会社・事業における銀行融資について。銀行担当者を困らせてしまいそうな社長の何気ない一言とは? のお話をしていきます。
つい口にした一言が意外と困りもの。
わたしは税理士として、銀行融資のお手伝いをしています。そのなかで、お客さまである社長と、銀行担当者との面談の場に同席させていただくことがあるのですが。
これは銀行担当者が困っているなぁ。あるいは、銀行担当者を困らせてしまいそうだなぁ。と、感じる「社長の一言」があります。社長からすれば何気ない一言かもしれませんが、言われた銀行は困ってしまう…
円滑なお付き合いをするためには、銀行に対して「言ってはいけないこと」「言わないほうがいいこと」はあるものです。たとえば、こちらです ↓
- あのとき融資を断ったおたくの銀行はひどい!
- おたくの銀行と取引をしている〇〇社の調子はどうなの?
- どこの大学を出ているの?
- じぶんの用事が済むとすぐに帰ってしまうよね…
- これ以上、取引銀行を増やすつもりはない!
言ってしまったこと、言ってしまいそうなことはありませんか? これらの一言がなぜ銀行担当者を困らせるのか? なぜ言ってはいけないのか?
そのあたりについて、このあと順番に見ていきましょう。
銀行担当者を困らせてしまいそうな社長の何気ない一言
あのとき融資を断ったおたくの銀行はひどい!
以前に融資を断られて困ったことがある社長が口にする一言です。
たしかに、気持ちはわかります。また、なにか理不尽なことがあったのかもしれません。けれども、そのときはそのとき、いまはいまです。
実際、当時の担当者と現在の担当者とは違う、すでに替わっている、というケースも多くあります。担当者からしてみれば、「わたしではなかったのだけれど…」との気持ちもあるでしょう。
なにより、「あのとき断られた」のには、断られた理由があるはずです。たとえば、よくあるのは「赤字」や「債務超過」のていどが大きかった、とか。
この点で。銀行は「おカネを貸して返してもらう」のが仕事ですから、赤字や債務超過で「危険な会社」に融資をするわけにはいきません。
貸し出すおカネの原資は預金者からの預金です。貸しても返してもらえなければ、預金の引出しに支障をきたします。それでは預金者に対して申し開きができません。
「銀行は雨が降ると傘を取り上げる」などと言われますが、これは銀行の仕事を考えれば「当然」です。これを非難するということは、銀行の理屈・銀行融資の理屈をわかっていない人だ、と見られてしまいます。
銀行にとってはなんともお付き合いしづらい相手になるところですから、気をつけましょう。やるべきは非難ではなく、銀行が融資をできるように「利益をきちんと出す」ことです。
おたくの銀行と取引をしている〇〇社の調子はどうなの?
たとえば、自社の競争相手について。ようすを知りたいなぁ、ということはあるでしょう。そんなときに社長の口から聞かれる一言です。
とはいえ。もちろん(というべきでしょう)、銀行としてはおいそれと答えられるものではありません。守秘義務やらコンプライアンスやらの問題になるからです。
したがって、もし万が一、銀行担当者が競争相手について知っている情報を答えるようなことがあれば大問題、ということになります。
「長い付き合いなんだから、そこをなんとか」などと無理強いをしないように気をつけましょう。
なお、個別具体的な〇〇社の情報はムリでも、「同業他社の傾向」や「地域の傾向」などの総体的な情報については回答が期待できるところです。銀行も、そのような情報を社長が知りたがっていることは承知しています。
銀行が持っている多量かつ貴重な情報の提供を受ける。これは、銀行とお付き合いをするメリットのひとつです。積極的に活用していきましょう。
どこの大学を出ているの?
ありがちな会話ではありますが。いわゆる「学歴」は個人情報にあたりますので、うかつにたずねないのが無難です。聞かれた本人が言いたくない場合には困らせてしまいます。
また、目の前にいる担当者本人のことではなく、その場にいない支店長の出身大学をたずねるケース。聞かれた担当者としては、じぶんのことではないだけに、やはり困ってしまうでしょう。
似たようなこととして。政治のこと、宗教のことなども話題にしない。これらは「対銀行」に限らず、ビジネス一般に共通していることでもあります。
銀行は仕事柄、「お客さまとの癒着」には厳重な注意を払うものです。ゆえに、個人情報のやり取りなど立ち入った関係を良しとしない文化があります。
銀行担当者とのコミュニケーションを深める、仲を深めるのはよいことですが、その方法や距離感には注意が必要です。
じぶんの用事が済むとすぐに帰ってしまうよね…
要は「クレーム」ですね。こっちの話は聞きもしないで帰ってしまうじゃないか、と。
たしかに、なかには「必要なセールスだけをしに来る」という銀行担当者もいるようです。ただ、それとは別に、銀行担当者も忙しいという現実もあります。
昔よりも人手が少ないなかで与えられたノルマをこなすには、効率良く仕事をしなければいけません。用事が済んだら帰るのはしかたない。
そう、こちらの話も聞かずに「用事が済んだ」と思われていることに問題があります。銀行担当者も悪いかもしれないけれど、銀行担当者を帰らせてしまっている会社も悪い、ということです。
では、どうしたらよいのか? 具体的には、試算表を定期的に提示するのがおすすめです。
銀行には、「融資先の状況をきちんと把握しておきたい」との思いがありますから、タイムリーな状況が記された試算表には価値があります。
ですから、「試算表を見せながら説明をして、今後の見通しを説明する」と言えば、銀行担当者も帰らずに話を聞いてくれるはずです。結果として、融資を受けやすくもなりますから、ぜひやってみましょう。
ちなみに。もし、試算表に見向きもしないとすると。その銀行からは完全に見限られている(融資はしない方針である)、というのがひとつ。自社の業績が悪い会社などで起きうることです。
それからもうひとつは、その銀行担当者の資質に問題がある。自社の業績は悪くなくても、銀行担当者が試算表の価値を理解していない、お客さまを理解しようとしていない場合に起きうることです。
いずれのケースか、見極めましょう。
これ以上、取引銀行を増やすつもりはない!
銀行はじぶんの銀行を含めて、お客さまが「複数の銀行」と取引をするのを歓迎するところがあります。
ここで言う「取引」とは「融資」なのですが。お客さまが、ひとつの銀行からだけ融資を受けることにはリスクがあるからです。
もし、たったひとつの取引銀行から融資を断られてしまえば、その会社はつぶれてしまうかもしれません。また、融資ができるとしても、ひとつの銀行でできる融資には限りがあります。
これが複数となれば、どこかの銀行は融資をしてくれるかもしれないし、融資をするときにも他の銀行と分担ができます。銀行としては、リスク分散ができる。
そこで、銀行担当者が「他の銀行ともお付き合いをするといいんじゃないですか」的なことを言ったりもするわけですが。
それに対して、社長が「これ以上、取引銀行を増やすつもりはない!」と返してしまうことがあります。
社長としては、銀行を増やせばその分、お付き合い(事務手続き含めて)が面倒になるとの思いもあるでしょう。
けれども前述した「リスク分散」は会社のためでもあります。融資を受けるにあたって取引銀行がたったひとつでは、借りられなかったときに困るのは会社です。
その取引銀行の経営方針が変わったり、事業再編で他の銀行に飲み込まれてしまったりで融資姿勢が変わる可能性はじゅうぶんにあります。複数の銀行と取引をしておくことが大切です。
また、すでに複数の銀行と取引をしているという場合でも。自社に合った銀行とお付き合いをしているか?には気をつけましょう。
たとえば、小規模零細企業であれば、密にお付き合いをすべきは信用金庫です。にもかかわらず、都市銀行や地方銀行とばかりお付き合いをしている。これはおすすめできません。詳しくはこちらの記事を ↓
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まとめ
銀行から融資を受けようとする・受けていると、社長は銀行担当者と面談をする機会があります。
その面談で、社長が何気なく口にした一言に、銀行担当者は困ってしまうことがあるようです。
円滑なお付き合いをするためには、銀行に対して「言ってはいけないこと」「言わないほうがいいこと」もある、と心得ておくとよいでしょう。
- あのとき融資を断ったおたくの銀行はひどい!
- おたくの銀行と取引をしている〇〇社の調子はどうなの?
- どこの大学を出ているの?
- じぶんの用事が済むとすぐに帰ってしまうよね…
- これ以上、取引銀行を増やすつもりはない!