銀行の融資審査において、ウエイトが高まっている定性評価について。銀行から聞かれがち・見られがちなことをお話ししていきます。
定性評価せざるをえない状況。
銀行の融資審査に関わることとして、「定量評価」と「定性評価」があります。
平たく言うと、「定量評価」とは、会社の決算書や試算表に記載された「数字」による評価であり。「定性評価」とは、それ以外の評価ということになります。
このうち、銀行の融資審査では、7〜9割がた「定量評価」によるものと考えていいでしょう。なんだかんだ言っても、数字はだいじなのです。
とはいえ、コロナを経たいま(きょうは2021年7月14日)。定性評価のウエイトが、以前よりも高まっているものと考えます。なぜなら、定量評価オンリーで審査に耐えられる会社が減っているから。
コロナで事業にダメージを受けた会社は多く、いわゆるコロナ融資によって、負債を大きく増やした会社は少なくありません。現状、利益(返済原資)も回復していないとなると、定量評価は厳しいものがあります。
そこで、定性評価です。以前から評価されていた部分ではありますが、あらためて評価をする。そのうえで、定性評価のウエイトが高まっている。という、背景になります。
そこで。定性評価として銀行から聞かれがち・見られがちなことを、確認しておきましょう。具体的には次の7つです↓
- 実質的な経営者はだれか?
- 役員の構成、関係性
- 社長の個人資産
- 経理・財務をもっとも把握しているのはだれか?
- 経理・財務の管理方法
- メインバンクの融資姿勢
- 売上先・仕入先の状況
これらについて、聞かれたらスムーズに答えられるように。もっと言えば、聞かれずとも伝えるのがおすすめです。それではこのあと、順番に見ていきましょう。
定性評価として銀行から聞かれがち・見られがちなこと7選
実質的な経営者はだれか?
そんなの社長に決まっているだろう、と思われるかもしれませんが。そうでもありません。諸事情あって(だいたいは良くないこと)、じぶんが社長にはなれないため、配偶者や両親などを「表面的」に社長にしているケースはあります。
ですから銀行は、「実質的」な経営者がだれなのか? に目を光らせているものです。このあたり、社長が銀行対応を他人に任せてばかりいると、実質的な経営者がわかりにくくなるので気をつけましょう。
これに関連して、銀行は「後継者がいるかどうか」にも注目をしています。後継者がいれば、長いお付き合いができますし、長い返済期間での融資もしやすくなるでしょう。
ところが、すでに高齢の社長で後継者もいないとなると、あまり積極的な融資はできません。
ですから、後継者がいる場合には、こちらのほうから銀行に対してアピールしていくことが重要です。後継者が入社したとき、役員になったときなどは良いタイミングになります。
役員の構成、関係性
銀行は、社長のほかに「どんな役員がいるのか」を気にしています。親族ではなく「他人」が役員になっている場合には、社長との関係性がこじれてトラブルになるケースもあるからです。
したがって、他人の役員については、役員になった経緯や、社長との関係性(円満であることのアピール)を銀行に伝えるようにしましょう。
なお、役員がすべて親族の場合でも、必ずしも関係性が良いとは言えないこともあります。親子の仲が悪い、兄弟の仲が悪い、ということはあるものです。
そのあたりも、「経営の安定」という視点から、銀行は注目をしています。やはり、役員になった経緯や関係性などを伝えるのがよいでしょう。
あわせて、社長の「持ち株割合」も、銀行が気にするポイントです。「経営の安定」のためには3分の2以上、少なくとも2分の1以上が望ましいと考えられます。くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
社長の個人資産
中小企業にあっては、社長と会社は一心同体。というのが、銀行の見方です。事実、社長は経営者であると同時に、会社のオーナー(大株主)であることは少なくありません。
ゆえに、会社になにかあれば、社長の個人資産を投じることも多々あります。会社の資金繰りが厳しければ、社長個人のおカネをまわしてしのぐこともあるわけです。
したがって、おカネを貸している銀行としては、会社が返済できなくなったときのことも考えて、社長の個人資産がどれくらいあるのかを気にしています。
個人資産があることを確認できれば、たとえ担保にとらずとも、融資の審査上はプラスにはたらくものです。
社長としては、個人資産をあきらかにするのはイヤかもしれませんが。融資を受けやすくしたいのであれば、銀行に対して、個人資産を積極的に開示することも検討しましょう。
経理・財務をもっとも把握しているのはだれか?
会社を経営するにあたって、経理・財務はだいじな「ツール」であり、「情報」になります。その経理・財務をもっとも把握しているのはだれなのか? を銀行は見ています。
中小企業にあっては、社長が把握をしていてほしいものです。もっとも把握しているかどうかはともかく、「だれかに任せきり」というのでは困ります。
ときおり見聞きするのが、配偶者に任せきりで社長はわからない。顧問税理士に任せきりで社長はわからない。これでは、「この会社、この社長におカネを貸してだいじょうぶだろうか…」と、銀行が不安になるのもムリはありません。
社長が「作業」を任せるのはいいにしても、「把握」を任せることがないように。会社のトップとして、経理・財務の状況把握に努めましょう。
銀行から、経理・財務に関することを聞かれたときに、「妻(夫)に聞いてください」「顧問税理士に聞かないとわからない」などとは言わないように、ということです。
経理・財務の管理方法
経理・財務について、会社がどのように管理しているか? を銀行は見ています。
経理であれば、経理処理をしているのはだれなのか(会社か、顧問税理士か)。財務であれば、資金繰り予定表をつくっているのかどうか、など。
会社自身で経理・財務の管理ができていなかったり、甘かったりするようだと、銀行としては不安です。その不安を取り除くための情報提供をしていくとよいでしょう。
たとえば、試算表を定期的に提示する(経理が甘いと定期的には提示できません)、試算表とあわせて資金繰り予定表も提示する(資金繰り予定表がない会社の財務は場当たり的です)、決算書の提示と合わせて翌期の数値計画を提示する(経理・財務を先読みできることの証になります)、など。
中小企業にあっては、経理・財務の管理が「自力」では難しいこともあるでしょう。そのときには、顧問税理士やコンサルタントのチカラを借りることも1つの方法です。
ただし、経理・財務は「会社のもの」であることを忘れてはいけません。管理を他人任せにするあまり、試算表も決算書も計画書も「カタチばかり」になっているケースがあります。
書類やツールがあることがだいじなのではなく、それらを社長自身が「経営に活かす」ことがだいじなのは言うまでもありません。
メインバンクの融資姿勢
銀行は、メインバンクはあるのか? あるなら、どこの銀行か? を気にしています。そのうえで、メインバンクの融資姿勢をつねに注視しています。
サブバンク以下の銀行にとっては、メインバンクの融資姿勢が会社の「状態」を把握するヒントになるからです。
もしも、メインバンクからの融資が増えているのであれば(積極姿勢)、「会社は悪くない状態にあるのだろう」という見方をします。逆に、メインバンクからの融資が減っていれば(消極姿勢)、「会社は悪い状態にあるのかもしれない」という見方をします。
メインバンクは、取引銀行のなかでもっとも会社に関する情報を有しているものであり、より正しい把握・判断ができるはずです。加えて、メインバンクには「メインバンクとして会社を支援する」との役割と矜持があります。
にもかかわらず。メインバンクからの融資が減っていたら…? それは、その会社が相当マズい状態にあるということです。メインバンクすら躊躇するほど状態が悪い、ということです。
したがって、会社の状態が悪いわけではなく、財務戦略として会社みずから、メインバンクからの融資をしぼっているのであれば。それを、他の取引銀行に伝えたほうがいいでしょう。
売上先・仕入先の状況
銀行は、融資先の「商売の良し悪し」をはかろうとしているものです。良い商売であればもうかるし、悪い商売であればもうからない。ゆえに、商売の良し悪しは大切です。
そこで、売上先や仕入先はどこなのか? を見ています。信用力がある売上先か、売上がいちぶの売上先に偏りすぎていないか。品質のよい品をあつかっている仕入先かどうか、など。
売上先や仕入先の状況によって、あるていどは商売の良し悪しについて察しがつきます。
というわけで。会社は、売上先一覧や仕入先一覧、売上先・仕入先ごとの取引金額推移などの資料を、銀行に提示するとよいでしょう。
この点で。売上先に自信がない、仕入先に自信がない。つまり、もっと良い売上先がほしい、もっと良い仕入先がほしいというのであれば。正直に銀行に話してみるのも、1つの方法です。
銀行はいま、ビジネスマッチングにもチカラを入れていますから、良い売上先・仕入先を紹介してもらえることもあります。銀行はおカネを貸すだけではなく、事業支援の役割もあることは覚えておきましょう。
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まとめ
銀行の融資審査において、ウエイトが高まっている定性評価について。銀行から聞かれがち・見られがちなことをお話ししてきました。
聞かれたらスムーズに答えらるように。もっと言えば、聞かれずとも伝えるのがおすすめです。
- 実質的な経営者はだれか?
- 役員の構成、関係性
- 社長の個人資産
- 経理・財務をもっとも把握しているのはだれか?
- 経理・財務の管理方法
- メインバンクの融資姿勢
- 売上先・仕入先の状況