おカネを借りる際の金利は低いほどいい、というのは間違いありません。
いっぽうで。実は、金利引き下げ交渉に躍起になっても得をしない理由があることを理解しておきましょう。
できるならば引き下げたいのが金利ではあるけれど。
会社・事業における銀行融資について。おカネを借りる際の金利は低いほどいい、というのは間違いありません。
「利息の支払い」はおカネを借りる際のデメリットであり、金利が低ければ、利息の支払いも少なくて済むからです。
ゆえに、銀行からおカネを借りる・借りているとなれば、「金利の引き下げ」をすべく、会社は銀行と交渉をすることになります。
ところが。実は、金利引き下げ交渉に躍起になっても得をしない理由がある。それが、次の3つです ↓
- 金利引き下げにそれほどの効果はないから
- 下げたくても下げられない金利もあるから
- 銀行が言う金利を飲むべきときもあるから
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
金利引き下げ交渉に躍起になっても得をしない3つの理由
《理由1》金利引き下げにそれほどの効果はないから
0.1%の金利差をめぐって、金利引き下げ交渉に躍起になる会社があります。
利息の支払いを無駄なコストだと考えれば、「少しでも金利を引き下げたい」という思いはわからないでもありません。
けれども。その金利差によって、コストはどれほどの影響を受けるのか? 具体的な金額で確認をしておいたほうがよいでしょう。
たとえば。1,000万円を 3.0%の金利で融資を受けている会社があったとします。社長は、「とにかく金利を下げろ! 0.1%でもいいから下げろ!」と躍起になっている。そんなケースです。
この会社のいま現在の利息は、年間で 30万円(1,000万円 × 3.0%)。ひと月あたりでは、2.5万円です(30万円 ÷ 12ヶ月)。
もしこれが交渉の甲斐あって、金利を 0.1%引き下げることができたら、つまり、金利が 2.9%になったらどうでしょう?
年間では 29万円。ひと月あたりでは 2万4,166円です。金利引き下げ交渉によって、利息は年間で1万円少なくなり、ひと月あたりでは 834円少なくなりました。
もういちど言います。ひと月あたり 834円です。あえて言いますが、「わずかに 834円だ」とも言えます。
おカネを貸すのは銀行。貸すか貸さないかを決めるのは銀行です。無理な金利交渉をして融資を断られた場合、1,000万円のおカネがない分、資金繰りは厳しくなります。
なんとか融資を受けられたとしても。無理な交渉によって、銀行との関係性に傷がつく可能性もあるでしょう。次に融資を受けようとしたときには、その傷が影響するかもしれません(融資を受けにくくなる)。
銀行が言う金利を鵜呑みにしろ、などと言うつもりはありませんが。金利引き下げの効果(例では、ひと月あたり 834円)を考えたうえで交渉するようにしましょう。
金利引き下げ効果以上の代償を負うようでは、元も子もありません。
《理由2》下げたくても下げられない金利もあるから
銀行から融資を受けるにあたり。返済できる可能性が高い会社、つまり、安全性が高い会社の金利は低くなります。
逆に。返済できる可能性が低い会社、つまり、安全性が低い会社の金利は高くなります。
具体的に「安全性」をどう考えるか、ということはありますが。たとえば、「債務超過か否か?」という視点があります。
債務超過とは、会社の「資産の総額」よりも「負債の総額」が大きい状態のこと。いまある資産のすべてを売り払って現金化しても、負債を返しきれない… まさしく安全性が低い状態。
こんな会社には、銀行でなくともおカネは貸したくないものです。
そこで、それでも融資をするというのであれば。返済してもらえないときのことも考えて、金利を高く設定するのは当然です。
この場合、会社がいくら躍起になって金利交渉をしようとも、銀行としては「無理なものは無理」としか言えません。損をしてまでおカネを貸す道理などないからです。
にもかかわらず。決算書の内容が悪いのを棚にあげて、金利交渉に躍起になる会社があります。やめましょう。下げたくとも下げられない金利もあるのです。
債務超過ばかりではなく、赤字が大きい、赤字が続いているような会社も同じこと。やはり、金利交渉をできる土俵にあがることができません。
金利引き下げ交渉をしたいのであれば、まずは、決算書の内容が良いことは欠かせない。そのように考えておきましょう。
もう少し具体的に言うと。出せる利益は惜しまず出すこと。節税ばかりを考えて利益を減らしすぎないこと。利益を積み重ねて、内部留保を増やすことです。
むしろ、決算書の内容が良くなれば、無理な交渉をせずとも、銀行が提示する金利はおのずと下がります。下がった金利をこんどは別の銀行にも提示することで、さらに低い金利の提示を受けることにもつながります。
無理な交渉をするよりも前に、まずは自社の決算書を良くすることを考えましょう。この順番が逆になっている会社が少なくありません。
《理由3》銀行が言う金利を飲むべきときもあるから
銀行が提示する金利がちょっと高い。とはいえ、自社の決算書の内容が悪いわけでもない。それでも、銀行が言う金利を飲むべきときもあります。
たとえば。いままでお付き合いのない銀行から、はじめての融資を受けようとするとき。
銀行は「様子見」ということもあって、若干高めの金利を提示することもありえます。その後、返済の実績ができることで、以降の融資では金利も下がるわけですが。
したがって、会社が銀行とお付き合いをはじめるにあたっては、「ひとまず銀行が言う金利を飲む」のはひとつの方法と考えておくべきでしょう。
金利はあとから下げることができますが、まずはお付き合いがはじまらなければ引き下げもなにもないからです。
それからもうひとつ。金利とは別の融資条件を銀行に依頼するときに、その引き換えとして、一段高い金利を飲むべきケースがあります。
たとえば、経営者保証の解除。銀行から会社が融資を受けるにあたり、社長の保証は外してほしい。そんな融資条件を銀行に依頼する際、銀行は「代わりに金利は高めで」と考えます(あるいは、実際にそう言います)。
ここでも、「ひとまず銀行が言う金利を飲む」のはひとつの方法です。
なぜなら、金利はあとから下げることができますが、経営者保証の解除ができるタイミングは限られているからです。端的に言えば、会社の業績・状態が良いときなのであり、そのタイミングを逃してはいけません。
目先の金利にとらわれず、中長期的な「損得」で考えるようにしましょう。
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まとめ
「利息の支払い」はおカネを借りる際のデメリットであることから、金利引き下げ交渉に躍起になっている会社があります。
もちろん、「おカネを借りる際の金利は低いほどいい」というのは間違いありません。
ただそのいっぽうで。実は、金利引き下げ交渉に躍起になっても得をしない理由があることを理解しておきましょう。
- 金利引き下げにそれほどの効果はないから
- 下げたくても下げられない金利もあるから
- 銀行が言う金利を飲むべきときもあるから