コロナを経て、むしろ資金繰りはラクになったという会社について。ほんとうにラクになったと言えるのか、これからも安泰と言えるのか?
コロナを経て資金繰りがラクになった会社が、銀行融資について考えるべきことをお話をしていきます。
ほんとうに安泰なのか?
最近見かけたとある調査結果によると、「2021年春時点における会社の資金繰り状況」について、約4割の会社が「資金繰りはラクになった」と回答しています。
さらに4割の会社は「どちらとも言えない」という回答。つまり、コロナを経て資金繰りが厳しくなった会社は2割くらいだ、ということです。
では、8割の会社の資金繰りは「ほんとうに安泰なのか?」といえば。それはまた、別の話でしょう。なぜなら、コロナ禍における緊急融資を受けたことによって、一時的に手元のおカネが増えているだけかもしれないからです。
新型コロナ以降、国や地方自治体の主導のもと、大規模な融資が展開されてきました。これにより、新規融資を受けることができたり、あるいは、既存の融資をまとめて一本化することで「返済の据え置き」や「返済額の圧縮」ができた会社もあるでしょう。
結果として、手元のおカネ(現金預金)が増えた。だから、「自社の資金繰りは安泰だ」と言いうのであれば。銀行融資について、いま考えておくべきことがあります。こちらです↓
- 「返済額>キャッシュフロー」に陥っていないか?
- 資金使途違反をしようとしていないか?
- 銀行とのつきあいを深めているか?
ラクだったはずの資金繰りが一転、思わぬピンチを招くことがないように。これら3つについて、考えておくようにしましょう。それではこのあと、順番に見ていきます。
コロナを経て資金繰りがラクになった会社が銀行融資について考えるべき3つのこと
「返済額>キャッシュフロー」に陥っていないか?
いま現在、資金繰りが安泰だとしても。「返済額>キャッシュフロー」の状態にある会社は注意しなければいけません。もう少しくわしく言うと、「年間返済額>税引後利益+減価償却費」の状態にある会社です。
そもそも、借りたおカネの返済原資は、「税引後利益+減価償却費(キャッシュフロー)」であり。その返済原資が、年間返済額を下回るようであれば、会社は手元のおカネを取り崩して返済をしていくことになります。
では、決算書を見たときに、はたして利益は出ているのか? 税引後利益はプラスなのか? コロナを経て、売上が減少。いまもなお売上は戻らず、税引後利益はマイナス… という会社は少なくないはずです。
それでも、いまは借りたおカネがあるからいいでしょう。「年間返済額>税引後利益+減価償却費」だとしても、コロナ禍で借りたおカネのなかから返済することができます。
しかし、それはいつまでもできることではありません。返済を据え置いている会社であれば、返済が始まった途端に、猛烈な勢いでおカネが減っていくことも想定できるところです。
だから、いま余裕があるうちに、利益改善に取り組んでおきましょう。
とはいえ、カンタンに利益改善ができるなら、だれも苦労はしません。実際には、多少の時間をかけながら改善していく… というのが現実的でしょう。そのときに必要になるのが、銀行融資です。
利益改善が不十分なあいだは、おのずと手元のおカネが目減りをしていきます。目減りしたおカネを手当てするのに、銀行融資が欠かせません。
けれども、利益は不十分(場合によっては赤字)、コロナ禍の赤字で貸借対照表は「債務超過(資産よりも負債が多い)」。あらたな融資は、受けにくい状態だと言えます。では、どうするか?
会社の「将来性」を伝えられるようにしましょう。いま現在の利益は不十分だけれど、いま現在は債務超過だけれど、3〜5年以内には改善できるという「経営改善計画書」を銀行に提示します。計画が妥当なものであれば、銀行の理解を得られるはずです。
また、「社長個人の財産(預金、不動産など)」を銀行に開示するのもいいでしょう。銀行にとっては安心材料になるので、融資を受けやすくする効果があります。
いずれにせよ、利益が改善するまでのあいだにおカネが足りなくならないよう、あらたな融資を受けられるように、いまのうちから銀行対応に取り組んでおきましょう。
[ad1]資金使途違反をしようとしていないか?
コロナ禍における緊急融資によって、かつてないほどおカネが増えた。という会社は、少なくないようです。
これを受けて、「このままおカネを置いておくのはもったいない」と考えている社長がいます。実際に、おカネをつかう社長がいます。つかうこと自体に問題はありませんが、つかいかたには注意が必要です。
たとえば、運転資金として借りたおカネ(コロナ禍での融資はほとんどが運転資金のはず)で、クルマを買ったり、株式や投資信託、仮想通貨などを買ったり。これはいけません。
また、会社から社長個人におカネを貸し付けているケースもあります。これもまた、運転資金とは違うつかいかたをしている点では同じようなものです。
おカネを借りる当初の「つかいみち」のことを「資金使途」と言い、それとは違うつかいかたをすることを「資金使途違反」と言います。
いろいろ見聞きしていると、これがだいぶあるようです。
銀行に資金使途違反が見つかると、原則、一括返済を求められることになります。それを免れたとしても、今後その銀行から融資を受けることは難しくなるでしょう。
信用保証協会付き融資である場合には、今後の信用保証協会付き融資まで受けられなくなってしまいます。中小企業にとっては「致命的」です。
そんなことにならないよう、くれぐれも資金使途違反には注意しましょう。
そもそも、いまおカネがあったとしても、それはいずれ返すべきおカネです。「通帳に記載されているおカネ=つかえるおカネ」ではありません。そんなのあたりまえだろう、と思われるかもですが。通帳だけを見ていると勘違いをしてしまうものです。
そのあたり、「対策」はありますので。よろしければ、こちらの記事も参考にどうぞ↓
銀行とのつきあいを深めているか?
コロナを経て、今後、銀行からの融資は厳しくなるものと想像します。信用保証協会付き融資は、「出すだけ出した」という状況ですから、そうなると、今後はプロパー融資が中心です。
プロパー融資とは、信用保証協会の保証がない融資。会社が返済できなくなった場合には、銀行が 100%の損をかぶる融資です。したがって、プロパー融資の審査は、信用保証協会付き融資よりも厳しくなります。
そのようななかで、今後も融資を受けられるようにするにはどうしたらいいか?
それは、銀行とのつきあいを深めておくことです。つきあいを深める方法はいろいろありますが、ひとつは、「定期的に試算表を提示する」ことです。
1年に1回だけ決算書で数字を見るよりも、試算表で定期的に数字を見れるほうが情報量が増えるので、銀行の「会社に対する理解度」が高まります。
また、定期的に試算表をつくっている会社ばかりではありませんから、定期的に試算表を提示できる会社は、銀行から「管理意識・管理能力が高い会社」と見られるものです。
結果として、融資が受けやすくなります。
ちなみに。従来は、試算表ができあがったら、銀行担当者に会社まで取りに来てもらうというのがふつうでした。ところが、最近では銀行もリストラが進んでいます。支店が減り、銀行員の数が減り、銀行担当者も忙しいのです。
したがって今後は、試算表ができあがったら、会社のほうから銀行に届けるということも考えましょう。待っていれば銀行担当者が来てくれる、という時代は変わりつつあります。
銀行とのつきあいを深めるためには、会社の側から、より積極的に動くことが必要です。
まとめ
コロナを経て、むしろ資金繰りはラクになったという会社について。ほんとうにラクになったと言えるのか、これからも安泰と言えるのか?
コロナを経て資金繰りがラクになった会社が、銀行融資について考えるべきことをお話をしてきました。ラクだったはずの資金繰りが一転、思わぬピンチを招くことがないように。考えておくようにしましょう。
- 「返済額>キャッシュフロー」に陥っていないか?
- 資金使途違反をしようとしていないか?
- 銀行とのつきあいを深めているか?