売上や利益が減少してきたときに、会社が気をつけるべき3つのことについて、お話をしていきます。
気をつけるべきことはいろいろとある。
銀行融資については、いろいろと気をつけるべきことがあるけれど。会社の売上が減ってきたとき、利益が減ってきたときにこそ、気をつけるべきことがあるのはご存知でしょうか?
というわけで。売上や利益が減少してきたときに、会社が銀行融資で気をつけるべき3つのことについて、お話をしていきます。具体的にはこちらです↓
- 運転資金の減少
- 折り返し融資
- 設備資金の融資
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
売上・利益が減少してきたときに銀行融資で気をつけるべき3つのこと
運転資金の減少
融資を受けるときに、銀行から聞かれるのが「資金使途」。平たく言うと、「借りたおカネの使いみち」です。その資金使途は大きく2つに分かれます。
ひとつは「設備資金」。その名のとおり、設備(建物、土地、機械、自動車、器具など)を購入するためのおカネです。もうひとつは「運転資金」。こちらは、仕入代金や経費の支払いをするためのおカネになります。
このうち、運転資金について。算式であらわすと次のとおりです↓
運転資金 = 売上債権 + たな卸資産 ー 仕入債務
売上債権とは売掛金や受取手形のこと、入金を待っている金額になります。たな卸資産とは在庫のこと、いずれ売れて入金されるのを待っている金額です。
したがって、売掛金や受取手形といった売上債権と、たな卸資産が多い会社ほど、入金されるのを待っている金額が大きいため、資金繰りは厳しくなります。
いっぽうで、仕入債務とは買掛金や支払手形のこと。売上債権とは逆に、支払いを待ってもらっている金額です。
というわけで。さきほどの算式のとおり、「売上債権 + たな卸資産」と「仕入債務」とを相殺した金額が運転資金。運転資金の金額分くらいはおカネを持っていないと、会社の資金繰りは厳しくなります。
その運転資金分のおカネを、会社が自前(自己資金)で用意できればいいのですが。なかなかそうもいかないので、銀行融資で用意しよう。というのが、資金繰りのセオリーです。
この点で。会社の売上が減ってくると、運転資金の金額(算式で計算した金額)も減ってきます。売上が減れば、売掛金やたな卸資産などは減るものです。結果として、運転資金の金額は減ります。
(売上が減れば仕入も減るので、仕入債務も減りますが。通常、売上債権やたな卸資産の減りのほうが大きなものです)
たとえば、売上が減る前の運転資金が 3,000万円という会社があったとして。銀行から、3,000万円の融資を受けていたとします。
ところが。売上が減ることで、運転資金の金額が 2,000万円まで減るとしたら。銀行としては、1,000万円が「貸しすぎ」ですから(3,000万円 ー 2,000万円)、これ以上の運転資金の融資は厳しくなることを理解しておきましょう。
また、運転資金分のおカネを、当座貸越や短期継続融資で借りている場合。売上が減ったことを理由に、借りられる金額を減額されたり、場合によっては長期返済の証書貸付に変更される可能性があります。
売上の減少にともない、利益も減少していれば。銀行としてはなお不安を感じるところですから、いっそう可能性は高まるところです。売上・利益が減少すれば、運転資金の融資が影響を受けることを覚えておきましょう。
[ad1]折り返し融資
銀行からの「借りかた」として、「折り返し融資」というものがあります。もともと借りていた金額まで借り直す。
たとえば、当初 1,000万円の融資を受けていたところ、毎月返済を続けて、融資残高が 600万円まで減っている。そこで、返済が済んだ 400万円を借り直すことで、もともと借りていた 1,000万円まで残高を戻す。これが、折り返し融資です。
銀行としては、「いちど貸した」という実績があるので、融資をしやすいのが折り返し融資の特徴でもあります。実績を重視する日本政策金融公庫などはとくに借りやすいので、借りかたとして覚えておくとよいでしょう。
目安として、もともと借りていた金額の3分の1以上返済をしていれば、折り返し融資は受けやすくなります。
ところが。会社の売上が減っている、利益が減っているとなれば、銀行としても不安でしょう。貸したおカネが「赤字補てん」に使われてしまうと、回収できない可能性が高まるからです。
よって、さすがの折り返し融資でも、売上や利益が減少したときには厳しくなることを忘れてはいけません。
であるならば、業績が良いうちに、少なくとも業績が悪くなる前に、会社は折り返し融資を受けておくべきです。
融資を受けなくてもじゅうぶんなだけのおカネがある場合を除いて、借りられるときに借りておく。借りられるうちに、折り返し融資を受けておくようにしましょう。
現金預金の残高が、平均的な売上高の3ヶ月分に満たないような会社は「不十分」だと言えます。なにかあったときには、まもなく資金が枯渇してしまうからです(新型コロナが典型)。
さらに。現金預金の残高が、平均的な売上高の1ヶ月分そこそこという会社は少なくありません。平均的な売上高の1ヶ月分に満たないとなれば、「超危険水域」になりますから。すぐにでも、折り返し融資を検討しましょう。
[ad1]設備資金の融資
銀行融資の資金使途のひとつ、「設備資金」について。設備資金の融資を受けるにあたっては、その設備が事業に貢献するのかどうか? がポイントになります。
つまり、設備を導入することで利益は増えるのか? 増えた利益で、借りたおカネを返済できるのか? このあたりを設備投資計画としてまとめておくことが大切です。
では、設備資金として借りるおカネの返済額は、その設備を導入することで増える利益でまかなえさえすればいいか? というと、実はそうでもありません。
設備資金を借りる時点で、売上が減っている・利益が減っている傾向にあるようだと、設備資金の融資が受けにくくなることを覚えておきましょう。
なぜなら、設備投資によって増える利益・増えるおカネが、もともとの事業の「赤字補てん」に充てられてしまう可能性があるからです。そうなれば銀行は、設備資金の融資を回収しそびれてしまいます。
だから、銀行は融資をしづらくなるし、会社は融資が受けにくくなる。
事実、複数の店舗を持つ飲食店などが、それらの店舗の赤字を穴埋めするために、新規出店をすることで銀行から融資を受けようとするケースがあります。
設備資金と偽って借りたおカネを、既存店舗の赤字穴埋めに使ったり。設備資金といっしょに借りた、新店舗のための運転資金を、やはり既存店舗の赤字穴埋めに使ったり。
そのような使われかたを銀行は知っていますので、「設備投資以前に、その会社の売上や利益の状況はどうか?」に注意をしています。
したがって、設備資金を借りる時点で、売上が減っている・利益が減っている傾向にある会社は、設備資金の融資が受けにくくくなる。どれだけすばらしい設備投資計画だとしても、設備投資以前にどうなのか? を見られることは理解しておきましょう。
そう考えると、設備資金を借りるのであれば、会社の業績が良いとき。少なくとも、売上や利益が減少をはじめる前がいい、ということになります。
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まとめ
銀行融資については、いろいろと気をつけるべきことがありますが。
会社の売上が減ってきたとき、利益が減ってきたときにこそ、気をつけるべきことについて、押さえておきましょう。
- 運転資金の減少
- 折り返し融資
- 設備資金の融資