コンサルの現場で見る『銀行融資には残念』な決算書10選

銀行融資の残念な決算書

「もっと早く気付いていれば、もっと早く手を付けていれば、もっとスムーズに銀行融資を受けられたのに…」

コンサルの現場でそう感じる、「銀行融資には残念」な決算書についてお話をしていきます。

目次

もっと早く気付いてほしい、もっと早く手を付けてほしい。

「銀行融資を受けたい」と考えている会社・事業向けのコンサルティングをしています。

そのときに見せていただく決算書。「これは残念だなぁ」と感じるものは少なくありません。

誤解無きように申し添えますが、「決算にいたる会社・事業の努力、あるいは、その成果」を否定するかのごとく残念だ、と言っているわけではありません。

そうではなく。あくまで「銀行融資が受けにくくなる」という点で、決算書そのものに問題がある・改善すべきところがある、との意味での「残念」です。

もっと早く気付いていれば、もっと早く手を付けていれば、もっとスムーズに銀行融資を受けられたのに…(もちろん、それでもコンサルにあたってはできるだけの手は尽くしますが)

そのような決算書にならないように。銀行融資には残念な決算書について、ぜひ押さえておきましょう。

コンサルの現場で見る「銀行融資には残念」な決算書
  1. 現金が多すぎる
  2. 預金残高が合っていない
  3. 社長への貸付金がある
  4. 少し赤字
  5. 2期連続赤字
  6. 債務超過 + 赤字
  7. 粉飾決算をしている
  8. 減価償却、引当をしていない
  9. 銀行からの借入が無い
  10. 預金残高が少なすぎる

 

コンサルの現場で見る「銀行融資には残念」な決算書10選

《残念①》現金が多すぎる

決算書のうち貸借対照表に掲載される「現金」について。その残高が多すぎる、という決算書があります。

具体的には、100万円を超えるような金額の現金です。いまのご時世(?)、おカネは銀行に預ける会社・ヒトがほとんどでしょうから、それだけの現金を手元に置いているのは不自然です。

そこで「この現金は実際にあるのですか?」とおたずねしてみると。実際にはそんな現金は無い、というケースがあります。

事実とは違う決算書なのですから、これはもう信用できません。決算書全体がアヤシイ… 銀行もそのように考えます。

ちなみに。現金が実際よりも多くなるのは、「使いみちのわからない出金」を帳簿につけることができなかったから、などの理由によります。やはり、アヤシイのです。

そのような帳簿、決算書になる前に、手を打たなければいけません。

《残念②》預金残高が合っていない

まさかそんなことがあるわけがない、と思われるかもしれませんが。決算書の各種預金の金額と、実際の預金残高が合っていないことがあります。

(厳密には、決算書に付属する「勘定科目内訳明細書」という書類に、各銀行ごとの預金残高を掲載しているはずです)

これはもう弁明の余地もなく、単純なミスであり、確認不足。決算で預金残高を合わせるのは基本中の基本であり、そこを誤ると決算書の信用はガタ落ちです。

銀行は当然、じぶんのところの預金残高はわかっていますから。決算書の金額と突き合わせてみて、誤りにはカンタンに気づきます。

こうなると、決算書全体がアヤシイものに見えてしまうものです。そんな不利益を被ることがないように、預金残高はきちんと確認をしましょう。

似たようなところで言うと、借入金の残高も同じです。勘定科目内訳明細書に掲載する金額と、実際の残高が違っている… これもお見かけしますので気をつけましょう。

《残念③》社長への貸付金がある

会社から社長への貸付金が貸借対照表に掲載されている。少額ならまだしも、ウン百万円、ウン千万円も。となると、銀行融資は難しくなります。

銀行からすれば、会社・事業に融資をしたおカネが社長に流れるのでは? と疑うからです。そのおカネを社長がなにに使っているかもわかりません。アヤシイ。

また、銀行からおカネを借りようとする前に、まず社長からおカネを返してもらいなさいよ。というハナシでもあります。

したがって、社長への貸付金は、銀行融資を受けるにあたって「大きなネック」になる。これはよく覚えておきましょう。

ウン百万円、ウン千万円になってしまうと、解消するのも容易ではありません。社長は不用意に会社からおカネを借りないこと、借りたらすぐに返すことです。

《残念④》少し赤字

決算書のうち損益計算書の末尾、「税引前当期純利益」が少し赤字。もう少し具体的に言うと、数万円〜数十万円くらいの赤字、というケース。

聞けば、税金を納めなくていいように… などということもあるようですが。それとは別に、決算をしてみたら事実そうなった、ということもあるでしょう。

ところが、銀行融資を受けたいのであれば、赤字は避けるべきものです。たとえ1円でも赤字は赤字として評価を下げてしまうところがあるからです。

その点で、「数万円〜数十万円くらいの赤字」であれば、なんとかならなかったのか? と考えることになります。

売上を前倒しする、経費を先送りする、経費の一部について社長が自腹を切る、など。これは粉飾決算を促しているのではなく、「許される経理処理の範囲内で」ということです。

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決算は1年に1度きり。次の決算までの1年間ずっと、「赤字の決算書」で銀行から見られることになる。それでも赤字の決算書でいいか? あらためて確認をするようにしましょう。 

《残念⑤》2期連続赤字

銀行融資を受けたいのであれば、赤字は避けるべき。と、前述しました。くわえて言うと、「2期連続赤字」はなんとしても避けるべきです。

なぜなら、「この会社・事業は良くない、悪い」という評価が定着してしまうから。1度の赤字であれば「たまたま」だと言えても、2度となると「またまた」になってしまいます。

すると、次の決算もまた赤字なのかな? と銀行は考える。融資は受けにくくなるばかりです。

もしも、今期は赤字、来期も赤字かもしれない… というのなら。今期の赤字を大きくしてでも、来期は黒字にする、というのもひとつの方法です。

たとえば、今期の売上を来期に先送りする。来期の経費を当期に前倒しする、など(もちろん、許される経理処理の範囲内で)。

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それはそれとして。そもそも赤字になる前に、つまり、黒字のときに融資を受けておくのがおすすめです。あとでたいへんな思いをしないよう、「借りられるときに借りる」という発想を持ちましょう。

《残念⑥》債務超過 + 赤字

損益計算書の「赤字」に加えて、貸借対照表が「債務超過」。これもまた、融資が受けにくいという点では残念な決算書です。

債務超過とは、資産よりも負債が大きい状態であり、言い換えると、いまある資産で負債を返済することができないことをあらわしています。

したがって、銀行としてはこれ以上貸すのは危険だと考え、債務超過が大きくなるほど、融資を受けるのが難しくなるわけです。

その債務超過は、基本的には「赤字が続く」ことによって大きくなっていきます。

赤字が出はじめたころであれば債務超過は無く、赤字だけが問題だったのに。赤字が続くことにより、債務超過という問題も加わります

「債務超過+赤字」の決算書を前にして言えることは、もっと早く手を付けていれば… でしかありません。こうなると融資を受けられるまでに立て直すのも困難であり、時間もかかります。

《残念⑦》粉飾決算をしている

諸事情(?)があって、意図的に利益を水増ししている。いわゆる「粉飾決算」をしている決算書、というものもあります。

当然ながら、銀行融資においてはNGです。事実と異なるような決算書をつくる相手を銀行は信用しません(銀行に限らず、ですが)。

すでに粉飾をしてしまった、ということになると。銀行融資を受けるには、まずそれを正しい決算に戻すようにしなければいけません。

黙っていればバレないのではないか? と思われるかもしれませんが。粉飾はいつかバレるものですし、バレたときにはその後もずっと、お付き合いができなくなるでしょう。

ですから、粉飾はしないこと。もししてしまったら、正直に言う。そのうえで、正しい決算書にあらためることです。

それで銀行からすぐに信用してもらえるものでもありませんが、そこからしかはじまりません。粉飾の代償は大きなものだ、と心得ましょう。

《残念⑧》減価償却、引当をしていない

本来計上すべき減価償却費が損益計算書に掲載されていない。これもまた、粉飾と言えます。

たとえば、架空売上や架空在庫などによる粉飾と比べれば悪意のほどは小さいものの。利益の水増し、という点では変わりありません。

決算書を見れば、「減価償却費があるはずなんだけどなぁ」というのはすぐに気がつきます。

したがって銀行は、本来計上すべき減価償却費の分だけ利益を修正して評価をします。そのうえ、銀行からは「そういう決算書をつくってしまう会社なんだ」という目で見られることになります。

同じようなことで言うと、貸倒引当金や賞与引当金の繰入などが挙げられます。このあたりは、たとえ少額でも、本来計上すべきものであれば計上しておくのがよいでしょう。

さきほどとは逆に、「そういう決算書をつくれる会社なんだ」という目で見てもらえるからです。

なお、「税金の繰越欠損金を有効活用する」という意図で、減価償却や引当をしないのであれば。その旨を銀行にきちんと伝えるようにしましょう。

《残念⑨》銀行からの借入が無い

これから銀行融資を受けようというときに、いま現在、銀行からの借入が無い。このような決算書は融資が受けにくいものです。

とくに、開業から何年も経っていて、いちども銀行融資を受けたことがない、というケース。

えっ、無借金がいいんじゃないの? と思われるかもしれませんが。わたしとしては、そのような決算書を前にすると、思わず「う〜ん」と唸ってしまします。

なぜなら、銀行には「銀行融資を受けようとしなかったのではなく、受けたくても受けられなかったのでは?」との考え方があるからです。

たとえ、決算書の内容が良い(ずっと黒字、とか)としても。決算書にはあらわれないところ(社長の信用情報にブラックがある、など)に問題があるかもしれません。

ほかの銀行はみんな、その問題を知っていて貸さなかったのではないか? と、銀行は疑うわけです。だからウチも貸さないほうがいいのかな… と考えることがあります。

これに対するいちばんの対策は、創業時に融資を受けること。はじめてだからこそ受けられる創業融資で、融資の実績をつくっておくことが、のちに銀行からの信用につながります。

まずは創業融資を受けること。もし、それを逃したのであれば、できるだけ早く融資の実績をつくるのがおすすめです。

CHECK! 創業時に融資を受けるメリット、創業後に融資を受けるデメリット

《残念⑩》預金残高が少なすぎる

貸借対照表を見たときに、預金残高が少なすぎる。という決算書は、銀行融資を受けにくくします。

具体的には、月商(月の売上高)1ヶ月分の預金がない、というケースです。

一般に、月商1ヶ月分未満の預金では資金繰りが厳しいものです。ふだんから厳しいうえに、ちょっとなにか(売上減少とか)が起きると、たちまち資金がショートします。

そのような会社におカネを貸すのは、銀行としては不安です。貸したおカネを回収できないかもしれない。だから貸したくない、と銀行は考えます。

これを避けるためには、おカネがあるうちに融資を受けることです。少なくとも、月商1ヶ月分以上の預金があるうちに融資を受けるようにしましょう。

おカネが無くなってはじめて、銀行に駆け込もうとする会社は決して少なくありません。

それでは融資も難しいのですから、やはり、「借りられるときに借りておく」という発想が必要です。

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まとめ

コンサルの現場で見る「銀行融資には残念」な決算書についてお話をしてきました。

決算書を拝見していて、もっと早く気付いていれば、もっと早く手を付けていれば… と感じることがあります。

遅すぎて手遅れ、ということがないように。決算書の確認をしてみましょう ↓

コンサルの現場で見る「銀行融資には残念」な決算書
  1. 現金が多すぎる
  2. 預金残高が合っていない
  3. 社長への貸付金がある
  4. 少し赤字
  5. 2期連続赤字
  6. 債務超過 + 赤字
  7. 粉飾決算をしている
  8. 減価償却、引当をしていない
  9. 銀行からの借入が無い
  10. 預金残高が少なすぎる
銀行融資の残念な決算書

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