赤字に債務超過… 銀行から融資を受けるのは難しい会社。
それでも融資を受けるために、社長にはなにができるのか? A社の事例をもとにお話していきます。
2期連続赤字に債務超過…それでも銀行融資は受けられる?
赤字や債務超過の状況にある会社が、銀行から融資を受けることは困難です。
たとえば、次の「A社」のような会社はどうでしょう?
直近の決算書は下記のとおり。2期連続減収、2期連続赤字。債務超過に陥っている。
- 売上 6,000万円、社長の役員報酬 800万円、利益 ▲500万円
- 債務超過 1,000万円、社長からの役員借入金 1,000万円
上記のとおり、2期連続の減収(売上減少)、2期連続の赤字。これだけでも銀行融資を受けるのはじゅうぶんに難しい、と言える状況です。
加えて、債務超過(資産より負債のほうが大きい)。実質的に破綻を示す「債務超過」の会社にこれ以上の融資はムリ、というのが銀行の見方です。
それでもA社の社長が「おカネを借りたい、いまを乗り切りたい」のであれば。銀行から融資を受けるために、社長はなにができるのか?
じぶんがA社の社長になったつもりで考えてみましょう。その答えがこちらです ↓
- 役員報酬を減額する
- 役員借入金をアピールする
- 社長個人の収支を開示する
- 社長個人の財産を開示する
- 経営改善計画書をつくる
これら5つのことができたからといって、必ずしも銀行から融資を受けられるわけではありません。
けれども、なにもしなければ間違いなく融資は難しい状況ですから、できることはやってみる。これが重要です。
そこで、赤字・債務超過の会社の社長にできる5つのことについて、このあと順番に確認をしておきましょう。
赤字・債務超過の会社が銀行融資を受けるために社長にできる5つのこと
《できること1》役員報酬を減額する
A社は直近の決算が 500万円の赤字です。そこで「経費削減」のひとつとして、社長の役員報酬を減額することを考えます。
現状、社長の役員報酬は 800万円。これを 500万円減額すれば、ひとまず赤字は解消できます。
もちろん、赤字を解消する方法は「役員報酬の減額」ばかりではありません。他の経費を削減する方法もあれば、売上を増やすという方法もあります。
けれども、それらは「相手」があることです。
たとえば、家賃や人件費を下げたいからと言っても、家主や従業員のことを考えるとそう簡単にはできません。
また、売上を増やすにも、買い手しだいです。売りたいからと言って、そのとおりに売れるわけでもありません。
これに対して、役員報酬の減額は社長の一存で、かつ、確実にできることです。
社長にとって、役員報酬を下げるなど本意ではありませんが。銀行に対して説得力が高い赤字解消方法として検討をしましょう。
《できること2》役員借入金をアピールする
A社は直近の決算が 1,000万円の債務超過(資産よりも負債が大きい)です。いっぽうで、社長からの役員借入金 1,000万円という負債があります。
この「役員借入金」について。会計上は「負債」であることに間違いはありませんが、銀行融資においては「(負債ではなく)資本とみなす」という考え方があります。
つまり、社長が会社からの借入金返済を求めないのであれば、役員借入金と言えども資本金といっしょだよね。という考え方です。
したがって、見た目上は 1,000万円の債務超過ではあるけれど。実質的には役員借入金 1,000万円は資本だと見れば、債務超過を解消できます。
この点を銀行にしっかりアピールするために、「役員借入金」という単独の勘定科目名で貸借対照表に掲載するようにしましょう。
そうはせずに「短期借入金」や「長期借入金」の勘定科目のなかに役員借入金を含めてしまうと、銀行に気づいてもらえない可能性があります。
《できること3》社長個人の収支を開示する
前述した《できること1》《できること2》に付随することとして、社長個人の収支を銀行に開示することが重要です。
《できること1》の役員報酬を減額する場合、銀行としては「ほんとうにその役員報酬で生活できるのか?」と考えます。
A社の事例で言えば、現状 800万円の役員報酬を 300万円まで下げる。これで社長は生活できるのか? ということです。
そこで。たとえば、社長個人に不動産賃貸収入があるのであれば、その情報(確定申告書など)を開示する。
配偶者が他の会社で働いていて給与収入があるのであれば、その情報(源泉徴収票など)を開示する。
必要に応じて、生活費がわかる家計の情報(家計簿など)を開示する。といったことができるでしょう。
また、《できること2》の役員借入金をアピールする場合、銀行は「ほんとうに会社は社長へ返済しなくてよいのか?」と考えます。
たとえば、役員借入金のでどころが消費者金融… というのでは、社長は会社から返済してもらわなければ消費者金融への返済ができません。ゆえに、資本とみなすことはできない。
そうではないことを銀行に説明するためには、やはり社長個人の収支を開示することです。
社長個人の不動産賃貸収入が役員借入金の原資であれば、その情報(確定申告書など)を開示する。
これまでの役員報酬による貯金が役員借入金の原資であれば、その情報(家計簿、預金通帳など)を開示する。
会社が融資を受けるのに、なぜ個人のことまで… と思われるかもしれませんが。個人の情報を開示することも、銀行融資には有効な手段のひとつと覚えておきましょう。
《できること4》社長個人の財産を開示する
社長個人の情報を開示するという点では、前述した「収支」に加えて「財産」もあります。
たとえば、社長個人が現金預金を持っている、不動産を持っているなどの場合。その資産を会社の資産と合算したところで「債務超過かどうか?」を見る、という銀行の考え方があります。
中小企業は、会社と社長が一心同体。A社のように 1,000万円の債務超過だとしても、社長個人に 1,000万円を超える資産があるのであれば債務超過ではない、見てもらうことができるわけです。
社長個人の資産を開示することに抵抗もあるかもしれませんが、会社の債務超過を解消する手段として押さえておきましょう。
なお、注意点として。個人と会社の資産を合算する場合、「負債」も合算をしなければいけません。
たとえば、社長個人に資産 1,000万円、負債 500万円あるというケース。資産 1,000万円だけを合算して、負債は無視をする。これはダメです。
資産だけ合算するという「イイとこ取り」はできない点には気をつけましょう。
《できること5》経営改善計画書をつくる
今後の赤字解消・債務超過解消を説明するために、「経営改善計画書」をつくりましょう。
役員報酬を減額したり、役員借入金をアピールできたとしても、ふたたび赤字・ふたたび債務超過では、銀行も安心して融資ができません。
ですから、「今後はだいじょうぶです」ということを示すために、経営改善計画書をつくります。
これがメンドーだからと、口頭で「がんばります」と済ませる方法もありますが。じぶんがおカネを貸す側だったらどうでしょう?
口頭だけの会社よりも、計画書としてカタチにしてある会社のほうを信用するのではないでしょうか。銀行だって同じです。
もっとも、銀行のために計画書をつくるわけではありません。いちばんは、当然、会社自身のためです。
会社が赤字解消・債務超過解消に向けて、その道筋をより明らかにするために。経営改善計画書をつくることが必要だ、と心得ておきましょう。
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まとめ
赤字・債務超過の会社が銀行融資を受けるために社長にできる5つのこと、についてお話をしてきました。
赤字や債務超過の状況にある会社が、銀行から融資を受けることは困難ですが。それでもまだ社長にできることはあります。押さえておきましょう。
- 役員報酬を減額する
- 役員借入金をアピールする
- 社長個人の収支を開示する
- 社長個人の財産を開示する
- 経営改善計画書をつくる