コロナを経たいま、銀行融資は一過性の「ブーム」なのか? それとも、もう少し長い傾向として続く「トレンド」なのか?
どちらでもありません。じゃあ、なんなんだ?というお話をしていきます。
ブームは一過性、トレンドは中長期の傾向。
きょうは 2020年11月13日。コロナを経たいま(まだコロナのさなかではありますが)、会社における銀行融資は大きな広がりを見せている。そう言ってよいでしょう。
コロナの影響によって、資金繰りに大きなダメージを受けた多くの会社が、国・地方自治体が主導する「緊急かつ大規模」な融資を利用しました。
そのような背景があってかどうなのか(あってのことだろうと推測します)、銀行融資をテーマにした「セミナー」や「コンサル」の案内というものが増えたように感じています。
結果として、いままで銀行融資を受けたことがない会社や、それほど積極的に受けてこなかった会社も、銀行融資に対する興味・関心が高まった。というのが、いまの状況ではないでしょうか。
コロナを経たいま、銀行融資は一過性の「ブーム」なのか? それとも、もう少し長い傾向として続く「トレンド」なのか?
どちらでもない、というのがわたしの考えです。
会社にとっての銀行融資は、ブームでもトレンドでもなく、「セオリー」だ。わたしは、そう考えています。
別に、「言葉遊び」をするつもりはありませんが。それでもやっぱり、銀行融資は、そもそもセオリーである、そもそも定石である。そこを勘違いすると、銀行融資がアダになることもあるのではないか?
ブームとしての銀行融資、トレンドとしての銀行融資には、そういう「危うさ」が内在している。ひっそりと潜んでいる。と、心配をしています。
そこで。そもそも銀行融資はセオリーだ、という点で気をつけるべきことについてお話をしてみることにしました。具体的には、こちらです↓
- 結果オーライ、にしない。
- 借りっぱなし、にしない。
- 借金バンザイ、ではない。
銀行融資はセオリーだ、という点で気をつけるべきこと
結果オーライ、にしない。
コロナ禍における銀行融資は「特別」でした。コロナ以前、平時の融資を「通常」の融資と考えるのであれば、コロナ禍における融資は「特別」です。
通常の融資であれば、業績が悪化している会社は融資が受けにくい・受けられないものですが。コロナ禍における融資(以下、コロナ融資)は、むしろ、業績が悪化していないと受けられない。通常とは真逆です。
経済を守る・企業を守ることを最優先に、国や地方自治体が「特別」な融資を後押したのが「コロナ融資」だ、ということになります。
なので、平時から資金の余裕を持たず、コロナによる業績悪化で資金不足にあわてたような会社も、なんとか融資を受けることができました。
本来であれば、平時から資金の余裕を持てるよう備えるべきところですから。コロナ融資における資金調達は「結果オーライ」の一面があります。
今後は、このような「結果オーライ」では融資が受けられない。「通常」は、業績が良いこと、利益が出ていることが、銀行融資を受ける前提なんだ。そう理解しておきましょう。
また、コロナ融資では「緊急性」ゆえに、融資審査の手続きが簡素化されました。
融資を受ける会社側から見ると。通常の融資に比べると、申込・審査に必要な書類はごくわずか。「とてもカンタン」に融資が受けられた、と言えます。
本来、必要な資料(試算表や資金繰り表、借入金一覧表など)をつくっていないような会社は、やはり「結果オーライ」だったわけです。
ところが。「通常」の融資で、結果オーライを期待してはいけません。業績が悪かったり、書類準備が不十分であれば、融資を受けられる可能性は低くなるばかりです。
したがって、「通常」の銀行融資で必要な「考え方」や、必要な「銀行対応」について、押さえておくようにしましょう。よろしければ、わたしが執筆している書籍も参考にどうぞ↓
借りっぱなし、にしない。
融資を借りっぱなし、にしてはいけません。「融資は受けたら終わりではなく、受けてからがはじまり」とも言えるところです。
なぜ、借りっぱなしにしてはいけないのか? 融資には「メンテナンス」が必要だからです。おもに必要なメンテナンスは3つになります↓
- 「返済額 < 利益」を確認する
- 折り返し融資を受ける
- 融資条件を改善する
それぞれ、説明をしていきます↓
① 「返済額 < 利益」を確認する
借りたおカネの返済原資は「利益」です。もう少し正確に言うと、「税引後利益 + 減価償却費」が返済原資になります。ハナシを簡略化して「利益」です。
借りたおカネは利益がなければ返済できないことから、銀行は「返済額 < 利益」を確認しています。逆に「返済額 > 利益」になっているような会社には、「これ以上の融資はできないぞ」ということです。
「返済額 > 利益」となると、融資を受けられるかどうか以前に、会社のおカネはどんどん減っていきます。利益では足りないので、手元のおカネを取り崩して返済をしなければならないからです。
したがって、会社は常に「返済額 > 利益」になっていないかを確認しなければいけません。なっていれば、返済額を圧縮する(借り換えなど)、利益を改善するなどの手を打つことです。
② 折り返し融資を受ける
1,000万円の融資を受けたときには、1,000万円の借金が増えると同時に、1,000万円のおカネが増えます。ところが、毎月返済を続けていけば、1,000万円のおカネはその分だけ減っていく…
おカネが必要だから借りたのに、借りっぱなしにしていると、またおカネが足りない状況になってしまいます。
そこで。あるていどの返済が進んだところで、もともと借りていた金額まで借り直す。これを、「折り返し融資」などと呼んでいます。
借入実績があるため、折り返し融資は借りやすい融資にもかかわらず、利用していない会社は少なくありません。
当初借りた金額の3分の1ていど返済が済んだときが、折り返し融資を受けやすいタイミングとして覚えておきましょう。
③ 融資条件を改善する
融資には、金利の高低や担保・保証の有無といった「融資条件」があります。借りっぱなしにしていると、融資条件が良くはなりません。
融資を受ける以上、融資条件は良いほうがいいはずです。であるならば、融資条件の改善に動く必要があります。
複数の銀行から融資を受けて、銀行どうしを競争させるとか。黒字のときに、金利の引き下げやプロパーでの融資を依頼するとか。銀行が融資のセールスにきたときに、融資条件を交渉するのもいいでしょう。
融資条件を改善することで、会社の財務基盤はより強固になるのですから。借りっぱなしにはせず、融資条件の改善に動きましょう。
[ad1]借金バンザイ、ではない。
銀行融資はブームでもトレンドでもない、セオリーだ! などと言うと。会社は、銀行融資を受けてナンボ。借金バンザイ、みたいに聞こえるかもしれませんが。
それは、違います。
銀行融資は、会社の財務基盤を強くするための「一手段」でしかありません。多くの中小企業では「自己資金が過少」であることから、それを補う「手段」として、銀行融資がセオリーだとお伝えしているところです。
けれども、「自己資金が過少」という前提が変われば、手段も変わります。
じゅうぶんな自己資金(目安として、売上高の半年分の現金預金)があるのなら、銀行融資は必要ないでしょう。いわゆる「無借金経営」が良いでしょう。
借金は、しなくていいなら、しないほうがいいのです。借金が無いほうがいいのは間違いありません。
そこを勘違いして、「とにかく借りたほうがいい」「どんどん借りたほうがいい」ということになると、手段が目的になってしまいます。
ほんとうは「会社の財務基盤を強くするため(目的)」の銀行融資(手段)だったのに。銀行融資を受けることが目的になってしまう。本末転倒です。
銀行融資に頼らずとも、自己資金でやっていけるように。いつかは無借金を目指すために、「いま」は銀行融資を受ける、という考え方が必要です。
ブームとしての銀行融資、トレンドとしての銀行融資には、「いつかは無借金」との視点が抜け落ちている。あるいは、抜け落ちてしまう危険性があります。気をつけましょう。
銀行融資は、あくまで「会社の財務基盤を強くするため」の一手段、自己資金だけでやっていけるようになるまでの一時的な手段です。
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まとめ
コロナを経たいま、多くの会社が利用する銀行融資は、一過性の「ブーム」なのか? それとも、もう少し長い傾向として続く「トレンド」なのか?
どちらでもない。銀行融資は「セオリー」だ、というお話をしてきました。
銀行融資がセオリーだ、という点で気をつけるべきことを押さえておきましょう。ブームとしての銀行融資、トレンドとしての銀行融資だと、勘違いをしやすいところです。
- 結果オーライ、にしない。
- 借りっぱなし、にしない。
- 借金バンザイ、ではない。