融資を受けている銀行からは「決算書のコピーをください」と言われたら。ただ決算書のコピーを渡すだけ、という対応ではありませんか?
けれども、たったA4一枚の書類を添付するだけで、銀行担当者から喜ばれる、銀行融資を受けるうえでのメリットが生まれますよ。というお話をしていきます。
たったA4一枚の書類をなぜ添付しないのか?
会社・事業における銀行融資について。
年に一回の決算が終わると、融資を受けている銀行からは「決算書のコピーをください」と言われます。
このとき、銀行担当者にただ決算書のコピーを渡すだけ、という対応は少なくありません。
ところが。たったA4一枚の書類を添付するだけで、銀行担当者から喜ばれる、銀行融資を受けるうえでのメリットが生まれる。と言ったらどうでしょう?
あえて繰り返しますが、「たった」A4一枚です。しかも、決して作るのが難しい書類ではありません。
であるならば。添付しない手はない、と言える書類です。
ひとまずこれを、「A4一枚報告書」と名付けるとして。そんなA4一枚報告書の作り方とメリットについて、このあとお話をしていきます ↓
- A4一枚報告書の作り方
- A4一枚報告書のメリット
A4一枚報告書の作り方
まずは、「A4一枚報告書」の作り方を見ていきましょう。
作り方と言っても、そもそもがA4用紙一枚ていどのボリュームです。また、内容も難しいことではないので心配はいりません。
このあと列挙する項目を、おおむねA4用紙一枚を目安に記載していきましょう。
表題・文頭
とくに決まりはありません。表題(タイトル)は、「2019年3月決算のご報告」のように、内容がわかればOKです。
あとは、一般的なビジネス文書の文頭と同じような体裁にしておきましょう。たとえば、次のような感じで ↓
〇〇年〇〇月〇〇日
〇〇銀行 御中
株式会社 〇〇〇〇
代表取締役 〇〇〇〇
2019年3月決算のご報告
本決算の概要
前述の表題・文頭に続き、「本決算の概要」という見出しを振って、次の内容を記載しましょう ↓
1.本決算の概要
- 売上高 ××,××× 千円(前期 ××,××× 千円)
- 売上原価 ××,××× 千円(前期 ××,××× 千円)
- 販売管理費 ××,××× 千円(前期 ××,××× 千円)
- 営業利益 ××,××× 千円(前期 ××,××× 千円)
- 当期純利益 ××,××× 千円(前期 ××,××× 千円)
今回の決算書と前期の決算書から、上記の数字を抜き出して記載します。これまた難しいことはありませんよね。
そして、だいじなのはこのあとです。上記の数字の下に、次の内容を記載しましょう。
- 前期との差異が大きかった項目について、差異が生じた理由
たとえば。売上高が前期よりも大きく伸びているのであれば、どの商品・サービスが、どのような理由で売れたのか、などを記載します。
理由については、取引先を増やして売上数量が増えることもあれば、値上げをしたということもあるでしょう。
売上高のほかにも、売上原価の差異(原材料が高騰した、とか)、販売管理費の差異(人を採用して人件費が増えた、とか)があれば記載をします。
当期純利益の差異のうち、影響が大きい特別利益・特別損失があるのであれば、それも記載をしておきましょう。今年限りの突発事項であることを強調するためです。
以上を「簡潔」にまとめて記載しましょう。ポイントは、あくまで簡潔に。そういう意味では、それぞれ箇条書きでまとめるくらいがちょうどいい、と言えます。
問題点と対策
前述した決算の結果(数字)を受けて、「現状の問題」と「これからの対策」を記載します。「問題点と対策」というような見出しを振っておくとよいでしょう。
記載内容の例として、前期に比べて売上高が下がっているということであれば ↓
2.問題点と対策
- 売上減少について「在庫不足による売り逃し」の問題がある。事前の在庫確保、納期をより短期化できる仕入先を探す
- ・・・
- ・・・
やはり、簡潔を心掛けて、それぞれの問題点と対策とを箇条書きにまとめるのがおすすめです。
現在の受注状況
さいごに、いまの時点での「受注見込み」を記載します。たとえば、このような感じです ↓
3.現在の受注状況
- 株式会社 〇〇〇 ×,××× 千円(商品名 〇〇、〇月納品予定で受注済)
- 株式会社 △△△ ×,××× 千円(商品名 △△、△月納品予定で商談中)
- ・・・
利益を生み出す元である「売上」は、銀行にとっての大きな関心事のひとつです。
その「売上」の見込みを示す材料として、「受注状況」を明らかにしておくのがよいでしょう。
売上先名称、提供する商品名、納品時期、受注済か商談中か、などを記載しておくと具体性があってなおよしです。
受注をするような商売ではない(たとえば飲食店などの)場合には、「今後1年の月商推移(予測)」を掲載するなどしておきましょう。
A4一枚報告書のメリット
ここまで、A4一枚報告書の作り方(記載内容)を見てきました。
続いて、A4一枚報告書によって、どのようなメリットが生まれるのかについてお話をしていきます。
《メリット1》銀行に自社の「商売」を知ってもらえる
A4一枚報告書の「記載内容」を思い出してみましょう ↓
- 本決算の概要(とくに、前期との差異が大きかった項目について、差異が生じた理由)
- 問題点と対策
- 現在の受注状況
これらはいずれも、決算書の数字を見ているだけではわからない(あるいは、わかりにくい)ことです。
にもかかわらず。おカネを貸す銀行であれば、融資先の情報として当然に知っておくべきことでもあります。
とくに最近では、「決算書には過度に依存せず、会社・事業の将来性を評価する融資(事業性評価融資)」へと流れが変わりつつあるところです。
この点で、銀行が融資先の「商売(ビジネスモデル)」を理解していなければ、会社・事業の将来性の評価などできるはずがありません。
けれども、A4一枚報告書があることで、銀行が融資先の「商売(ビジネスモデル)」を知る「とっかかり」ができます。
実際、この一枚の書類をもとにして、銀行担当者と会社とで会話が深まっていく場面をなんども目にしてきました。
銀行としては融資先のことがよくわかり、評価・審査もしやすくなる。結果、融資を受けやすくなる。というメリットがあります。
《メリット2》提案をもらいやすくなる
さきほど、A4一枚報告書の記載例で、次のようなものを挙げました ↓
2.問題点と対策
- 売上減少について「在庫不足による売り逃し」の問題がある。事前の在庫確保、納期をより短期化できる仕入先を探す
- ・・・
- ・・・
これを見た銀行からは、「在庫を確保するための資金の融資」、「仕入先の紹介(ビジネスマッチング)」という提案が考えられます。
このように、A4一枚報告書に記載された内容には、銀行が提案をイメージしやすくなる効果があります。
会社としては、銀行からの提案により「助かる」ということもあるでしょう。これもまた、A4一枚報告書を作るメリットです。
《メリット3》他社と差がつく
A4一枚報告書はそれほど難しい書類ではありませんし、それほど大きな手間がかかる書類でもありません。
ところが、ほとんどすべての会社(と言っても過言ではないでしょう)が、そのような書類は作成していなのが現実です。
したがって、たった一枚の書類であったとしても、銀行からは「他の会社とは違う」という評価をされることになります。
この会社はちょっと違うぞ、書類を作ることができる管理能力がある会社だ、と見てもらえる。
良い評価をしてもらえれば、多かれ少なかれ融資の受けやすさにもプラスですから、これもA4一枚報告書のメリットだと言ってよいでしょう。
結果として、銀行担当者は喜ぶ
銀行担当者は、融資先の状況を、支店長をはじめ銀行内に伝えなければいけません。
このとき、決算書だけでは、状況を把握するには不足があります。
支店長から「なぜ売上が下がっているんだ?」「どうして経費がこんなに増えているんだ?」などと聞かれても。決算書を眺めているだけでは回答に窮するばかりです。
決算書のコピーだけでは、銀行担当者も困っているのです。
いっぽうで、A4一枚報告書があれば、そのような困りごとはだいぶ解消されるでしょう。
報告書そのものを銀行内で回覧することもできますから、銀行担当者が別途書類を作成したり、説明をしたりという手間も省けます。
そのうえ、前述したように融資先への各種提案もしやすくなるのですから、銀行担当者は助かるし、喜ぶのです。
銀行担当者も喜ぶ、融資の評価・審査に良い影響があれば会社にもメリットがある。たったA4一枚です。作ってみるのはいかがでしょうか。
年に一回の決算書は、銀行に出向いて報告をするのがベストです。本記事でお話をしたA4一枚報告書を持っていくとよいでしょう。
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まとめ
「A4一枚報告書」について、作り方とメリットのお話をしてきました。
たったA4一枚の書類ではありますが、銀行担当者から喜ばれ、銀行融資を受けるうえでのメリットが生まれます。
いつも、ただ決算書を渡しているだけ、というのであれば。いちど、A4一枚報告書の作成にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。