ちまたに流れるハナシのなかには、銀行融資に関する間違い・勘違いが少なくありません。
そのなかから、「銀行借入を返済する」ときのよくある間違い・勘違いについてご紹介をしていきます。
ちまたに多い、銀行融資の「実は間違い・勘違い」
会社・事業における銀行融資について。
ちまたには、よく見聞きするけれど、「実は間違い・勘違い」というハナシが少なくありません。
その背景として、銀行や融資の勉強をしたことがない、よくわからないままに銀行融資を受けている・銀行対応をしている人が多いことが挙げられます。
とはいえ、大きな額のおカネが動く銀行融資。ハナシを鵜呑みにしたばかりに間違い・勘違い… はなんとしても避けたいものです。
自社・じぶんはだいじょうぶかな? と、確認をしてみましょう。
今回は、銀行融資に関するよくある間違い・勘違いのなかから、「借入を返済する」ときに場面をしぼってお話をしていきます ↓
- 利益で返済をする
- 短期から長期に組み替える
- 早く返済をする(繰り上げ返済)
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「銀行借入を返済する」ときのよくある間違い・勘違い 3選
利益で返済をする
銀行から借りたおカネは利益で返済をする、というハナシがあります。これは半分正解で、半分は不正解です。
銀行は融資先の「利益」を見て「返済力」を評価します。また、借りたおカネを「なにかに使う」のであれば、利益が無ければ返済できない。
これらの点では、「利益で返済する」のは正解です。ところが。
おカネを借りるのは「なにかに使う」ためばかりではありません。具体的には、「おカネを置いておく」ための借入。つまり、余裕資金を持つための借入です。
この場合、返済をするのに利益は必要ありません。借りて置いてあるおカネで返済をすればよいからです。
たとえば、300万円借りたら、同時に 300万円の現金預金が増えます。増えた 300万円で、借入 300万円を返済していけばいい。この点で言えば、「利益で返済する」は不正解です。
ちょっと待て、そんな「置いておくだけのおカネ」など借りる必要があるのか? と思われるかもしれませんが。
日ごろの資金繰りが厳しい… と感じている会社・事業であれば、「置いておくだけのおカネ」を借りることも必要だと言ってよいでしょう。
実際、現状よりも月商(月の売上高)の1ヶ月分ほど多くおカネを持つと、資金繰りの悩み・苦労が軽減される。という会社・事業は少なくありません。
「少なすぎるおカネ」でやりくりをするのはたいへんです。最低でも月商の1ヶ月分以上、できれば月商の3ヶ月分の現金預金を持つのがベストです。
ここで話を戻して、「利益で返済する」の間違い・勘違いには気をつけましょう。
利益はもちろんあったほうがよいですが、余裕資金を返済するにあたっては、必ずしも利益が必要なわけではありません。繰り返しになりますが、「借りたおカネ」で返済すればよいからですね。
借入をすると返済がタイヘンだ(だから借りない)、と言うヒトがいます。けれども、余裕資金の借入について言えば、それは間違い・勘違いだと覚えておきましょう。
余裕資金の借入について。元金の返済は、利益が無くても、借りたおカネ(置いてあるおカネ)があるのでだいじょうぶです。
いっぽうで、利息の支払い分だけは、利益が必要になります。借りたおカネから、では足りません。利益の金額は元金に比べれば小さなものですが、それでも利息分の利益だけは必要です。
短期から長期に組み替える
借りたおカネの「返済期間」について。短いより長いほうがいい、だから、できるだけ短期返済から長期返済の借入に組み替えよう。というハナシがあります。
これもまた、半分正解・半分不正解です。
基本的には、長い期間をかけて、少ない金額で返済をするほうが資金繰りがラク。この点では、「短期から長期に組み替える」のは正解です。
けれども。うかつに長期に組み替えることが望ましくないケースがあります。それは、いわゆる「所要運転資金」分の借入をするケースです。
ちなみに、所要運転資金とは。「売上債権 + たな卸資産 − 買入債務」で計算される、「商売を続けるのに立て替えが必要になるおカネ」を指します。
CHECK! 借りなさすぎの典型『運転資金分の融資すら受けていない』と資金繰りはツラくなる
( ※ 所要運転資金という呼び名のほかにも、正常運転資金、経常運転資金、必要運転資金などとも呼ばれます)
この所要運転資金分の融資については「短期・期限一括返済」が望ましく、「長期・毎月分割返済」は望ましくありません。
商売を続けるにあたり常に必要とされる「所要運転資金」を借入したのに、これを「長期・毎月分割返済」し続けるとどうなるか?
手元のおカネは返済で減り続けますから、所要運転資金分に足りなくなってしまいますよね。これが、資金繰りを厳しくします。
いっぽう、「短期・期限一括返済」であれば。毎月の返済はありませんから、手元のおカネは減りません。資金繰りも厳しくならない。
でも、短期で期限に一括返済するんでしょ? と思いますよね。たしかにそのとおりなのですが、所要運転資金は「商売を続けるのに立て替えが必要になるおカネ」です。
商売を続けるにあたり常に必要なのですから、期限が来たらまた「短期・期限一括返済」で借り直す。これが、所要運転資金の借入に対する正しい考え方です。
にもかかわらず。所要運転資金にまで、「短期から長期に組み替える」とのハナシを見聞きすることがあります。
短期で借りるよりも長期で借りるほうが「なんか安心」という借り手の心理と。長期・毎月返済のほうが「なんか貸しやすい」という貸し手の思惑とに、注意が必要です。
所要運転資金分のおカネを、「長期・毎月分割返済」で借りているというのなら。資金繰りを安定させるために、「短期・期限一括返済」での借入に切り替えることにチャレンジしましょう。
現状、かんたんなチャレンジではありませんが。以前よりもチャンスは大きくなっています。
早く返済をする(繰り上げ返済)
余分なおカネは持たないようにする。余分なおカネがあるのなら、できるだけ早く借金を返したほうがよい。そんなハナシを見聞きすることがあります。
中小零細企業に関して言えば、そのハナシは不正解です。半分正解、ということはありません。
なぜなら、余分なおカネを持つほうがよいからです。
端的に言えば、不測の事態に余分なおカネが無ければ、会社・事業はつぶれてしまいます。また、余分なおカネが無ければ、最適なタイミングで投資をすることもできません。
その点、大企業であれば、豊富な資金調達の手段を駆使して、いつでもすぐにおカネを集めることができるしょう。けれども、中小零細企業の資金調達手段は限られています。
中小零細企業にあっては、銀行融資が資金調達のメインであり。むしろそれしかない、とも言えます。
では、不測の事態や、投資のタイミングで融資を受ければよいかと言えば、それも間違いです。そのときに融資を受けられるかはわからず、受けられたとしても時間がかかれば間に合うかわかりません。
であるならば、いまある余分なおカネは持っておくことです。
「おカネはできるだけ持たずに効率よく運用する」などというのは財務部門があるような大企業がやることであって、中小零細企業がやることではありません。
いざとなったら社長が資金繰りに奔走しなければならない… そのときの非効率(時間、ストレス)に比べれば、おカネを余分に持つ非効率(利息)も許容できるはずです。
ちょっと余裕ができたからといって早く返済をしたばかりに、ギリギリの資金繰りをすることがないようにしましょう。
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まとめ
「銀行借入を返済する」ときのよくある間違い・勘違いについてお話をしてきました。
大きな額のおカネが動く銀行融資。ちまたのハナシを鵜呑みにしたばかりに間違い・勘違い… がないように気をつけましょう。
- 利益で返済をする
- 短期から長期に組み替える
- 早く返済をする(繰り上げ返済)