会社の資金繰りをラクにするのであれば、納税資金・賞与資金の融資を受けることを検討してみましょう。結果として、その後の銀行融資にも活かすことができますよ、というお話です。
だからと言って、オンライン融資はいかん。
会社が銀行から融資を受けるときの「資金使途(おカネの使いみち)」として、「納税」と「賞与の支払い」が挙げられます。
決算のときに法人税を納めるためのおカネ(納税資金)や、半年ごとに賞与を支払うおカネ(賞与資金)については、銀行から融資を受けることが可能です。
納税や賞与の支払いのためにおカネを借りるなんて… と、思われるかもしれませんが。融資を受けて支払うことで、そのあいだの資金繰りは間違いなくラクになります。
納税資金や賞与資金の融資は、通常、返済期間6ヶ月の分割返済です。納税や賞与の支払いで、いちどにおカネが出ていけば、その分だけ資金繰りは厳しくなります。けれども、融資によって6ヶ月の分割返済ができると考えれば、ラクになることがわかるでしょう。
なるほど、わかった。じゃあ、納税資金・賞与資金は借りよう! ということで、「オンライン融資(AI融資)」を利用しようとする社長がいます。銀行融資に比べて、借りやすいからです↓
ところが、銀行融資であれば、その後の銀行融資にも活かすことができます。ですから、まずは納税資金や賞与資金の融資を検討すること。借りるなら銀行融資で、と考えるようにしましょう。
では、納税資金・賞与資金を銀行から借りると、その後の銀行融資にどう活きるのか? 具体的には、ことらの3つです↓
- プロパー融資で借りる
- 経営者保証なしで借りる
- 取引がない銀行から借りる
納税資金・賞与資金の融資を最大限に活かすために、これらのポイントを押さえておきましょう。それではこのあと、順番に見ていきます。
納税資金・賞与資金を銀行融資に活かす!3つのポイント
【ポイント1】プロパー融資で借りる
納税資金・賞与資金を銀行融資に活かすためのポイント、1つめ。それは、「プロパー融資で借りる」です。
民間銀行からの融資は、大きく2つに分かれます。1つは、信用保証協会付き融資。会社が返済できなくなってしまった場合には、信用保証協会が肩代わりをしてくれる融資です。
もう1つは、プロパー融資。信用保証協会の保証がない融資になります。したがって、会社が返済できなくなってしまった場合には、銀行が 100%の損をかぶるのがプロパー融資です。
銀行にとって、貸しやすいのはどちらでしょう? いざというときには、信用保証協会が肩代わりをしてくれる「信用保証協会付き融資」ですよね。銀行はそうカンタンにプロパー融資をしない。するとしたら、業績が良い会社に限られます。
というわけで。会社にとって借りやすいのは、「信用保証協会付き融資」だと理解しておきましょう。
とはいえ、借りやすいものばかりを借りているわけにはいきません。なぜなら、信用保証協会付き融資には「上限(会社の規模・状況によって異なります)」があるからです。いくら銀行が貸しやすいと言っても、上限以上に借りることはできません。
また、信用保証協会付き融資を受けるには、会社が「保証料」を支払う必要があります。これがかなりの高額です。金利に「1%上乗せ」されるくらいのイメージなります(コロナ融資では免除もありましたが)。
そこで会社は、信用保証協会付き融資ばかりではなく、プロパー融資も受けられるようにしなければいけません。その「きっかけ」として、納税資金・賞与資金の融資は役立ちます。
納税も賞与の支払いも、「会社の業績が良いからこそ」だと言えるでしょう。黒字だからこそ納税があるわけですし、余裕があるからこそ賞与の支払いだってできるというものです。
であるならば。納税資金・賞与資金で「業績の良さ」をアピールしつつ、プロパー融資を受けることができそうですよね。実際にできますので、ぜひチャレンジをしてみましょう。
ちなみに、黙っていたのではプロパー融資にはまずなりません。プロパー融資は銀行にとってリスクが大きいものだからです。プロパー融資を受けたいのであれば、会社のほうからしかけること。しかけるチャンスを逃さないことが大切になります。
【ポイント2】経営者保証なしで借りる
納税資金・賞与資金を銀行融資に活かすためのポイント、2つめ。それは、「経営者保証なしで借りる」です。
会社が銀行から融資を受ける場合、社長が保証人になっていること(経営者保証)は少なくありません。経営者保証ガイドラインができて以降、経営者保証は減少傾向にはありますが。それでもまだまだです↓
とはいえ、社長としては経営者保証をはずしたいものですよね。あまり考えたくないことではありますが、会社がつぶれてしまったときにでも、経営者保証がなければ社長個人への影響は免れることができるので。
また、急に社長が亡くなってしまった場合でも、経営者保証がなければ、家族に負担を残さずにすみます。逆に、経営者保証があれば、その保証は残された家族に引き継がれてしまうわけで。なかなか、やっかいな問題だと言えるでしょう。
ではどうやったら、そんな経営者保証をはずすことができるのか? 細かい要件は抜きにして、カンタンに言えば、会社の「業績が良い」ことです。
会社の業績が良ければ、銀行が貸したおカネを回収しそびれる可能性は小さくなります。であれば、経営者保証までしなくとも、融資をしてもだいじょうかな。と、考えられるところです。
さきほどもお話をしたとおり、納税資金・賞与資金が必要になるのは、会社の業績が良いことの証でもありますから。納税資金・賞与資金の融資については、「経営者保証なし」をお願いしてみましょう。
やはり、黙っていたのでは、経営者保証は実現しませんから。会社のほうから、お願いをすることが大切になります。
その結果、経営者保証をはずすことができたら、その「実績」をもって、他の取引銀行にも「経営者保証なし」をお願いしてみましょう。実績が信用になりますし、銀行間の競争意識もはたらいて、お願いがとおりやすくなるものです。
このあたりは、さきほどのプロパー融資も同じことになります。どこかの銀行でプロパー融資を受けることができたら、それをもって、他の銀行にもプロパー融資をお願いするのがセオリーです。
ちなみに。既存の融資については経営者保証をはずすのは厳しいので、あらたに融資を受けるタイミングでお願いをしてみるのがよいでしょう。あらたな融資から、徐々に経営者保証をはずしていくイメージです。
【ポイント3】取引がない銀行から借りる
納税資金・賞与資金を銀行融資に活かすためのポイント、3つめ。それは、「取引がない銀行から借りる」です。
納税資金・賞与資金の融資を受けるのであれば、いままで取引がない銀行を狙ってみましょう。つまり、納税資金・賞与資金の融資を取引銀行の開拓に使う、ということです。
銀行は、「はじめての融資」を警戒しています。相手がどんな会社か、まだよくわからないのですから当然でしょう。だとしたら、融資をするにしても「長い期間」は貸したくありませんよね。
まずは、できるだけ短い期間で融資をしてみて。そのあいだに会社のようすをつかみつつ、問題がなければ、徐々に返済期間も長くしていく。というのが、銀行の考え方です。
この点で。納税資金・賞与資金の融資は、通常、返済期間は6ヶ月。銀行融資のなかでも、とりわけ返済期間が短いものになります。まず融資をしてみるのであれば、うってつけの融資だと言ってよいでしょう。
繰り返しになりますが、納税も賞与も会社の業績が良いことの証ですから、回収しそびれる可能性は小さい。また、資金使途も明確ですから、貸したおカネが別のことに使われるリスクもありません。
このあたりをふまえて、取引がない銀行から融資を受ける「きっかけ」として、納税資金・賞与資金の融資を利用してみましょう。そう考えると、すでに取引がある銀行から納税資金・賞与資金の融資を受けるのは、ちょっともったいないハナシです。
まとめ
会社の資金繰りをラクにするのであれば、納税資金・賞与資金の融資を受けることを検討してみましょう。結果として、その後の銀行融資にも活かすことができます。
- プロパー融資で借りる
- 経営者保証なしで借りる
- 取引がない銀行から借りる