「借金で会社がつぶれる」というハナシを見聞きすることがありますが。それはウソだ、と言える理由についてお話をしていきます。
借金そのものによってつぶれる会社は無い
こんなことを見聞きすることがあります ↓
「借金で会社がつぶれてしまった」「借金で会社をつぶしてしまった」
借金こそが会社をつぶしてしまった原因だ、というハナシではありますが。それはウソです。会社が「借金そのもの」を原因につぶれることはありません(※下注を参照のこと)。
えっ、そうなの? と思われるかもですが、そうなのです。
にもかかわらず、ウソを正しいものと勘違いをしていると、「過剰に借金を恐れる」ことになりかねません。むしろ、会社や事業を持続・成長させるためには「必要な借金」もあるのですから気をつけましょう。
というわけで、「借金で会社がつぶれる」はウソだと言える理由についてお話をしていきます。理由は次の3つです ↓
- 借りたおカネをムダ使いしているから
- 返済額>税引後利益になるから
- 借りる金額が足りていないから
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「借金で会社がつぶれる」はウソだと言える3つの理由
《理由1》借りたおカネをムダ使いしているから
どんな理由でおカネを借りるにしろ、「借金だけが増える」ということはありません。
借金が増えるのと同じ分だけ、おカネも増えています。借りてすぐにモノを買うなどしておカネを使うことはあるかもしれませんが、それもおカネが増えたからこそできることです。
いずれにせよ。借金をすると、借金だけではなくおカネも増えます。よって、増えたおカネがある限り、借金の返済ができないということはないはずです。
(もちろん、利息の支払いはありますが。いまは低金利の時代ですから、元金の返済ほどには金額的なインパクトはないでしょう)
ところがどういうわけか、「借金をする」ことについて、まるで借金だけが増えるかのようなハナシになることが少なくありません。
よく見聞きするのは「借金が増えると返済ができなくなってタイヘンだ」というものです。けれども、借金が増えればおカネも増えるのはさきほど言ったとおりです。
「借金が増えると返済ができなくなる」などというのは、なんともおかしな解釈だと気がつかなければいけません。
それでも借金をしている会社がつぶれるのはなぜなのか?
それは、借りたおカネをムダ使いしているからです。借りたときにはあったはずのおカネを使ってしまったからです。
たとえば。借りたおカネであるにもかかわらず「おカネがある」と勘違いして散財してしまったとか。設備投資をしたが考えていたような成果をあげることができなかったとか。
「ムダ使い」との自覚があるにせよ、ないにせよ。結果が「ムダ使い」ということであれば、借りたおカネを失くすのですから返済は厳しくなります。
つまり。借りたおカネをムダ使いするから、その結果として、返済が厳しくなって会社がつぶれるのです。決して、借金そのもので会社がつぶれるのではありません。
《理由2》返済額>税引後利益になるから
いましがた、借りたおカネがある限り、返済できなくなるようなことはない、との話をしました。
とはいえ。借りたおカネを使うことだってあるだろう。そもそも、使う理由があって借りることのほうが多いはずだ! というのであれば、そのとおりです。
では、その場合の「返済原資(=返済をするための元手)」はなにになるのか?
答えは「税引後利益」です。税金を支払ったあとの残りをもって、借金の返済をすることになります。
言い方を変えると、税引後利益が無ければ返済はできない。ゆえに、税引後利益が無いのなら借金をしてはいけない、ということです。
(いちおうの確認ですが、借りたおカネを使わずにいる限りは、税引後利益が無くてもだいじょうぶです。借りたおカネで返済をすればよいだけだから)
したがって、「返済額 < 税引後利益」という状況が望まれるわけですが、これが逆転してしまっている会社があります。「返済額 > 税引後利益」です。
そうなると、会社は手元の現金預金を取り崩して返済をしなければならず、その状況が続くといずれ現金預金も失くなり破綻します。
これを見て「借金で会社がつぶれた」などというのは間違いだ、と気が付かなければいけません。
借金をしたこと自体が問題なのではなく、「返済額 > 税引後利益」という状況が問題なのです。
この点で。借金をするときには、ちゃんと「返済額 < 税引後利益」だったのに… という会社があります。いっぽうで、実は借金をするときから「返済額 > 税引後利益」だった、というお粗末な会社もあります。
言うまでもありませんが、お粗末はいけません。借金をするのであれば、いま現在も、そしてこれから先の将来も「返済額 < 税引後利益」の状態を前提にすることが大切です。
というわけで。原因はどうあれ「返済額 > 税引後利益」になるから、会社がつぶれるのです。決して、借金そのもので会社がつぶれるのではありません。
厳密に言うと、返済原資は「税引後利益」だけではなく、そこに「減価償却費」が加わります。
減価償却費はその時点ではおカネの支出を伴わない(減価償却費の対象となる資産を買ったときにおカネを支出している)費用であるため、返済原資として足し戻しているのです。
《理由3》借りる金額が足りていないから
さきほど、「返済額 > 税引後利益」が続くと、手元の現金預金が失くなり破綻する、と言いました。
とは言うけれど。長く会社・事業を続けていれば、調子が悪いときだってあるだろう。税引後利益が減ってしまう、あるいは、税金を払うどころか赤字になってしまうことだってあるだろう。そのとおりです。
では、どうしたらよいのか?
そのときに備えて借金をしておくことです。不測の事態を乗り切るためのおカネを「あらかじめ借りておく」のです。
これができていないと、「返済額 > 税引後利益」の状況に耐えきれず、会社はつぶれてしまいます。
それなら、そのときに借りればいいんじゃないの? と、思われるかもしれませんが。それは間違いです。
銀行(に関して言えば)は、「返済額 > 税引後利益」の会社には融資を嫌がります。言うまでもなく、返済できそうもないからですよね。
だから、「返済額 > 税引後利益」になる前、つまり、「返済額 < 税引後利益」で会社の状況が良いときに借りておくのです。
このような「備え」がおろそかであるがためにつぶれてしまう会社があります。
これは、借りる金額が足りていないからと言うべきものであり、決して、借金そのもので会社がつぶれたのではありません。
借りたいときには借りられないこと、借りられるときに借りておくこと、を覚えておきましょう。
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まとめ
「借金で会社がつぶれてしまった」「借金で会社をつぶしてしまった」というようなハナシを見聞きすることがあります。
けれども、それはウソであることを理解しておきましょう。正しいものと勘違いしていると、「過剰に借金を恐れる」ことになりかねません。
会社や事業を持続・成長させるためには「必要な借金」まで恐れることがないように、気をつけるべきところです。
- 借りたおカネをムダ使いしているから
- 返済額>税引後利益になるから
- 借りる金額が足りていないから