「銀行からおカネを借りたら、利息払わなきゃいけないよね」
そのとおり。けれども、だから銀行融資はやめたほうがいい、と考えるのは早すぎる。というわけで、「利息を払う」のは本当に銀行融資のデメリットなのか? を3つの視点から検証してみます。
「利息を払う」のをただただ嫌っているかもしれないアナタ
会社・事業における銀行融資について。こんなことが言われています ↓
『銀行融資を受けると、利息を支払わなければいけない』
つまり、「利息を払う」のは銀行融資のデメリットである。と、言われています。
そしてしばしば、「だから、銀行融資は受けないほうがいいよね」と続きます。
たしかに。銀行からおカネを借りたら、利息を支払わなければいけません。
けれども、その「利息」について、じゅうぶんに検討がなされたのか、理解がされているのかと言えばそうでもない。ただただ「利息」を毛嫌いしているだけ。
ということを前提に。「利息を払う」のは本当に銀行融資のデメリットなのか? を3つの視点から検証してみます。
自社・じぶんに抜け落ちている視点はないか、確認をしてみましょう ↓
- ひと月あたりの利息、いち日あたりの利息
- 利息が利益率に与える影響
- 銀行融資を受けないデメリットとの比較
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「利息を払う」は銀行融資のデメリットなのかを検証する3つの視点
《視点①》ひと月あたりの利息、いち日あたりの利息
銀行に支払う利息について、こんな言葉をよく見聞きします ↓
『金利が高い』
つまり、「年率2%」のように「◯%」の部分をとらえて、「金利が高い」と言っているわけです。
では、その金利について。具体的な「金額」に置き換えて、高いか安いかを考えたことはありますか?とたずねると。
多くの場合、「いや…(ない)」との答えが返ってきます。
ならばここで、実際にやってみることにしましょう。
銀行から 500万円の融資を受ける場合の、「金利」に対する「ひと月あたりの利息の金額」と「いち日あたりの利息の金額」は下表のとおり。
融資金額 | 金利 (年率) | ひと月あたりの 利息の金額 | いち日あたりの 利息の金額 |
500万円 | 1% | 4,167円 | 139円 |
500万円 | 2% | 8,333円 | 278円 |
500万円 | 3% | 12,500円 | 417円 |
※ 上記の「利息の金額」は借入当初の金額です。返済が進むにつれて、金額は減っていきます
「金利」を「金額」に置き換えるときのポイントは、「ひと月あたり」や「いち日あたり」とすることです。
このように置き換えてみると。「高い」と思われた金利に対する反応も、次のように変わることは多々あります ↓
- この金額であれば、他の経費を抑えることでなんとかなるな
- この金額であれば、利益でじゅうぶんにカバーできるな
「年率◯%」という表面的な金利のイメージに惑わされないように、具体的な金額に置き換えて考えるようにしてみましょう。
黒字の会社・事業であれば。利息を支払うことで、税金が減るという効果があります。利息は「経費」になるからです。
税率が25%(中小企業の法人税だとこのくらい)だとすると、支払う利息は「実質 25%引き」と考えることができます。
つまり、もし年率2%の利息ならば、実質は年率 1.5%(2%の25%引き)の利息だ、ということです。
《視点②》利息が利益率に与える影響
銀行に支払う利息について、こんな言葉も見聞きします ↓
『(利息を払うと)利益が減る』
なるほど、利息は「経費」ですから、利息を支払うことで利益は目減りしてしまいます。
では、その利益が目減りする度合い、言い換えると、利息が利益に与える影響について。「利益率」で把握はしていますか? とたずねると。
やはり多くの場合、「いや…(ない)」との答えが返ってきます。
ならばまたまたここで、実際にやってみることにしましょう。
銀行から融資を受けずに「利息なし」のケースと、融資を受けて「利息あり」のケースの「利益率」は下表のとおり。
なお、融資を受ける場合の条件は、融資金額 500万円、年率2%の金利とします(年間利息は 500万円 × 2%=10万円)。
利息なし | 利息あり | |||
金額 | 利益率 | 金額 | 利益率 | |
売上 | 5,000万円 | ー | 5,000万円 | ー |
経費 | 4,500万円 | ー | 4,500万円 | ー |
利息 | 0万円 | ー | 10万円 | ー |
利益 | 500万円 | 10% | 490万円 | 9.8% |
※ 上記の「利息の金額」は借入当初の金額です。返済が進むにつれて、金額は減っていきます
上記の表を見ると、融資を受けずに「利息なし」のケースでは、利益率が 10%(利益 500万円 ÷ 売上 5,000万円)です。
いっぽうで、融資を受けて「利息あり」のケースでは、利益率が 9.8%に下がります。
つまり、年率2%の利息が利益率に与える影響は、0.2%です。あえて言いますが、「わずか」に 0.2%です。
年率2%のイメージに引っ張られていると、利益率はもっと大きなダメージを受けるとの思い込みをしていることがありますが。それに比べれば 、0.2%は「わずか」であることが少なくない。
ちなみに、このケースでの 0.2%は、次のように計算されます ↓
- (融資金額 500万円 ÷ 売上 5,000万円)× 金利 2% = 0.2%
言い換えると。売上に対して 10%の融資を受けた場合(融資金額 500万円 ÷ 売上 5,000万円に、利息が利益率に与える影響は「金利の10分の1にすぎない」ということです。
そう考えれば、「(利息を払うと)利益が減る」というイメージも変わります。
「年率◯%」という表面的な金利のイメージに惑わされないように、利益率に与える影響も計算して考えるようにしてみましょう。
《視点③》銀行融資を受けないデメリットとの比較
さいご、3つめの視点として。「銀行融資を受けない場合のデメリット」との比較をしてみます。
銀行融資を受ける場合のデメリットとされる「利息」について、銀行融資を受けない場合のデメリットと比較をします。
次の具体例で考えてみましょう ↓
年商(年間の売上)が 5,000万円、手元の現金預金が 300万円の会社。日ごろの資金繰りはどう?
上記の具体例について想像されるのは、さぞかし資金繰りが厳しいのだろう… ということです。
月商(ひと月の売上)の1ヶ月分にも満たない現金預金だと、多くの場合、資金繰りが厳しくなるからです。
売上入金のタイミングと、仕入・経費支払のタイミングがちょっとずれると、たちまち資金ショート。経営者はおカネの算段に時間を奪われて、そのうえ大きなストレスも抱えている。
実際に、そのような(現金預金が月商の1ヶ月分未満の)会社・事業は決して少なくありません。
では、もしここで、銀行から 500万円の融資を受けることができるとしたら。どうでしょう?
当然、手元の現金預金は 800万円まで増えますから、日ごろの資金繰りは「かなりラク」になります。
利息の支払いは発生しますが、年率2%の金利だとしたら。《視点①》で見たとおり、ひと月あたりの利息は 8,333円、いち日あたりの利息は 278円です。
また、《視点②》で見たとおり、利益率への影響は マイナス 0.2%です。
これら、銀行融資を受ける場合の利息というデメリットと、融資を受けずに経営者が時間を奪われ・ストレスを抱えるデメリットと。どちらのデメリットが大きいか? 考えてみましょう。
なお、融資を受けない場合のデメリットには、「結局おカネの算段ができずに破綻する」というリスクがあることも決して忘れてはいけません。
たとえば、500万円の融資を受けたとして。増えるのは 500万円の「借金」だけではありません。500万円の「おカネ」も増えます(借りたおカネでモノを買えば、モノが増えます)。
したがって、ムダ使いをしない限りは、「返済をしなければいけない」ことはデメリットにはなりません。
にもかかわらず、しばしばデメリットのように言われるところではありますが。それは前提を間違えています。ムダ使いをする前提でおカネを借りてはいけません。
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まとめ
銀行融資を受ける場合のデメリットとされる「利息を払う」について、本当にデメリットなのかを3つの視点で検証してきました。
たしかに、利息を支払うことはデメリットですが。その「利息」について、じゅうぶんに検討がなされたのか、理解がされているのかと言えばそうでもない、という場合があります。
検討・理解をするのに必要な視点が抜け落ちていないか、確認をしておきましょう。
- ひと月あたりの利息、いち日あたりの利息
- 利息が利益率に与える影響
- 銀行融資を受けないデメリットとの比較