売上が減ってしまって、おカネが足りなくなってしまった…
それは誤解かもしれません。売上が減ったことはきっかけに過ぎず、資金繰りを悪くする「本当の原因」は別にある。というお話をしていきます。
おカネが無いのは売上が減ったから… という誤解
会社・事業における資金繰りについて、こんな話を見聞きすることがあります ↓
「売上が減ってしまって、おカネが足りなくなってしまった…」
つまり、おカネが足りない・おカネが無いのは「売上が減ったから」だ。売上の減少こそが資金繰り悪化の原因だ、という話です。
ところが。多くの場合、資金繰りを悪くしている「本当の原因」はほかにあります。
「売上が減ったから」というのはただのきっかけに過ぎず、そもそも資金繰りが悪くなるような原因を抱えていた。という会社は少なくないのです。
したがって、この場合。売上を増やしても、資金繰りを本当に良くすることにはなりません。売上を増やしても解決にはなりません。
繰り返しになりますが、資金繰りを悪くしている「本当の原因」は売上減少ではなく、ほかにあるからです。
では、その「本当の原因」とはなんなのか? 次の4つです ↓
- 利益率を下げている
- 行き過ぎた節税をしている
- 必要な借金をしていない
- 資金繰り表をつくっていない
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
資金繰りを悪くする本当の原因4つ
《原因1》利益率を下げている
具体例として。単価 10万円、利益率 30%の商品を売っている会社があるとします。この会社が商品を 10個売れば、利益は 30万円(@10万円 × 30% × 10個)です。
これに対して、もしも利益率が 50%だとしたら。商品が6個売れれば同じ利益 30万円を確保することができます(@10万円 × 50% × 6個)。
ということは、利益率を上げておくことができれば、商品4個の売上減少まで耐えられるわけです。
そんなのは机上のハナシだ! と思われるかもしれませんが。この机上のハナシがわかっていなければ、現実を理解することも変えることもできません。
事実、知らず知らずに利益率をどんどん下げてしまっている、という会社があります。「値下げ」を武器にしている会社です。
値下げは利益率を下げる行為ですから、結果として、売上減少に対する耐性を下げてしまっている、と言えます。
売上数量を求めるあまり、過度に単価を下げて数を売ることに走る。いわゆる「売上至上主義」には、売上数量が落ちればたちまち資金繰りが悪くなる、という危険が潜んでいます。
安くしても売れればやっていける。この考えで安売りや値下げを武器にしている会社は気をつけましょう。
このような会社の場合、おカネが無くなったのは売上が減ったことが原因ではありません。もともと、売上減少に耐えるだけの利益率がなかった。これが本当の原因です。
《原因2》行き過ぎた節税をしている
会社は税金を支払わないとおカネが貯まりません。具体例として、利益 100万円、税率 30%の会社があるとします。
この会社の税金は 30万円です(100万円 × 30%)。税金を支払ったあと、手元に残るおカネは 70万円です。したがって、30万円の税金を支払うことで 70万円のおカネが貯まります。
いっぽうで。オレは(あるいはワタシは)、税金を1円たりとも払いたくないんだ! という社長の場合。
税金を払うくらいなら経費を使う、と 100万円の経費を使ったとしたらどうでしょう? 社長の思惑どおり税金はゼロです。(利益 100万円 − 経費 100万円)× 30% はゼロだから、ですね。
ところが、手元に残るおカネもまたゼロです。利益をすべて経費として使ってしまったから。
よって、経費を増やすことにより税金を減らすような節税を繰り返していると、会社におカネが貯まらない。税金を支払う場合に比べると資金繰りが悪くなります。
なんて、あらためて話をしてみると「あたりまえ」すぎる話なのですが。税金が出るとなると経費を使ってしまう… という会社・社長がどういうわけか多いのも現実です。
もちろん、ムダな税金を払う必要はありませんが、ムダにおカネを減らす節税、行き過ぎた節税ではないかをあわせて考えるようにしましょう。
とくに、決算対策と称した飲食、衝動買い。税金対策と称した保険加入など。おカネを減らし、資金繰りを悪くしている本当の原因はそこにあります。
《原因3》必要な借金をしていない
借金はしなくてもよいのならしないに越したことはありません。けれども、会社・事業を続けるうえでは「必要な借金」もあります。
たとえば。無借金経営とは言いながら、おカネがいつもカツカツで、毎日毎日おカネのやりくりに四苦八苦している会社はどうでしょう?
無借金は極端にしても。おカネを手元に置いておくくらいなら少しでも借金を返済する。とにかく借金を減らすことを一番に考えている会社はどうでしょう?
そのような会社は、ちょっとした売上減少をきっかけに、資金繰りに支障をきたすことになります。
であるならば、借金をしてでも手元におカネを置いておく、という考え方もあるでしょう。資金繰りを支えるために「必要な借金」もある、ということです。
具体的には、日々の運転資金(売掛金 + 在庫 − 買掛金)や設備投資をすべて手持ちのおカネで、とは考えない。銀行から融資を受けることを考えます。
銀行から融資を受けておくことで手元のおカネを十分に増やしておけば、売上が減ったときにもすぐさま資金繰りに窮することは少なくなります。
逆に、ちょっと売上が減ったくらいで資金繰りに窮するのであれば、そもそも手元のおカネが不十分なのです。それが資金繰りを悪くしている本当の原因です。
それからもうひとつ。会社におカネが無く、社長が目の前のおカネのやりくりばかりでは、明日を考える余裕もありません。会社を良くすることができません。
社長には社長にしかできない仕事があり、会社の明日を考えることがまさにそれです。にもかかわらず、おカネのやりくりなど本来しなくても済むものにしばられるのは問題です。
借金を嫌うことはあっても、「必要な借金」まで嫌うことがないように気をつけましょう。
《原因4》資金繰り表をつくっていない
割合で見れば、ほとんどの会社が「資金繰り表」を作成していません。資金繰り表を作成している会社はごくわずかです。
けれども、資金繰り表をつくらなければ、おカネの先行きを見通すこと・イメージすることは困難です。
結果として、多くの会社では資金繰りが場当たり的になり、「売上が減っておカネが足りない…」と慌てることになります。
その点、資金繰り表があれば、「もし売上が〇%減少したら?」をシミュレーションすることができます。どのくらい売上が減ったらおカネが足りなくなるかを知ることに役立ちます。
「資金繰り表」という言葉を知らない社長はほとんどいないはずです。でも、その資金繰り表をつくっている社長もほとんどいない。
この違和感を知ることが大切です。資金繰り表が大事なものであるからこそ、その言葉は時をも超えて広く知られるに至っています。
そんなに大事なものをつくらない(あるいは、つくれない)でいることが、資金繰りを悪くしている本当の原因です。
さらに言えば、毎月の試算表をつくっていない、というのは論外です。自社の状況を把握するにあたり、試算表の存在は最低限。試算表の作成は必須だと言えます。
1年に1回、決算書しかつくっていない。なんてことはありませんか?
試算表は資金繰り表をつくるためのベースにもなるものですから、毎月・速やかにつくるしくみを整えましょう。
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まとめ
資金繰りを悪くする本当の原因4つ、についてお話をしてきました。
おカネが足りない・おカネが無いのは売上が減ったからだ。売上の減少こそが資金繰り悪化の原因だ、という「誤解」には気をつけましょう。
資金繰りを悪くしている「本当の原因」はほかにある。そこに気がつくことが重要です。
- 利益率を下げている
- 行き過ぎた節税をしている
- 必要な借金をしていない
- 資金繰り表をつくっていない