会社にとって気がかりな「銀行借入が多すぎる」を知るために役立つ指標を5つ、ご紹介していきます。
借入が多すぎる、のはイヤだから。
ウチって、銀行からの借入が多すぎる? というのは、会社にとって気がかりなことのひとつと言えるでしょう。
銀行融資のお手伝いをしていると、実際にそのような質問をされることもあります。
銀行もまた、借入が多すぎる会社を嫌うのであり。借入が多すぎるとなれば、当然、会社は融資を受けにくくなります。困ります。
したがって、「自社の銀行借入は多すぎないか?」は、会社が把握をしておくべきところです。
そこで。「銀行借入が多すぎる」を知るために役立つ指標について、お話をしていきます。具体的には、次の5つの指標です ↓
- 借入金月商倍率
- 債務償還年数
- 借入金依存度
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
- 借入の口数
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「銀行借入が多すぎる」を知るのに役立つ指標5選
《指標1》借入金月商倍率
借入金月商倍率(倍)=銀行借入金の残高 ÷ 平均月商
まず1つめの指標は「借入金月商倍率」。その算式は上記のとおりです。
この指標が意味するところは「銀行借入金の残高は、平均月商の何倍あるか?」になります。とてもわかりやすい。
ちなみに、平均月商とは。「年間売上高 ÷ 12ヶ月」の算式で計算される「毎月の平均売上高」です。
で、その借入金月商倍率が「6倍」を超えると借入が多すぎる、との見方になります。言い換えると、年間売上高の半分の借入金がある。これは借りすぎだ、ということです。
いっぽうで、安全圏の目安は「3倍」くらい。これも覚えておくと良いでしょう。
借入金もあるが、現金預金もあるという場合。その借入金はいつでも返せると考えれば、借入金月商倍率を「(銀行借入金の残高 − 現金預金)÷ 平均月商」という見方もできます。
《指標2》債務償還年数
債務償還年数(年)=銀行借入金の残高 ÷ (税引後利益 + 減価償却費)
2つめの指標は「債務償還年数」。その算式は上記のとおりです。
減価償却費をひとまず無視してみると。この指標が意味するところは「銀行借入金の残高は、税引後利益の何年分か?」になります。
言い換えると。いまある銀行借入金を、いまの利益ペースなら何年で返せるのか? です。
この債務償還年数が「10年」を超えると借入が多すぎる、との見方になります。銀行も融資可否の判断にしている重要指標ですから覚えおきましょう。10年以内には返してくれよ、ということです。
債務償還年数の算式から知るべきだいじなこととして、「借入をするには利益が必要。利益が多いほど借入ができる」が挙げられます。
利益を減らして節税したいけれどおカネも借りたい。これは理屈のとおらないワガママだ、と理解をしておきましょう。
なお、算式中で「減価償却費を足し算」しているのは、「減価償却費がおカネの支出を伴わない費用だから」です。ちょっと難しい会計の論点になります。
借入金もあるが、現金預金もあるという場合。その借入金はいつでも返せると考えれば、債務償還年数を「(銀行借入金の残高 − 現金預金)÷ (税引後利益 + 減価償却費)」という見方もできます。
《指標3》借入金依存度
借入金依存度(%)= 銀行借入金の残高 ÷ 総資産
3つめの指標は「借入金依存度」。その算式は上記のとおりです。
この指標が意味するところは「銀行借入金の残高は、すべての資産(総資産)のうちどれほどの割合か?」になります。
総資産とは、貸借対照表で言うと。資産の部の合計額、あるいは、負債の部と純資産の部の合計額です。
こうして計算される借入金依存度が「50%」を超えると借入が多すぎる、との見方になります。
多額の設備投資が必要な製造業などは、他の業種に比べると借入が必要。などの個別事情はありますが。おおむね、総資産の半分を超えるような借入は多すぎる、と覚えておくと良いでしょう。
借入金依存度を下げるにあたっては、「借入金を減らす」という方法がひとつ。これに対して「自己資本(純資産)を増やす」という方法も忘れてはいけません。
毎年の利益を増やすことができれば、自己資本(純資産)も増えます。結果として、総資産に対する借入金の割合(借入金依存度)は下がります。
借入金を減らすことよりもむしろ、利益を増やすことを考えましょう。
《指標4》インタレスト・カバレッジ・レシオ
インタレスト・カバレッジ・レシオ = 営業利益 ÷ 支払利息
4つめの指標は「インタレスト・カバレッジ・レシオ」。その算式は上記のとおりです。指標の名称も覚えにくいので、算式も思い出しにくい…
それはそれとして。この指標が意味するところは「営業利益は支払利息の何倍あるか?」になります。
損益計算書を見ると、支払利息のポジションは「営業利益の下」です。つまり、支払利息は営業利益からまかなうべきものであり、営業利益よりも支払利息が大きい場合には赤字になるということです。
この点で、インタレスト・カバレッジ・レシオが「1」未満になると借入が多すぎる、との見方になります。
1未満ということは、営業利益よりも支払利息のほうが大きいということ。営業利益ではまかなえような支払利息なら、それは借入が多すぎるからだ。と、見るわけです。
理想で言えば、インタレスト・カバレッジ・レシオは「2」以上が目安になります。支払利息の2倍以上の営業利益があるのが望ましい。あわせて覚えおきましょう。
《指標5》借入の口数
5つめの指標は「借入の口数」。これまでの指標とはちょっと毛色がちがう指標です。
借入の口数、文字どおり、銀行からの借入の口数がいくつかるか? という指標になります。
結論として、借入の口数が「10本ていど」になると借入が多すぎる、との見方になります。
借入の口数が多いということは、それだけたくさんの口数の返済があるということ。毎月、多額の返済をしていると想像できる。
銀行もまた、借入の口数を見ているものです。借入の口数が多いと、資金繰りの厳しさを心配されるところですから覚えおきましょう。
なお、借入の口数が多くなってしまった場合には、「一本化」の検討がおすすめです。複数の口数の借入をひとつにまとめて、返済期限を伸ばすことで、毎月の返済額を少なくすることができます。
多くの中小企業が利用している「信用保証協会付き融資」については、信用保証協会の「借り換え保証制度」というものもあります。
既存の「信用保証協会付き融資」をまとめて一本化して、最長で10年まで返済期限を引き伸ばすことができる、という制度です。必要に応じて、銀行に相談をしてみましょう。
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まとめ
会社にとって気がかりな「銀行借入が多すぎる?」は、銀行にとっても気がかりなところです。
多すぎれば、銀行はそれ以上の融資を躊躇します。
「銀行借入が多すぎる」を知るために、5つの指標で確認しておきましょう。
- 借入金月商倍率
- 債務償還年数
- 借入金依存度
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
- 借入の口数