売上高もだいじな目標値のひとつではありますが。ほかにも、社長が考えておきたい、考えておくとよい目標値もあるものです。
というわけで。「売上高」以外に考えておきたい目標値について、3つほどお話をしていきます。
なぜ年商ばかりが取り沙汰されるのか?
会社が目指す「目標値」を考えるときに、真っ先に挙がるものと言えば「売上高」です。当社は年商(年間売上高)〇〇億円を目指します! みたいな。
もちろん、売上高もだいじな目標値のひとつではありますが。ほかにも、社長が考えておきたい、考えておくとよい目標値もあるものです。具体的には、こちらの3つ↓
- 税引後利益
- 新規借入額
- 預金残高
さぁ、いかがでしょう。これらの値について、目標はありますか? 3つすべての目標値を掲げている社長は、あまり多くないだろうと推測します。
というわけで。どうしてこれらの目標値を考えておくべきなのか、考えるときにはどのようなことに気をつければいいのか。このあと順番にお話をしていきます。
社長が「売上高」以外に考えておきたい目標値3選
【目標値1】税引後利益
社長が「売上高」以外に考えておきたい目標値の1つめ。それは、税引後利益です。文字どおり、税金を引いたあとの利益。損益計算書で言うと、いちばん末尾にある項目になります。
利益がだいじだ、というのは言わずもがな。ところが、いざ利益が出ると、「税金をたくさん払うのはイヤだ」と利益を避けてしまう社長は少なくありません。利益を出したくて会社をはじめたはずなのに、なんともおかしなハナシです。
もちろん、払う必要がない税金まで払う必要はありませんが。出せるはずの利益を避ける(多くの場合、経費を増やす)ようでは、内部留保を増やすこともできず、財務基盤はグラつくばかりです。
内部留保を増やすとはすなわち、貸借対照表の利益剰余金を増やすこと。利益剰余金を増やすには、税引後利益を増やすこと。利益を出して、税金を払ってはじめて内部留保ができるしくみになっています。
言い換えると、税金を払うことで会社は強くなる。そういうことです。だからまずは、利益を出す。いくらの利益を出すか、目標値を考えるようにしましょう。
はじめから税金も考慮したうえで、「税引後利益」の目標値を決めておけば、税金を払うのがイヤになって利益を減らすようなことにはならないはずです。
では、利益を「増やす」ためにはどうしたらいいのか? ひとつのヒントとして、「値上げ」と「減らす」ことをおすすめします。
たとえば、いま1万円で売っている商品があれば、5%値上げする。当然、利益が増えますよね。ただ値上げをすればいい、というわけではありませんが。けして少なくはない会社が、値段を安く付けすぎています。
デフレが長く続くなかで、まわりに合わせるという理由で値下げを続けてきた会社があります。見に覚えがあれば、まずは値段を見直してみましょう。
また、商品数が増えている会社も少なくありません。同業他社がそうしているから、お客さまから要望されるから。商品数を増やし続けてきたような会社は、思い切って5%ほど商品数を減らしてみる。
商品数が多ければ、それほど売れていない商品はあるものです。商品数が減れば、在庫管理や廃棄にかかるコストを削減することにつながります。商品数ばかりでなく、営業日数・営業時間を減らすのも一法です。
こうして、5%の「値上げ」と、5%の「減らす」を実行することで、5%の利益アップを狙います。
値上げをしたことで客離れもあるでしょうが、値上げ分の利益でカバーする。場合によっては、値上げ前の利益を上回ります。商品数や営業日数・時間などを減らすことで、コストを減らして利益を増やす。人手や時間が空くので、既存商品を磨き込むことで、さらなる値上げをはかることもできます。
例として「5%」を挙げましたが、自社の状況に応じて、何%にするかは検討してみましょう。いずれにせよ、「値上げ」して「減らす」ことで、税引後利益を増やす。税引後利益の目標値を掲げることです。
[ad1]【目標値2】新規借入額
社長が「売上高」以外に考えておきたい目標値の2つめ。それは、新規借入額です。もう少し具体的に言うと、向こう1年であらたにいくら借入をするか? という目標値になります。
その新規借入額を算式であらわすと、次のとおりです↓
目標新規借入額 = 年間返済額 ー(税引後利益 + 減価償却費)
この算式を理解するために、まずは「年間返済額」から見ていきましょう。ここで言う「年間返済額」とは、これから向こう1年間で銀行に返済をする予定の金額です(利息は除いた元本部分)。
いま現在の銀行借入について、借入時に受け取っている「返済予定表」を確認すれば、「年間返済額」は計算できます。その年間返済額を、会社は向こう1年のあいだに支払わねばならないわけです。
そのための「原資」は?
さきほど、【目標1】で見た「税引後利益」です。税金を払ったあとの利益が、借入金の返済原資になります(利息は経費として、税引後利益のなかでマイナスされています)。
この税引後利益で、年間返済額をまかなえればよいのですが。そううまくはいかないことが少なくありません。まかなえない場合には、その分の金額をあらたに借りることで補えばいい(まかなえる場合については【目標値3】で後述します)。
というのが、さきほどの算式の意味になります。年間返済額から税引後利益をマイナスしてみて、なお年間返済額が残るようなら、その分のおカネを新規借入額として目標値にする。
ちなみに。算式中で、税引後利益に減価償却費をプラスしているのは、減価償却費がおカネの支出をともなわない費用だからです。なんのこっちゃ? と思われるかもしれませんが。ひとまず、そういうもんなんだな、と考えておきましょう。
なんにせよ、借入返済のおもな返済原資は「税引後利益」です。
税引後利益が、いま現在の年間返済額に満たなければ、手元のおカネを取り崩して返済をすることになります。結果として、資金繰りが厳しくなる。そうならないように、新規借入額の目標値を決めて、余裕をもって銀行から借入をしておきましょう。
新規借入額の目標がなく、実際におカネがなくなってからあわてて、銀行に融資を依頼している社長は少なくありません。そういう「場当たり的」な社長を銀行は嫌うものです。融資が受けにくくもなるところですから、気をつけましょう。
[ad1]【目標値3】預金残高
社長が「売上高」以外に考えておきたい目標値の3つめ。それは、預金残高です。売上や利益の目標はあっても、預金残高の目標を決めている社長はあまりいないのではないでしょうか。
ところが、いくら売上や利益があっても、おカネ(預金)が無くなれば会社はつぶれてしまいます。逆に、売上や利益が無くても、おカネがあれば会社はつぶれません。
言うなれば、「さいごはおカネ」なのにもかかわらず。預金残高に対する目標が決められていない。考えてみれば、おかしなハナシです。
というわけで、ぜひ、預金残高の目標値も決めておきましょう。具体的には、「少なくとも売上高半年分以上」が目安になります。それくらいのおカネは手元に置いておきたい。
最近では新型コロナの経験から、数ヶ月ていどのおカネでは資金繰りがもたないことがある… とわかっています。いっぽうで、売上高半年分くらいのおカネがあれば、余裕をもって対応することができました。
とはいえ。そんなにたくさんのおカネを稼ぐことはできない! と、思われるかもしれません。けれども、すべてを自社で稼ぐ必要はなく、足りない分は銀行借入で補いましょう。
自社で稼いでおカネであろうと、銀行から借りたおカネであろうと、おカネはおカネです。いざというときには、使うことができるおカネです。
さきほど、【目標値2】のところでは、新規借入額の目標値を確認しました。税引後利益で年間返済額をまかなえない分の借入をしましょう、という話です。
じゃあ、まかなえていれば借りなくていいのかと言えば、そうではありません。なぜなら、預金残高という目標値もあるからです。
年間返済額分のおカネとは別に、目標の預金残高を達成するための借入も必要。ここを理解していれば、銀行から融資のセールス(おカネを借りませんか?)を受けたときにも、カンタンに断ったりすることはなくなるはずです。
銀行がセールスをしているのは「借りてほしい」から。ウラを返せば、借りるには借りやすい状況だと言えます。そういう状況をうまく活かしながら、預金残高を増やしていきましょう。
売上高半年分となると、一朝一夕とはいかないかもしれませんので。預金残高は、中長期の目標値として取り組むのがおすすめです。
まとめ
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売上高もだいじな目標値のひとつではありますが。ほかにも、社長が考えておきたい、考えておくとよい目標値もあるものです。
売上高ばかりを追い求めていると、見落としがちなことがありますので。本記事で挙げた3つの目標値についても考えてみるとよいでしょう。
- 税引前利益
- 新規借入額
- 預金残高