ウチの会社は、借入が多すぎやしないだろうか… と気になること、ありますよね。
そこで、支払利息でチェックする「借入が多すぎる?」の目安指標についてお話をしていきます。
まだ借りれる?もう借りれない? を支払利息で計る
会社・事業を続けていくうえで、切っても切れない関係にあるものとして「借入」が挙げられます。
とくに「銀行からの融資」。自己資金が不足しがちな中小企業にとっては、だいじな資金調達手段です。
とはいえ、「借入が多すぎる」というのでは問題があります。身の丈を超えた借金で首が回らなくなるのは、ヒトも会社もいっしょです。
では、借入が多すぎるとは、どういう状況を言うのか?
借入をしたことにより支払う利息(いわゆる支払利息)の金額から、「借入が多すぎる?」をチェックしてみましょう。
具体的には、支払利息を計算式に含む、次の3つの指標を使います ↓
- 売上高支払利息率
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
- 平均借入金利
上記の3つは、融資をする側の銀行も目安にしている指標です。まだ貸せそうか? それとも、もう貸せそうもないか?
これは融資を受ける側からすれば、まだ借りれるか? もう借りられないか? ということでもあります。
ですから、銀行がどういう視点でこれらの指標を見ているかもあわせて覚えておくとよいでしょう。
それではこのあと、3つの指標について順番に見ていきます。
借入が多すぎるかどうかを本質的にはかる指標。それは「債務償還年数」です。算式で言うと「債務償還年数=借入金残高 ÷(税引後利益+減価償却費)」。
いまの利益ペースだと何年で借入金を返済できるかを考える指標です。この指標の値が高いほど借り過ぎであり、10(年)を超えると危険だとされます。
それはそれとして。銀行も含めて、支払利息の金額から借り過ぎかどうかをはかることもある。という視点で、本記事の指標も押さえておきましょう。
支払利息でチェックする「借入が多すぎる?」の目安指標
《指標1》売上高支払利息率
売上高支払利息率 = 支払利息 ÷ 売上高
売上高支払利息率の名のとおり、売上高に対する支払利息の比率をあらわす指標です。
借入をするのに「タダ(無利息)」ということはなく、おカネを貸してくれた相手に利息を支払わなければいけない。これは借入のデメリットでもあります。
その利息の支払いが多すぎれば、借入もまた多すぎると言えるだろう。そこで、支払利息が多いかどうかを、売上高との対比で見ているわけです。
なお、利息の額は金利の高低に左右されます。よって、高い金利で借りれば売上高支払利息率も高くなり、低い金利で借りれば売上高支払利息率も低くなるのは言うまでもありません。
ただ、銀行から借りること(高利貸しからは借りていない)を前提にすれば、売上高支払利息率は「1%超」が借入が多すぎるの目安です。
売上高支払利息率が1%以下であれば借入が多すぎるとは言えない。1%を超えるようであれば借入が多すぎる。そのような見方になります。
「1%超」の理由として、次の具体例を見てみましょう ↓
【問】次のA社の「売上高支払利息率」を計算しなさい
- 年間売上高 5,000万円
- 借入金残高 2,500万円、金利 2%
↓
【答】売上高支払利息率 = (2,500万円 × 2%)÷ 5,000万円 = 1%
いまの時代、銀行から借入をするのに2%という金利が低すぎる、ということではないでしょう。
その2%の金利とした場合に、売上高支払利息率がちょうど1%になるのは、「年間売上高の半分の借入金残高がある」ときになります。
言い換えると、年間売上高の半分を超える借入金残高があると、売上高支払利息率は1%を超えてしまいます(金利が2%の場合)。
ところで、「借入金月商倍率(=借入金残高 ÷ 平均月商)」という指標があり、借入金残高が平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の6ヶ月分を超えると借入が多すぎる、と銀行は目安にしています。
つまり、借入金残高が年間売上高の半分を超えるのは貸し過ぎ。これ以上貸すのは危険だ、と銀行は考えるわけです。
この点で、A社の「借入金残高が年間売上高の半分」という状況は、売上高支払利息率1%で見ると「ギリギリ」です。
いっぽうで、借入金月商倍率 6ヶ月で見ても「ギリギリ」だという点で共通しており、売上高支払利息率 1%超という目安は、なるほど合点がいくものと理解ができるところでしょう。
《指標2》インタレスト・カバレッジ・レシオ
インタレスト・カバレッジ・レシオ = 営業利益 ÷ 支払利息
聞き慣れないうちは、なかなか計算式を思い出すことができないネーミングであるインタレスト・カバレッジ・レシオ。
計算式自体はカンタンで、営業利益が支払利息の何倍あるか? です。
「営業利益」は、損益計算書に掲載される数ある利益(売上総利益、経常利益など)のなかでも、会社の「本業の収益力」をあらわす利益です。
なお、借入に対する利息は、本業の収益力である「営業利益」から払うものであり、算式で言うと「営業利益 > 支払利息」であるべき、とされます。
逆に、「営業利益 < 支払利息」となれば。本業の収益力に見合わないほど借入をしすぎている、と考えることになります。
たとえば、営業利益が 500万円、支払利息が 500万円という場合。「営業利益 = 支払利息」ですから、ギリギリです。営業利益で利息がギリギリ払える。
このギリギリ状態をインタレスト・カバレッジ・レシオで言うと、「1倍」になります(営業利益 500万円 ÷ 支払利息 500万円)。
では、営業利益 500万円、支払利息 600万円なら? アウトですよね。営業利益では支払利息をまかなえていませんので。このような状態のインタレスト・カバレッジ・レシオは「1倍未満」になります。
したがって、インタレスト・カバレッジ・レシオは「1倍未満」が借入が多すぎるの目安です。1倍未満の状況が続くようであれば、銀行としても融資をしかねるところでしょう。
ちなみに。業種にもよりますが、インタレスト・カバレッジ・レシオは2倍以上の「余裕」は欲しいところです。
《指標3》平均借入金利
平均借入金利 = 支払利息 ÷ {(期首借入金残高 + 期末借入金残高)÷ 2}
この指標は、その会社の「金利がどれくらいか?」をあらわします。
上記の計算式後半、「(期首借入金残高 + 期末借入金残高)÷ 2」は、借入金残高は新規借入・返済で変動するため、平均値をとろうとしているものです。
この「金利がどれくらいか?」をあらわす平均借入金利の値から、「ある種」の借入が多すぎないか?をあぶりだすことができます。
それは、街金やノンバンクなど「高利貸し」からの借入です。
高利貸しの金利は高いものですから、そのような借入がある場合には、平均借入金利の値が「一般的な銀行融資の金利」に比べると大きくなります。
また、高利貸しからの借入金残高は帳簿に載せず、支払利息だけ帳簿に載せるケースもあり、この場合にはますます平均借入金利の値は大きくなります。
ですから銀行などは、平均借入金利が高い会社について、「他の銀行からは借りることができず、どこか高利貸しから借りているんじゃなかろうか?」という見方をするわけです。
銀行の見方について、さらに言えば。銀行は、平均借入金利が高い場合には、「粉飾決算」も疑います。どういうことかと言うと、
粉飾決算の手法として、借入金の残高を実際よりも少なく見せようとする、というものがあります。いっぽうで、支払利息はそのまんま。当然、平均借入金利は高くなります。
銀行はそのような見方もしている、ということは理解をしておくとよいでしょう。
なお、期末近くに大きく返済したり、大きく借り入れたりすると、支払利息とのバランスが崩れます(期首と期末の借入金残高を2で割っただけでは平均値をあらわさなくなるから)。
この場合、なにも「悪いこと」をしていなくても、平均借入金利はアヤシゲな値になることも覚えておきましょう。銀行への事情説明が求められるところです。
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まとめ
支払利息でチェックする「借入が多すぎる?」の目安指標についてお話をしてきました。
銀行からの借入は、自己資金が不足しがちな中小企業にとっては、だいじな資金調達手段です。とはいえ、「借入が多すぎる」というのでは問題があります。
借入が多すぎないかをチェックするときの目安として、支払利息を使った指標を覚えておきましょう。おカネを貸す側の銀行も見ている指標です。
- 売上高支払利息率
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
- 平均借入利率