明書」という書類があります。そこには、月別の売上高が掲載されているので、決算月の売上もそこでわかります。
売上を前倒ししたわけではなく、事実、決算月の売上が多いという場合。銀行に経緯を説明する、証拠資料を提示することも検討しましょう。粉飾の疑いを晴らす効果があります。
《事例2》売上減+原価率減
一般に、売上高が減れば、利益額が減少します。そこで、利益率を上げることで利益額の減少をカバーしよう、という粉飾があります。
具体的には、「架空在庫」を計上して原価率を下げることで、粗利益(売上総利益)を確保します。
よって、「売上減」と「原価率減」の現象がセットであらわれる。というところに、この粉飾の特徴があるために見抜かれやすくなります。
いやいや、粉飾じゃないんだ。と言うのであれば、なぜ在庫が増えているのか(原価率が下がっているのか)を銀行に説明するようにしましょう。
《事例3》減価償却費が少ない
本来計上すべき減価償却費よりも、少ない金額を計上することで利益を水増しする。
広く知られる粉飾方法でありながら、これほどすぐに見抜かれる粉飾方法もあるまい。というのがおかしなところではあります。
ちなみに、ここで言う「本来計上すべき減価償却費」とは、法人税法上の「償却限度額」と呼ばれる金額です。
その「償却限度額」は、決算書類のなかに含まれる、法人税別表十六「減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」という書類から確認することができます。
したがって、償却限度額よりも少ない金額の減価償却費が決算書に掲載されていれば、すぐに粉飾だとわかります。
減価償却費を減らして利益を増やす方法は、銀行に対して、まったくもって役に立たないことを理解しておきましょう。
《事例4》金額が大きい営業外収入・特別利益がある
最終利益(税引後当期純利益)がどうしても赤字になってしまう… というときに。本業外の収入を増やして、なんとか黒字にしようとすることがあります。
そういう会社の決算書には、固定資産や株式などを売却したことによる利益額が、損益計算書の「営業外収益」や「特別利益」の項目に掲載されていたりします。
さらに言うと。この「営業外収益」や「特別利益」が無ければ、「最終利益は赤字になるんじゃないかなぁ」というくらいの大きな金額が、「営業外収益」や「特別利益」として掲載されている。
結果として、最終利益が「ちょっと黒字」です。が、これ自体(営業外収益・特別利益)が粉飾、というわけではありません。
大きな金額の「営業外収益」や「特別利益」からわかることは、「ちょっと黒字」にしようとしたんだろうな、ということです。
であるならば。「営業外収益」や「特別利益」では足りずに、他の項目で粉飾をしているかもしれない。その疑いをきっかけに、他の粉飾が見抜かれることがあります。
というわけで。大きな金額の「営業外収益」や「特別利益」がある。あるいは、「ちょっと黒字」という場合には、銀行から粉飾を疑われやすくなることを知っておきましょう。
《事例5》平均借入金利が高すぎる
貸借対照表の「負債」が多くて、「債務超過(資産<負債)」になってしまう… というときに。実際よりも負債を減らしてしまおうとする粉飾があります。
具体的には、借入金(おもに銀行以外の高利貸し)の一部を帳簿から外します。いわゆる「簿外負債」です。
簿外にするだけでは飽き足らず、帳簿から外した金額を売上に振り替える(仕訳で言うと「借入金 ×××/売上高 ×××」)というツワモノまでいるとかいないとか。
それはともかく。簿外の負債は、「平均借入金利」が高すぎることから見抜かれることがあります。
平均借入金利とは、決算書の数字から「平均借入金利=支払利息÷{(期首の借入金残高+期末の借入金残高)÷2}」で計算できます。
この「平均借入金利」について銀行が、「ウチが貸している金利よりも高すぎる」と見れば、簿外の負債を疑うわけです。
借入金の一部を簿外に隠して、その利息だけを計上していると。金利が高すぎることから簿外負債が見抜かれることがあります。
《事例6》資産科目が多い
貸借対照表の資産に、やたらと科目が多い。たとえば、仮払金、貸付金、立替金、前払費用、未収金などなど。
負債のほうの科目はわりとあっさりしているのに、資産の科目はなんだかミョーに多い。というときに、粉飾を疑われるものです。
ほんとうは費用として計上すべきところを、資産として計上することで利益を水増ししているのではないか? そのように疑われます。実際、そのとおりであったりもします。
この点で、仮払金は本来、決算書に掲載してはいけない科目だから論外としても(「仮」であるものを、1年に1回のだいじな本決算に残してはいけません)。
貸付金、立替金、前払費用、未収金などは、その内容・明細を、銀行に対してきちんと明示・説明できるようにしておきましょう。
《事例7》未払金・未払費用が少ない
債務超過(資産<負債)を避けるために、負債の金額を減らす。赤字(利益<0)を避けるために、費用の金額を減らす。
これについて、未払金や未払費用の計上をやめてしまおう、という粉飾があります。
たとえば、毎月20日締めの従業員給料。21日から月末までの給料額は、未払金として負債に計上し、同時に給料として費用に計上すべきです。
ところが、債務超過や赤字だったりすると、その計上は控えられることになります。
ゆえに、「あるべきはずの未払金や未払費用が計上されていない」というところから、粉飾が見抜かれます。
また、業績がよいときには未払金・未払費用をガッツリ計上して、業績が悪くなるとまるで計上しない。その「増減」の大きさからも、粉飾は見抜かれます。
ですから、未払金や未払費用が少ない、増減が大きい、というのなら。そのあたりも、銀行に情報開示・説明をすべきポイントになるでしょう。
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まとめ
銀行に見抜かれやすい「粉飾決算」事例についてお話をしてきました。
見抜かれないように粉飾をしよう、ということではなく。ほんとうは粉飾などしていないのに、あらぬ疑いをかけらぬよう。
典型的な粉飾のパターンとして押さえておきましょう。
- 決算月の売上が多い
- 売上減+原価率減
- 減価償却費が少ない
- 金額が大きい営業外収入・特別利益がある
- 平均借入金利が低すぎる
- 資産科目が多い
- 未払金・未払費用が少ない