銀行が融資先の架空売上を見抜く5つのポイント

銀行が融資先の架空売上を見抜く5つのポイント

「融資先の粉飾決算」ということが銀行業界ではとりわけ話題にのぼっています。

粉飾を見抜くことにいっそうの力を入れている銀行が、会社のどのようなところを見ているのか? 架空売上を例に、お話をしていきます。

目次

融資先の粉飾決算が、銀行業界でいま話題。

本記事の執筆時現在(2020年1月10日)、「融資先の粉飾決算」ということが銀行業界ではとりわけ話題にのぼっています。

会社の倒産が増えるなか、倒産をした会社が「実は粉飾をしていた」とわかるケースが増えているのです。倒産してはじめて、銀行が粉飾に気づく… みたいな。

融資先が倒産をして、貸したおカネが回収できないのは銀行にとっての一大事。融資先が粉飾をしていたとなれば、さらなる一大事です。

というハナシをすると。「粉飾をしても銀行は見抜けないのか。じゃあ、粉飾をしてもだいじょうぶかな?」などと思われるかもしれませんが、それは違います。

当然、銀行も粉飾を見抜くことに力を入れています。また、冒頭の話題から、今後はさらに力を入れることでしょう。

そんな銀行が粉飾をどのように見抜こうとしているのか?

「銀行はどのようなところを見ているのか」という点では、融資を受ける側としても知っておく価値があるでしょう。

どうやったら粉飾がバレないか、というためではなく。へぇ、銀行はそこを見ているのかぁ。そんな見方をしているのかぁ。という「銀行視点」を学ぶためです。

そこで、よくある粉飾のひとつである「架空売上」をとりあげて。銀行が「架空売上」を見抜くポイントをお話していきます。ポイントは次の5つです ↓

銀行が融資先の架空売上を見抜く5つのポイント
  1. 月商ヒアリングとのズレ
  2. 現金預金の増加
  3. 売上債権回転期間の伸び
  4. 売上総利益率の上昇
  5. 平均借入利率の上昇

 

銀行が融資先の架空売上を見抜く5つのポイント

月商ヒアリングとのズレ

銀行は日常の面談のなかで、会社の「月商(毎月の売上高)」をヒアリングしていることがあります。

先月の月商はいくらだったのか? 今月の月商はどのくらいになりそうか? 来月は? といった具合です。

ヒアリングした月商の情報を銀行は記録に残しています。そのうえで、ヒアリングした月商と、試算表や決算書の売上高と比較をするのです。

もしも、会社が最終的に決算書で架空売上の粉飾をした場合。ヒアリングしていた月商からイメージできる売上高よりも、決算書の売上高のほうが大きいことに銀行は首をかしげることになります。

そこで、決算書に付属する「事業概況説明書」などから、毎月の売上高も確認して、ヒアリングしていた月商のどことズレているのかを把握します。

ズレがわかれば、その理由を会社にたずねるわけで。ここで粉飾を見抜かれることとなります。

現金預金の増加

架空売上の手法として。「売上高」を増やすのと同時に、同額の「現金・預金」を増やすという手法が挙げられます。

複式簿記という経理のしくみ上、売上だけを増やしておしまいというわけにはいかないからです。「なにかが増減したら、別のなにかも増減する」というのが「複式」なのであり、これが粉飾を見抜くてがかりにもなります。

で、現金・預金が増えるとどうなるか?

もし、現金を増やせば、金額によっては「そんなに現金を持ってるの?」ということになるでしょう。いまの時代、銀行取引が主流であり、現金取引は少なく、手元に現金を置く理由がないからです。

ならば! と、預金を増やすとなると。銀行が「通帳残高や残高証明書の数字」と、決算書の数字とを突き合わせをすればおしまいです。「なんで合っていないの?」となるでしょう。

したがって、「売上高」を増やすのと同時に、同額の「現金・預金」を増やすという架空売上は、銀行に見抜かれることとなります。

売上債権回転期間の伸び

いましがた、「売上高」を増やすのと同時に、同額の「現金・預金」を増やすという手法についてお話をしました。

これに代わって、「売上高」を増やすのと同時に、同額の「売掛金」を増やすという手法もあります。現金・預金を増やしたのではバレやすいから。

では、その結果どうなるのでしょう。

「回収されることがない売掛金」が積み上がることになります。架空で売上先がないのですから、回収できないのはあたりまえです。

回収されることがない売掛金が積み上がるとどうなるか?「売上債権回転期間」が伸びます。

売上債権回転期間とは「売掛金 ÷ 平均月商」で計算される財務指標です。売掛金が変わらず回収できていれば、この指標は一定になるはずであり。

にもかかわらず、売上債権回転期間が伸びていないか? 伸び続けていないか? をチェックすることで、銀行は粉飾を見抜こうとしています。

売上総利益率の上昇

架空の売上を増やしていくと、売上総利益率が上昇します。

売上総利益率とは「売上総利益 ÷ 売上高」で計算される財務指標です。ちなみに、売上総利益は「売上高 − 売上原価」です。

架空の売上高ばかりが増えて、売上原価(要は仕入)が増えなければ、売上総利益率は上昇することになります。

商売に変化がなければ、売上総利益率はおおむね一定であるものです。その売上総利益率が上昇しているとなれば、銀行は異変を感じます。

そこで銀行は、融資先に「なぜ売上総利益率が上がっているのか?」とたずねるわけです。売上単価の増加や、仕入単価の削減など、正当な理由がない場合には、粉飾を見抜かれることとなります。

それならば、「売上高と仕入高の両方を増やせばいい」と思われるかもしれません。が、そのときには「仕入債務回転期間(買掛金 ÷ 平均月商)」が伸びることから粉飾を見抜かれます。

どのような粉飾であっても、どこかに「ほころび」が出るものです。

平均借入利率の上昇

借入金が多い会社は、各種の財務指標が悪化します。たとえば、借入金が多くなると「自己資本比率(自己資本 ÷ 総資産)」が低くなってしまう。

また、借入金も含め負債全体の金額が、資産の金額を超えると「債務超過」となり、銀行からの融資が極端に受けにくくなります。

そこで。借入金を売上高に振り替えてしまおう、というツワモノがいます。なんじゃそりゃ? ということですが、テクニック的には造作もありません。仕訳をひとつ入れるだけ(もちろん、やってはいけません!)。

では、これによりなにが起きるのか? 平均借入利率が上昇します。

平均借入利率とは、「支払利息 ÷{(期首の借入金残高 + 期末の借入金残高)÷2}」で計算される財務指標です。要は、「期中の平均金利」ですね。

借入金を売上高に振り替えることで、借入金の残高はその分だけ少なくなります。いっぽうで、少なくなった借入金にかかる支払利息を減らさなければ、平均借入利率は上昇します。

上昇した結果が、例年の平均借入利率や、市場の平均金利などと比べて「高すぎる!」となることで、銀行は架空売上(借入金の振り替え)を見抜くのです。

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まとめ

本記事の執筆時現在(2020年1月10日)、「融資先の粉飾決算」ということが銀行業界ではとりわけ話題にのぼっています。

粉飾を見抜くことにいっそうの力を入れている銀行が、会社のどのようなところを見ているのか? どのような見方をしているのか? 融資を受ける側としても知っておくとよいでしょう。

銀行が融資先の架空売上を見抜く5つのポイント
  1. 月商ヒアリングとのズレ
  2. 現金預金の増加
  3. 売上債権回転期間の伸び
  4. 売上総利益率の上昇
  5. 平均借入利率の上昇
銀行が融資先の架空売上を見抜く5つのポイント

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