「創業融資は受けません」
たしかに、それも選択肢のひとつです。でも、その理由はだいじょうぶですか?
ということで、「創業融資は受けない」と言う人の間違い理由と正しい理由についてお話をしていきます。
創業融資を受けるも受けないもよし、でも理由はだいじ。
会社・事業をはじめたときの融資、いわゆる「創業融資」について。
わたしは、創業されるという方にお会いしたときには必ず、「創業融資は受けないのですか?」とお声掛けをすることにしています。
これに対して、「創業融資は受けません」と答えられる方もいるわけですが。その理由までお聞きをすると、実は「間違えている」というケースが少なくありません。
そこで。
「創業融資は受けない」と言う人の間違い理由について、それぞれ「なぜ間違いだと言えるのか」をお話していきます。
おもな間違い理由は、次の4つです ↓
- とりあえず自己資金だけでやりたいから
- おカネがあると使ってしまうから
- 必要になったときに借りればいいから
- 手続き・準備などいろいろメンドーだから
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
また、これら「間違い理由」についてお話をしたあとに、「正しい理由」についてもお話をしていきます。
「創業融資は受けない」と言う人の間違い理由
「創業融資は受けない」と言う人が挙げる「間違い理由」について。そのどこに間違いがあるのかを確認してみましょう。
《間違い理由1》とりあえず自己資金だけでやりたいから
間違い理由のなかでも、もっとも多く見聞きするのがこれです。
とりあえず自己資金だけでやってみたい、というハナシ。
ところが。結局、自己資金だけでは足りずに資金繰りで大変な思いをする例は枚挙にいとまがありません。
ではなぜ、自己資金だけでは足りなくなるのか?
それは、「創業後の現実」と「創業前の想定」とを比べたときに、現実のほうが厳しい、というケースが圧倒的に多いからです。
想定では「これだけおカネがあれば足りる」と思っていても、現実はそれを超えてくる。おカネが足りなくなる。
それを見込んで、厳しめの想定をしていてもなお、やはりおカネが足りなくなる。不思議ですが、そういうことがとても多いのが現実なのです。
つまり、創業前に立てられる計画は、多かれ少なかれ「バラ色」的要素が含まれるものであり、多かれ少なかれ「甘く」つくられる。たとえ、どんなに気をつけていても。
これを理解して、創業時にはできるだけじぶんのおカネを温存しておくことが大切です。さいごの切り札として、使えるおカネを残しておく。
この点で、創業融資を受けることができれば、じぶんのおカネを温存できます。そのおカネがあれば、
「あともう少しおカネがあれば乗り切れたかもしれないのに、なんとかなったのかもしれないのに… 」というような、あと一歩の状況に持ちこたえることができる可能性が高まります。
あと一歩であきらめる後悔をしなくて済むように、創業融資を受けて、できるだけのおカネを準備することを考えておきましょう。
《間違い理由2》おカネがあると使ってしまうから
いましがた、創業融資を受けることで「じぶんのおカネを温存する」という話をしました。
この話をすると、「おカネがあると思うとついつい使いたくなるんだよねぇ」と返されることがあります。
だから、創業融資でおカネを借りないほうがいいのだ、と。
それは違います。融資を受けるかどうかと、融資を受けるとおカネを使ってしまうこととはまったく別の問題です。
おカネがあると思うと使ってしまうヒトは、そのおカネの出どころが融資だろうが売上だろうが使ってしまいます。
融資を受けるからおカネを使ってしまうわけではありません。ゆえに、問題をごっちゃにしているという点で間違いです。
とはいえ、「おカネがあると使いたくなる」のはありうることです。そこは「しくみ」で対策しましょうよ、という提案をしておきます。
その「しくみ」とは、次の3つです ↓
- 正味のおカネを見える化する
- 定期預金でおカネを固定する
- 予算を決める・計画を立てる
いずれの対策も、わたし自身、そしてお客さまが実践をして効果をあげているものとしておすすめです。くわしくはこちらの記事で ↓
《間違い理由3》必要になったときに借りればいいから
会社・事業を続けるのにおカネが必要なのはよくわかる。だから、おカネが必要になったら借りればいい。
だから、創業融資はとりあえずいらない。と、言うヒトがいます。
これも間違いです。なぜなら、おカネが必要になったときに、必ずしもおカネを借りることはできないからです。
むしろ、おカネが必要なとき、おカネを借りたいときほど借りられないのが銀行融資です。
言うまでもありませんが、銀行は「ビジネス」としておカネを貸しています。慈善事業で貸しているのではありません。
ですから、銀行は貸したおカネを返してくれる相手にのみ融資をします。
では、「おカネを返してくれる相手」とは? たとえば、事業で黒字が出ているとか、おカネを持っているとか。そういう相手です。
これに対して、事業が赤字とか、おカネが全然無い、という場合はどうでしょう。そのような相手におカネを貸すのは不安ですよね。
創業後の現実が、創業前の想定よりも厳しいことは前述したとおりです。創業後には、しばらくのあいだ、また想定を超えて赤字が続きます。資金不足が続きます。
赤字なうえに、おカネが無い。銀行から融資を受けることは困難です。おカネを借りたくても借りられないのです。
いっぽうで。創業融資は、一定の「自己資金」と「経歴」、加えて「ムリのない事業計画」があれば、おカネを借りることができます。
借りられるときに借りておく。創業時の選択肢として覚えておきましょう。
《間違い理由4》手続き・準備などいろいろメンドーだから
ついさきほど、創業融資は「ムリのない事業計画」があれば、という話をしました。
じ、事業計画? メンドーだ… だったら、創業融資は受けなくていいや。
と言うのであれば、それも間違いです。
事業計画(創業計画書)をつくるのがメンドーだとしたら、いずれ資金不足になったときの対応は「超メンドー」だからです。
資金不足になってからの銀行融資が困難なのは前述しました。
そのときに銀行の理解を得るための各種書類づくりをしたり、あちこちの銀行を奔走したり。もちろん、目の前の仕事もしなければいけない…
創業計画書をつくるメンドーと、資金不足に対応するメンドーと、どっちがメンドーかと言えば明らかに後者です。しかも、そのメンドーはしなくても済んだかもしれないメンドーでもあります。
創業融資を受けることで、できるだけ多くのおカネを準備していれば、そこまでひどい資金不足は回避できたかもしれません。
であるならば、はじめから創業融資を受けておくほうがよいのでは? という話をしています。
そもそも、事業計画をつくることから逃げてはいけません。もし、創業融資を受けないにしても、事業計画はつくるべきです。
「計画」という目安があれば、現実とのズレを具体的に「数字」で知ることができます。ズレを軌道修正するときにも、具体的な「数字」で動くことができます。
そう考えると。創業計画書をつくるのは、こらから先、事業計画をつくり続けていくにあたってのよいきっかけになるものです。
必要なメンドーまでを惜しまないようにしましょう。
「創業融資は受けない」と言う人の正しい理由
ここまで、「創業融資は受けない」と言う人の「間違い理由」のお話をしてきました。
これに対して、「正しい理由」を挙げてみることにします。
それなら創業融資を受けなくてもいいよね、という理由。それは、次の2つです ↓
- おカネがじゅうぶんにあるから
- 借りるくらいなら会社・事業をやめるから
これらについて、このあと順番に見ていきましょう。
《正しい理由1》おカネがじゅうぶんにあるから
これまでずっと、「創業後はおカネが足りなくなるから融資を受けておいたほうがいい」との話をしてきました。
ただしこれは、「じぶんのおカネ(自己資金)は限られている」ということが前提です。
ところが。「うなるほどのおカネを持っている」という人もいるでしょう。
そのように「おカネがじゅうぶんにある」のであれば、おカネが足りなくなることはないのですから、創業融資を受ける必要もありません。
したがって、「おカネがじゅうぶんにあるから」というのは、創業融資を受けないときの「正しい理由」になります。
とはいえ、うなるほどのおカネを持っている人などそうそういないのであり、「じぶんのおカネ(自己資金)は限られている」という人がほとんどです。
ゆえに、実際には見聞きすることがほとんどない理由だと言えます。
《正しい理由2》借りるくらいなら会社・事業をやめるから
おカネはなにがあっても借りない。おカネを借りてまで会社・事業をやろうとは考えていない。
これは、ひとつの考え方です。
おカネを借りるくらいだったら、会社をつぶしてもかまわない。そこまで言うのであれば「信念」であり「信条」ですから、それに対して他人がとやかく言うことではありません。
しかしながら、融資についてそこまでの覚悟を持っている人もまた少ないものです。
その証拠に、「これから先、絶対に融資は受けないのですね?」とお聞きすると、「そんなことはない」との回答がほとんどになります。
だったら、いま創業融資を受けましょう。というのがわたしの考えです。
創業融資が、その後の融資よりも受けやすいという話もさきほどしました。いずれ融資を受けるかもしれないのであれば、受けやすいときに受けておいたほうがいいはずです。
借りたいときには借りられない。借りたいときほど借りられない。それが銀行融資だということを絶対に忘れてはいけません。
まとめ
「創業融資は受けない」と言う人の間違い理由と正しい理由についてお話をしてきました。
創業融資を受けるか・受けないかは、もちろんおのおのの考えたであり、選択は自由です。
けれども、間違えた理由により、「創業融資は受けない」ということがないように。結果として、あとで困ることがないように。
間違い理由と正しい理由を押さえておきましょう。
- とりあえず自己資金だけでやりたいから
- おカネがあると使ってしまうから
- 必要になったときに借りればいいから
- 手続き・準備などいろいろメンドーだから