融資を受ける際の資金使途のひとつ「減産資金」について。減産資金を資金使途に融資を受けるときのポイントをまとめてお話します。
減産せざるを得ない会社もあれば、あえて減産する会社もある。
会社が銀行から融資を受けるにあたっては、「資金使途(借りたおカネの使いみち)」が必要です。銀行が、資金使途なしにおカネを貸してくれることはありません。
その「資金使途」には大きく分けて2つ、「設備資金」と「運転資金」があります。
設備資金とは、建物や土地、自動車、備品類などの「設備」を購入するためのおカネです。いっぽう、運転資金とは、設備資金以外のおカネ。具体的には、仕入代金や諸経費を支払うためのおカネが、運転資金です。
このうち、運転資金はさらに細かく分かれます。そして、細かく分かれたなかのひとつに、「減産資金」があります。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、減産資金とは? 売上不振によって減産せざるをえない場合や、方針変更により減産をはかる場合など、会社が「減産する」にあたり必要になるおカネを言います。
減産直後は仕入債務(買掛金・支払手形)や諸経費の支払いをするのに、資金不足が起きることは少なくありません。減産するのに、おカネが必要になることはあるわけです。
新型コロナの影響によって、減産せざるを得ない会社もあるでしょう。新型コロナを経て、構造改革のひとつとして、あえて減産に踏み切るような会社もあるでしょう。
いっぽうで、減産資金には「後ろ向き」な要素があるため、銀行の対応は慎重です。どちらかと言えば、融資を受けにくいケースだと言えます。
というわけで。減産資金を資金使途にして、融資を受ける場合のポイントを押さえておきましょう。具体的にはこちらになります↓
- 減産する理由をあきらかにする
- 減産計画を示す
- 減産後の損益・資金繰りを説明する
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
減産資金を資金使途に融資を受けるときのポイント
減産する理由をあきらかにする
まずは、「減産する理由(どうして減産するのか)」を銀行に伝えましょう。なぜなら、銀行は「ほんとうに減産資金が資金使途なのか?」と疑っているからです。
たとえば、不良在庫。売上見込を誤り、在庫の山を築いてしまった。売上入金はないのに、仕入支払はある状態ですから、資金繰りが大幅に悪化します。だから融資を受けたい…
というのであれば、それは減産資金とは言えません。
不良在庫である以上、通常の価格で販売することは難しく。返済原資の確保も難しいことから、銀行としては非常に融資をしにくい状況です(このようなケースの資金使途は「滞貨資金」と呼ばれます)。
また、減産以前に「赤字」であった場合。やはり、減産資金とは言えず、赤字を補てんするための資金ではないのか? だったら、融資をすることはできない… と、銀行は考えます。
したがって、そもそも不良在庫があるとか、そもそも赤字だというケースを銀行は疑っているため、その疑いを晴らすために、「減産する理由をあきらかにする」ことがポイントになるわけです。
たとえば、「売上不振によって在庫が過剰になっているため(一時的に過剰なだけで不良在庫ではない)」とか、「会社の将来を見据えた構造改革の一環として」などといった理由が考えられます。
減産計画を示す
続いて、減産の金額的影響と、減産の時期・期間を、「減産計画」として、銀行に示しましょう。このあたりが不明瞭だと、銀行は「いくらの融資をすればいいのか」の検討ができないからです。
ひとくちに「減産」と言っても、一時的な減産もあれば、一時的ではない減産もあります。
在庫過剰を理由とする減産であれば、いずれ減産は終了することが前提です。いっぽう、会社の構造改革を理由とする減産であれば、減産しっぱなしになります。減産もいろいろです。
したがって、減産の金額的影響と、時期・期間とを示すことが必要になります。
具体的には、過去の売上・仕入・在庫実績の推移、今後の売上・仕入・在庫見込みの推移、をまとめた書類を用意しましょう。売上・仕入・在庫は、「商品・製品ごと」にまとめるのがベストです。
なお、在庫過剰を理由とする減産については、いずれ減産は終了することはさきほどお話をしたとおりです。つまり、いずれ売上が回復することが前提になります。
銀行としては、ほんとうに売上が回復するのか? というのは気になるところでしょう。よって、過剰在庫に陥った原因把握と、売上回復の根拠(市況のデータ、売上アップに向けた行動計画など)を提示できると、融資が受けやすくなります。
減産後の損益・資金繰りを説明する
過剰在庫を理由とする減産は、いずれ売上が回復すれば、会社の資金繰りは元に戻ります。また、会社の構造改革を理由とする減産は、経常運転資金(売上債権+たな卸資産ー仕入債務)の減少が、資金繰りに反映されれば(反映されるまでには時間差があるものです)、資金繰りは安定します。
ところが。減産をした結果、いずれ売上が回復せず、減産後の損益が「赤字」になってしまうような場合はどうでしょう?
売上が減れば、仕入も減りますが、人件費や家賃などのいわゆる「固定費」までは減りません。よって、固定費をまかなうことができずに、赤字に陥ってしまうケースもありえます。
そうなると、減産資金の融資返済が厳しくなってしまうため、銀行としては警戒すべきところです。そこで、会社は「減産後の損益」と「減産後の資金繰り」とを説明する必要があります。
説明をするにあたっては、予測損益計算書と、資金繰り予定表を準備するとよいでしょう。予測損益計算書でもって、減産後も赤字にはならいことを説明します。また、資金繰り予定表をもって、減産後も資金繰りがまわることを説明します。
予測損益計算書も資金繰り予定表も、つくるには時間と手間がかかるため、口頭で済まそうとする社長は少なくありません。けれども、それでは銀行も納得はしづらく、融資は受けにくくなってしまいます。
なにより、社長自身が、減産後の損益や資金繰りを「可視化(数字で把握)」できていないのは問題です。あとになって、「こんなはずじゃなかった…」ということがないように。必要な時間と手間まで惜しまないようにしましょう。
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まとめ
融資を受ける際の資金使途のひとつに「減産資金」があります。減産資金には「後ろ向き」な要素があるため、銀行の対応は慎重です。どちらかと言えば、融資を受けにくいケースだと言えます。
というわけで、減産資金を資金使途にして、融資を受ける場合のポイントを押さえておきましょう。
- 減産する理由をあきらかにする
- 減産計画を示す
- 減産後の損益・資金繰りを説明する