「融資を受けたい」「もっと良い条件で融資を受けたい」と考えるのであれば、ぜひ事業計画書をつくりましょう。
そこで、銀行融資に役立つ、事業計画書を作成するときのポイントをお話していきます。
事業計画書は融資審査で加点になる
銀行から融資を受けている(あるいは、すでに融資を受けている)会社であれば。事業計画書を作成して、銀行に提示することをおすすめします。
なぜなら、事業計画書の作成・提示が、融資審査では「加点」の対象になるからです。
ゆえに、「融資を受けたい」「もっと良い条件で融資を受けたい」と考えるのであれば、ぜひ事業計画書をつくりましょう。
と、言われても。事業計画書をつくったことがない… つくったことはあるけれどイマイチよくわからない… という会社もあるようです(実際に、そういう相談をいただきます)。
そこで。銀行融資に役立つ、事業計画書を作成するときのポイントをお話していきます。ポイントは3つ、こちらです ↓
- 前期ベースでかまわない
- 売上は増やさず、利益を増やす
- コスト削減を織り込む
それではこれら3つのポイントについて、このあと順番に見ていきましょう。
銀行融資に役立つ事業計画書、というお話ではありますが。そもそも、事業計画書は銀行のためにつくるものではなく、会社自身のためにつくるものです。
会社は事業計画書を当然につくるものとして、そのうえで、銀行融資に役立つ事業計画書のポイントを押さえる。銀行による事業計画書の見方を押さえる、というのが本記事の趣旨となりますことを申し添えます。
銀行融資ありきの事業計画書では本末転倒です。
銀行融資に役立つ!事業計画書を作成するときのポイント3選
《ポイント1》前期ベースでかまわない
事業計画書をつくっていない会社が、「事業計画書をつくりましょう」というハナシを聞いたときの反応として。「先のことなどわからない(だからつくれない・つくらない)」が挙げられます。
なるほどたしかに、先のことなどだれにもわからないのはそのとおりです。
けれども、事業計画書は「予言書」ではありません。当たるか当たらないかが重要なのではありません。
事業計画書をつくるのは、「理想」を持つためです。先のことなどわからないながらも、「こうありたい」という姿を計画として描いておく。
これにより、計画とは異なる未来であっても(多かれ少なかれ計画と現実は必ず異なります)、理想(計画)とのズレに気づき、早いうちに軌道修正もできるようになります。
逆に、計画がない会社は、理想とのズレに気づかず、軌道修正もできず。気がついたら困ったことになっている… と、なりがちです。おカネが無い・足りない! と、あわてて銀行に飛び込むことにもなります。
そう考えると。計画がないよりも、あるほうがいいですよね。だから、銀行も、事業計画書がある会社を評価します。
話を戻して。先のことなどわからないのに、いったいどのように計画を立てればいいのか? どうしても先がわからなければ、「前期ベース」でつくることです。前期と同じ、と仮定してつくる。これも立派な計画です。
さきほどもお話をしたとおり、事業計画書の役割は「計画と現実のズレ」を認識することにあります。前期と今期のズレから気づく異変、というのもあるはずです。
したがって、「先のことなどわからない」と計画作成を投げ出すのではなく、まずは前期ベースであっても、それを計画と考えるところからはじめてみましょう。
計画はつくることにいちばんの意味があるのではありません。つくった計画と現実とを比較することにいちばんの意味があります。
せっかくつくった事業計画書がしまわれたまま、いちども見られることがなかった… なんてことがないように。「計画書あるある」です。
《ポイント2》売上は増やさず、利益を増やす
いましがた、事業計画書は「まずは前期ベースでかまわない」というお話をしました。とはいえ、ただただ前期ベースとなれば、「努力が足りん」となってしまいます。
そこで、考えられるのが「売上を増やす」という計画です。
この点で。銀行が事業計画書を見たときに、もっとも首をかしげるのが「売上が右肩上がり」の計画になります。ホントにこんな増えるの?と。
売上不振が続いていたような状況であればなおさらです。そういう計画だと、銀行からの信用を得られず、逆効果にもなりかねません。
じゃあ、どうしたらよいのか?「売上」を増やすのではなく「利益」を増やすことを考えましょう。
具体策1・値上げ
具体策のひとつは、「値上げ」です。
たとえば、単価 3,000円の飲食店で、現状ではお客さまが 100人だとします。売上高は 300,000円です。ここで各種メニューの値上げをして、単価を 3,300円に引き上げることができたらどうでしょう。
値上げの結果、10人の客離れがあったとしても、売上高はほぼほぼ現状を維持することができます(3,300円 × 90人 = 297,000円)。10%値上げして、10%お客さまが減っても売上は変わらずです。
いっぽうで、お客さまが減った分、従業員を減らすことができるかもしれません。営業時間を短くすれば、残業代や光熱費の削減ができるかもしれません。売上は増えなくても利益を増やすことができます。
そんなカンタンに値上げできるかよ? と思われるかもですが。実は、多くの会社・個人事業者が「値上げをしていない・できていない」という現実があります。
消費税の増税分すら価格に転嫁せずに飲み込んでいるのはその典型です。客離れを恐れるあまり、価格が商品価値よりも低くなりすぎているのです。
だから、正しい価値まで値上げをしましょう、という話でもあります。価値に見合った値上げであれば、多少の客離れがあっても売上高が大きく減ることはありません。むしろ、利益が増えるのは前述したとおりです。
また、さきほどの飲食店の例で言えば、お客さまが減ると「時間的な余裕」も生まれます。空いた時間で接客を強化する、商品開発をするなど、商品価値を高めることができれば、さらなる値上げもできるでしょう。
[ad1]具体策2・仕入の見直し
売上を増やさずに利益を増やす、もうひとつの具体策として、「仕入の見直し」が挙げられます。
とくに、仕入先を長らく変えていないような会社では、仕入値が据え置かれていることが少なくありません。その仕入値が適正であればよいのですが、割高になっていることがある。
相見積もりをしていない、仕入値の引き下げ交渉をしたことがないようなケースです。
実際、相見積もりをしたり、仕入値の引き下げ交渉をしたところ、あっさりと仕入値が下がったということはよくあります。心当たりがあるようであれば、仕入の見直しに取り組みましょう。
また、支払いを早めることを条件に、仕入値を引き下げてもらう、という交渉方法もあります。相手としては資金繰りがラクになりますから、値下げに応じるメリットがあるからです。
いっぽうで、支払うこちら側の資金繰りは厳しくなるわけですが。値引率が金利よりも大きければ、支払いを早める分のおカネを銀行から調達するのもひとつの方法です。
結果として、売上を増やさずに利益を増やすことができます。
《ポイント3》コスト削減を織り込む
ただただ前期ベースとなれば、「努力が足りん」というお話はしました。そこで、「コスト削減」を計画に織り込むことが考えられます。
売上についてはお客さまあってのことなので、銀行も実現可能性には一定の疑問をいだくもの。いっぽうで、コスト削減は会社しだいの面が多く、実現可能性は高いと見ています。
ゆえに、事業計画書にはコスト削減を折り込みたいところです。
と、言っても。やみくもにコストを削れ、ということではありません。「過剰になっているコスト」を削りましょう。そんなお話です。
たとえば。事務所や店舗を賃貸で借りている会社があったとして。長らく家賃が据え置かれている会社は少なくありません。ところが、周囲の相場を調べてみたら、だいぶ下がっていた… ということがあります。
この場合には、いま支払っている家賃は過剰です。相場の資料をまとめて、家主さんに交渉をしてみましょう。
また、飲食店や小売店などでは、過剰に人員を配置しているケースがあります。昔よりもお客さまが減っているのに、従業員の人数はそのまんま。繁忙期も閑散期も従業員の人数は同じ、とか。これも過剰コストです。
1日のなかでも、お客さまが多い時間帯・少ない時間帯はあるはずです。あるていどの期間、時間ごとのお客さまを数えてみましょう。そのうえで、お客さまの数にあわせて、従業員数を増減させるシフトを組む。
このあたり、「本来必要な細やかさ」が不足しているがゆえに、過剰なコストが発生している会社があります。
さらに細かいことを言えば。いつも社内備品(紙、事務用品など)の在庫がたっぷりある、という会社もあります。あればあったで「安全(在庫切れしない)」なのかもしれませんが、なければないでだいじょうぶということもあるでしょう。
そういう会社は、ほかにも細かいムダがあるものです。あたりまえにあるもの、使っているものを、あらためて見直してみましょう。積もり積もれば、相応のコスト削減にもつながります。
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まとめ
会社が事業計画書を作成して、それを銀行に提示することは、融資審査での加点対象になります。
「融資を受けたい」「もっと良い条件で融資を受けたい」と考えるのであれば、ぜひポイントを押さえた事業計画書をつくりましょう。
- 前期ベースでかまわない
- 売上は増やさず、利益を増やす
- コスト削減を織り込む