短期継続融資は、「経常運転資金」分のおカネを会社が借りようとするときには、「正しい借り方」です。
ところが、短期継続融資には乗り気ではない銀行もありますので。短期継続融資を躊躇する銀行への対応ポイントについてお話をします。
いちど根付いた慣習はそうそう変わらない。
会社・事業における銀行融資について、「短期継続融資」という融資があります。
文字どおり、「短期(返済期限1年以内)」の融資を、返済期限が来たら更新をして「継続」する融資です。平たく言うと、借りたら借りっぱなし。
いわゆる「経常運転資金」分のおカネを会社が借りようとするときには、「正しい借り方」だと言えます。
経常運転資金とは「売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務」で計算される金額。事業を続ける限り、この金額分のおカネは常に必要なのですから。
ところが。「借りたら借りっぱなしの融資って、不良債権なんじゃないの?」みたいなことを金融庁が言い出したから、さぁタイヘン。
それまで、短期継続融資で対応していた銀行は、いっせいに「長期・毎月返済(証書貸付)」に切り替えました。というのが、2002年ごろのお話です。
その後、金融庁も「ちょっと言いすぎたかな…」ということで、方向転換がはかられたものの。いちど根付いた「慣習(経常運転資金を長期・毎月返済で貸す)」はなかなか戻らず、いまにいたります。
そこで、短期継続融資を躊躇する銀行への対応ポイントをまとめてみました。会社は「こうすれば短期継続融資が受けやすくなる!」というポイントです ↓
- まずは利益を出す
- 売上見込・利益見込の情報を伝える
- 売上債権・たな卸資産の存在を説明する
- 必要以上に信用保証協会付きを嫌わない
- ほんとうに返済しなくていいのか?を追及しない
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
短期継続融資を躊躇する銀行への対応ポイント5選
まずは利益を出す
短期継続融資を躊躇する銀行への対応ポイント、1つめ。それは「まずは利益を出す」です。
そもそも、短期継続融資の対象は「経常運転資金(売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務)」になります。
ところが、利益が出ていない会社、つまり、赤字の会社の場合にはどうでしょう? 経常運転資金として融資をしたおカネが、「赤字補てん」に使われることになりかねません。
赤字補てんに使われた挙げ句、「短期」ゆえに近々訪れる返済期限になって「返済できませんでした…」では困ってしまいます。だから、銀行は赤字の会社に短期継続融資は出したくないのです。
赤字だから絶対にムリ、というわけではありませんが。短期継続融資を躊躇する銀行に対しては、「まずは利益を出す」に越したことはない。と、考えておきましょう。
売上見込・利益見込の情報を伝える
いましがた、「銀行は赤字の会社に短期継続融資は出したくない」というお話をしました。これは「過去の赤字」ばかりでなく、「将来の赤字」についても同じことです。
将来、赤字になるのであれば。やっぱり、短期継続融資はしたくないよなぁ… と、銀行は考えます。
そこで、会社がすべき対応が「売上見込・利益見込の情報を伝える」ということです。これからもじゅうぶんな売上が見込まれているし、じゅうぶんな利益が見込まれていますよ、と銀行に伝えることです。
たとえば、売上の受注見込み一覧を渡すとか。向こう1年ていどの予測資金繰り表を渡すとか。事業計画書を渡す、という方法もあるでしょう。
いずれにせよ、短期継続融資を躊躇する銀行に対しては、「将来も利益が出る」ことを伝えるのがポイントです。
売上債権・たな卸資産の存在を説明する
繰り返しのお話になりますが。短期継続融資の対象は、「経常運転資金(売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務)」です。
この点で。銀行は、「売上債権(売掛金・受取手形)やたな卸資産(在庫)は現金化できる」から、短期かつ継続的な融資も容認できる。と、考えています。
つまり。売上債権やたな卸資産の金額の範囲内の融資であれば、いざとなったら、売上債権やたな卸資産を現金化してもらい回収ができる。だから、回収しそびれることはない。
けれども。売上債権のなかに、不良債権や架空債権があったらどうでしょう? たな卸資産のなかに、不良在庫や架空在庫があったらどうでしょう?
現金化できませんよね。銀行は、回収できませんよね。
したがって、銀行は「売上債権やたな卸資産のなかに、不良や架空はないか?」を心配しています。疑っています。この心配や疑念が、短期継続融資を躊躇させるのです。
そこで、会社がすべき対応は「売上債権・たな卸資産の存在を説明する」。売上債権、たな資産に不良や架空はない。ほんとうに存在する、と説明することがポイントになります。
具体的には、売上債権・たな卸資産の「内訳」を一覧にして渡すとか。内訳ばかりではなく、一定期間における「推移」の一覧まで渡す。などの方法になります。
[ad1]必要以上に信用保証協会付きを嫌わない
またまた、同じ話になりますが。短期継続融資の対象は、「経常運転資金(売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務)」です。
だから銀行は、いざとなったら、売上債権やたな卸資産を現金化してもらい回収ができる。基本的に、回収しそびれる心配がない。というお話をしました。
そう考えると。銀行は、担保をとっているのと同じことです。売上債権やたな卸資産は担保みたいなものです。
であるならば。本来、短期継続融資に「信用保証協会付き」はありえません。売上債権やたな卸資産でじゅうぶん担保されているだろう? という話です。
けれども、短期継続融資を躊躇する銀行は、短期継続融資にも「信用保証協会付き」を求めることがあります。それは本来おかしなことなのですから、会社は「おかしい」と主張すべきです。
ところが。短期継続融資の金額が、「現在の経常運転資金を超える場合」などには、信用保証協会付きもいたしかたないとも言えます。
決算書・試算表などで現在(あるいは過去)の経常運転資金を計算すると、1,000万円。でも、将来的には売上が増加するとか、季節変動があって売上が増加するとか。
そういう場合には、短期継続融資の金額が「現在の経常運転資金を超える場合」があるわけです。
銀行としては、不確実な「将来」には不安を感じるところですから、信用保証協会付きにしたくもなるでしょう。
したがって会社は、そのような場合にまで、信用保証協会付きを嫌わない。必要以上に信用保証協会付きを嫌わない、というのがポイントです。
ほんとうに返済しなくていいのか?を追及しない
短期継続融資について。会社としては、「継続」に魅力があります。必要なおカネを借り続けることができる、返済をしなくていいのが魅力です。
いっぽうで。ほんとうに継続できるのか?ほんとうに返済しなくていいのか? という疑問もあります。
期限が来たときには、「やっぱり返済してくれ」なんて言われるんじゃないか? だったらはじめから、毎月返済でも長期で借りておいたほうがマシ。との考え方もあるわけです。
けれども、その考え方は少々ナンセンスだと言えるでしょう。
まず、「短期継続融資」と「長期・毎月返済」と、会社の資金繰りにおいてどちらが良いか? と言えば、間違いなく「短期継続融資」です。
そして、いちど短期継続融資をした銀行が、わけもなく「やっぱり返済してくれ」と言うか? と言えば、おそらく言わないでしょう。
わけあって言うことはあっても、わけもなく言うことはない。「やっぱり返済してくれ」が、会社にどれだけの影響を与えるかは銀行もわかっているからです。
じゃあ、「わけあって」とはどういうケースなのか?
それは、ここまでお話をしてきたようなことです。赤字が出る、赤字の見込みがあるとか。売上債権やたな卸資産の内容に問題があるとか。そういうケースです。
だから、会社がポイントを押さえて対応している限り、短期継続融資がカンタンに返済を迫られることはない。そう考えておきましょう。
にもかかわらず。銀行に対して、「ほんとうに継続できるのか?」と執拗に迫る会社があります。やめましょう。銀行が、短期継続融資を躊躇する原因になりかねません。
ほんとうに返済しなくていいのか?を追及しない。ポイントです。
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まとめ
短期継続融資は、「経常運転資金」分のおカネを会社が借りようとするときには、「正しい借り方」です。
ところが、短期継続融資には乗り気ではない銀行もありますので。短期継続融資を躊躇する銀行への対応ポイントを押さえておきましょう。
- まずは利益を出す
- 売上見込・利益見込の情報を伝える
- 売上債権・たな卸資産の存在を説明する
- 必要以上に信用保証協会付きを嫌わない
- ほんとうに返済しなくていいのか?を追及しない